小鳥のいた砂浜にて
その小鳥がいたことを
示すものは何もなかった
彼女に教えたくても
短い朝の一時に過ぎなかった
海辺には
鳥の鳴き声もなく
羽毛一枚も落ちてはいなかった
そして彼女を起こして連れてきて
砂浜に鳥の歩いた
痕跡でもないかと探ったが
あのちいさな小鳥の歩く足跡は
肉眼ではわからなかったのだった
だが鳥はいた
小鳥は歌ったのだ
この砂浜で
それを彼女に伝えたかったのだが
彼女はその話が
いかにくだらないか示す前に
テントの出入口のジッパーを
荒々しく閉めて中に入ってしまったのだ
あの素晴らしい歌声が唯一の救いなのに