足湯と小難しい本とお兄さん
とにかく病んでいた20歳頃。海外の大学へ進学使用していたが自分の希望の学部に入ることが出来ず、日本にとどまってこれからどうするかと思いながらバイトに明け暮れていた。
1人だけ取り残されたような、誰も味方がいない気持ちで忙しい時間が終わるといつも空虚な気持ちだった。
ある日、当時三宮にあった足湯につかりながら、ジュンク堂で買った本を読んでいた。どんな本を読んでいたか忘れたけれど、読んでいるうちにだんだんと何かに悲しくなり、自分に絶望して涙が止まらなくなった。
その時自分の前に二人組の作業着を着たお兄さんが立ち止まった。
「おねえちゃん大丈夫?」と聞かれて
「あ、いや大丈夫です」とこたえると
「そんなに泣きながら難しそうな本を足湯につかりながら読んでて、大丈夫なわけないやろ」と言われた。
なぜかそこから東門街にあったスナックに連れて行ってもらった。
その時も「俺のこと信じられへんかったら、ちょっと離れてあるいて大丈夫そうか確認してからついてくるか決めたらええよ。」
と少し離れて歩いて付いていった。
あのお兄さんに声かけてもらわなければあの日ずっと腐ったままだっただろうな。
今でもあの人を思い出すし、自分も泣いている人に声をかけるようになった。
そのスナックはもうなくなっているみたいだけれど、いつかその人にこの話が届いたらいいなぁと思っている。