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国内ゴルフ用品市場の現状について

 残念ながら、日々悪い方向にアップデートされてゆく新型コロナウイルスのニュースに危機感を募らせている方が殆どなのではないかと思います。

 余談ですが、私の周りにいる方を見てみると、

A.「正しい危機感」を持って冷静に日々を送っている人

B.危機感が募ってしまい、それに伴う悲観的な情報を発信し続ける人

C.「俺は大丈夫(コロナには負けない)」という謎の自信と共に生活を変えない人

以上の3タイプに大別されるような気がします。

 というようなことはさておき、現時点で新型コロナウイルス感染拡大がゴルフ産業にどのような影響を及ぼしているか?という点について客観的且つ定量的に集計分析を行ったデータは存在していないようです。

 そこで、弊社が週次ベースで集計を行っているゴルフ用品小売店実売動向調査「YPSゴルフデータ」の週報データを利用して、国内ゴルフ用品市場を定量的に分析してみたいと思います。

(「YPSゴルフデータ」とは、国内約1,100店舗のゴルフ用品販売店舗(ecサイト含む)のゴルフ用品販売実績を月次ベースでトラフィックしたもので、週報データはそのうち約500店舗の売上をトラフィックした即時性の高いデータです)

<直近の売上は前年同期比60%台>

 上の表及びグラフが、ドライバーの週別販売本数推移です。「2020年12th」は「2020年の第12週 =2020年3月23日(月)から29日(日)までの1週間」を意味します。そして前年、前々年を大きく上回る販売を記録している第5週は「2020年2月3日(月)~9日(日)」までの実績となります。きったない字で書いていますが、7日に発売されたテーラーメイド「SIM」及びキャロウェイ「マーベリック」の数量が入っているので売上が高くなっています。

 こうして見ると、第6週の落ち込みが大きくなっていますが、これはSIM、マーベリック発売の「反動減」と見るべきでしょう。

 注目すべきは直近2週間のモノの動きで、政府や各自治体から発せられるメッセージが強くなるに従ってマーケット(ゴルファー)も敏感に反応している様が見て取れます。

 同データは、時を経るに従って販売が落ち込んでいく市場の厳しさを如実に表していますが、違う視点では「これだけ厳しく、また目に見えない不安に覆い尽くされている現状下でも、1週間で5,000本のドライバーが店で売れている」という見方もできると思います。上述したように本データは500店のパネル店の販売をトラフィックしたパネルデータなので、この本数が「日本全国で売れた数」ではありません。仮に市場カバー率50%とすると、

「コロナウイルスで外出自粛要請が出るなど先行き不安が広がる中でも、約10,000人のゴルファーが店に行って(またはサイトにアクセスして)ドライバーを買ってくれている」

ということになります。もちろん対前年比60%台という数字は東日本大震災発生時も算出されなかった数値であり深刻であることは言うまでもありませんが、個人的には「ドライバーを買ってくれた10,000人のゴルファー」に対する感謝しかありません。

 続いて、ゴルフ用品市場の中では「消耗品」という扱いのラウンドボールの販売推移を見てみます。ボールは「ゴルファーのラウンド環境とリンクする」と言われており、ゴルファーの「活動」を示す指標というのが業界内の共通認識と言って良いかと思います。

 コチラ↑がボールの週次販売数量推移となります。2月中は対前年比5%程度のマイナスで何とか「踏ん張って」いたものの、2月末から3月にかけて徐々に販売が落ち込んできているのがよく分かります。

 上述したようにコロナウイルスを取り巻く環境が「悪い方向に日々アップデートされている」現状を踏まえると、上述した市場環境が短期的に浮揚する可能性は低い、と考えざるを得ないのではないでしょうか。

 でも、私もそうですが業界の皆さんも日々の糧は得なければならない。下を向いたり悲観してメシが食えるのならば幾らでもそうするけれど、そこからは何にも生まれない訳で。上述したような悲観的な将来を踏まえながら「じゃあどうすんのよ?」を考えることが重要なのではないかと思うのです。

 例えばウエアを含めたゴルフ用品メーカー様は「ゴルフ専用マスク」を生産してはどうでしょう。これまでのゴルフクラブやゴルフ用品、ゴルフウエア製造で培ったノウハウをフル活用して、「ウイルスを通さない」「でも呼吸が苦しくない」「それでいて着けていてカッコいい」マスクを製造して取引先である小売店を通して販売する。

 ランニングシューズ市場ではカーボンプレートを挟み込んだ「厚底シューズ」が人気だけど、同じロジックで「カーボンプレート入りマスク」なんてのがあったら人気になるのでは(効果があるかは知らないけど)。

 それと同時にゴルフメディアをフル活用して(勿論タイミングを見計らう配慮は必要だけど)「ゴルフ専用マスクを着用すれば感染リスクは低下する」という記事を医者や大学発のエビデンスと共に配信する。

 更に、それと同じタイミングで国内のゴルフトーナメントを再開、出場するプロはそれぞれの契約メーカーのロゴが入った「ゴルフマスク」を着用しながらトーナメントを戦う。

 観客を入れるか入れないかは主催者判断になるだろうけれど、観客を入れる場合には「ゴルフマスク」の着用を義務付ける(その代わりマスク代を差し引いた金額をチケット代とする)。入り口前のテントで「〇〇プロ着用モデル」などという触れ込みでマスクを販売する。

 こんな話は完全な思い付きであり、人によっては「お前何不謹慎なこと言ってんだ!」「そんな冗談言ってる場合か!」と怒るかもしれませんが、私にとっては冗談でもなんでもありません。

 マスク云々の話は私の拙い思いつきですが、要は「長期化するコロナウイルスの影響を受け入れること」「その上で、今まで通りのビジネスモデルが通用しない可能性があることを受け入れること」、その上で「発想の転換を行いビジネスアイデアに繋げること」が必要なのではないか?

ということを言いたいのです。

 どんなに時代が変わっても、どんなに厳しい世の中になったとしても「お、それ面白いね!」というある種のバカバカしさというか前向きな発想こそが時代を切り開いていくのではないか、と私は思っております。

 そんなメンタリティを持つ産業が、きっと「コロナに負けない」産業なのではないかと思うのです。


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