見出し画像

とき色の空の下

何を約束したのか
あの幼子は
とき色の空の下で
姉にあやされ

母親のかわりをする少女の背負った景色は
葉を落とし、みるみる痩せてゆく桜の木々のある土手

とき色の空の下

母親がいないとむずがる幼子をあやす少女

あの少女は幼子の指をきり何を約束したのか

ただ追いやられる季節の端に取り残された二人

薄手の赤いべべを着て
こっそり約束した指切りを

何故、わたしは何年も思っているのか

傍観していただけの
わたしにもあの
約束がある気がして

季節が進む度に
あの葉を落とした桜の木々を回想する

赤いべべをきたあの二人の
姉妹だけは
鮮やかで
指を切ってした
約束は知らぬのだけれども

約束がわたしにも
ある気がして
あの日と同じ
とき色の空の下

ふと
ふりかえる