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場面転換のバリエーション #30

場面転換とは
演劇などにおいて、現在演じているシーンから、場所や時間、登場キャラクターが変化する際に用いられる切り替え作業のことだ

通常の演劇作品では舞台転換と言われるような舞台セットを変えて、その場の状況を変化させたりする

しかし、パントマイム作品においては、背景や舞台セット、衣装を変えずともその場でいくつかの場面に切り替える手法が存在する

例えば、家の中から、玄関を出て、歩道を進み、駅の改札から、電車の中、オフィスのエレベーターを登って、自分のデスクまで、というシーンがあったとしても

これらを一つの場所で演じきることができるのだ

場面転換のバリエーション

場面転換の技術を用いることによる切り替え方法は以下のようにある

・舞台転換をする
・暗転(明転)させる
・照明を変化させる
・その場でジャンプする
・マイムウォークで進む
・マイムウォークでその場を一周する
・スライドする
・その場で一回転する
・ストップモーションから次の場面につなぐ


それぞれ順番に説明してみよう

・舞台転換をする

これは演劇では当たり前に用いられている方法だ。
舞台セットを別のシーンのものに切り替えて、場面が変わったと見るからに分かるようにする。
舞台転換は素早く、手際よく行うことがとても重要とされ、 照明や音響を利用するなど、演出面でも様々な工夫が凝らされています。また転換の時間も公演中なので、スピードや見せ方が非常に重要である。

しかし、舞台セットを用いない作品や、小劇場演劇など広さや予算に限りのある場合も舞台転換による場面転換は使えない。

・暗転(明転)させる

これは演劇の舞台などでも利用されてる王道な場面転換の方法だ。
明かりを落とし一度真っ暗にし、再度明かりがつくと別の時間軸や場所となって物語がスタートする。”明転”と言うちょっと薄暗くして場面を転換するときも同様である。
いずれにしても真っ暗や薄暗い中で演者や大道具が入れ替わり、違う場面から再開されるという手法だ。

パントマイムでも暗転は用いる
しかし一つの作品で何度も暗転を使うと集中力が削がれる為、なるべく使わないようにという認識の元、場面転換の方法を考えることが多い。

もし暗転をどうしても使うという時は、転換のスピードを最速化するため、衣装の早替えや舞台セットの入れ替えを何度も何度も練習し、1秒単位でも短縮できるように努めたりする。

・照明を変化させる

これも演劇などで使われる重要な場面転換の方法だろう。
前述したように小劇場演劇などでは大道具として舞台セットを場面ごとに入れ替えたりは出来ない。そんな時に有効な転換方法が照明効果である。

演者のいるところだけを照らして違う場所であると演出したり。また色味を変化させることで、先程のシーンとは違う場所、または違う時間軸の話であると見ている人に伝わるようにする。

パントマイム作品においても照明演出はとても重要であり、どんな場面なのかを入念に打ち合わせをする。どのような場面なのか、心境なのか、今どこにいるのかなど、どういう風に魅せたいのかなど、スタッフとの齟齬が無いように作らなくてはならない。
パフォーマンス作品ならそれほどデリケートではないが、ストーリー作品においては緻密な計算が必要とされる転換方法である。

・その場でジャンプする

これはコントやギャグなどで使われる転換方法の一つだ。
せーの!でその場にいる演者が一斉にジャンプすることで、場面が変わったということにしてしまう。

なぜ切り替わったのかなどの説明は一切する必要がなく、着地と同時に「ここが〇〇か〜」などと言ってしまえば、もうそこは先程居た場所ではないのだ。

パントマイム作品において、シリアスやリアリティを大事にするような演目に用いることは無いが、同じようにギャグ要素の強い作品やパフォーマンス演目においては、この方法で場面転換をすることもあるだろう。

一般的にもこの場面転換が何故か認識されている為、バカバカしさも相まって笑いになるアプローチである。

・マイムウォークで進む

ここからはパントマイムならではの場面転換の方法となる。
パントマイムにはその場で歩いているようにみせるマイムウォークという技術がある。この技術を用いて、歩みを進めることによって場面転換が可能となっている。

リアルな歩数を移動する必要はなく、ある程度移動しているということが伝われば次の場面に到着したとして転換完了してもよい。
正面の場合は舞台の奥行きがそれほど無いのでその場で行うことが多い。横向きで見せる場合は、ある程度マイムウォークをしながら距離を移動することで効果的に場面が転換したと見せることが可能だ。

・マイムウォークでその場を一周する

先程は前後左右に移動する動きを見せることで、場面転換をする方法をお伝えしたが、その場面転換はあくまでも地続きである場所に転換する時に限られる。

時間が大きく変化する時や、全く違う場所に移動してしまう時は違和感がでてしまう。

場所を大きく移動したり、時間軸が切り替わっても使える場面転換の方法が”その場を一周する”という転換方法だ。
マイムウォークをしながらその場で一周すると、時間や場所を考慮せず、次のシーンに到着しているという表現が成立するのだ。

この方法も細かくはいくつかのアプローチ方法があるのだが、それはまた別の機会に。

・スライドする

次にスライドでの場面転換方法だ。スライドとは何か。
下記動画を参照となるが、足裏をハの字に閉じたり開いたりしながら横にずれる移動方法だ。

このスライドを用いることによって、違う場所に移動したと転換することができる。単純に場所を移動したという表現にもなるし、時間が経過したという表現でも成立する。

スライドしながら姿勢を切り替えれば、何かの動作の一時停止から次の場面をスタートすることも出来る。暗転を必要とせずに大胆に場面を変えられる、パントマイムならでは転換方法だろう。

・その場で一回転する

これも場所や時間、そして演じているキャラクターすらも大きく変えることが出来る場面転換方法の一つだ。

ゆっくり回転すればゆるやかな場面の変化となり、一瞬でくるっと回ってピタッと止まれば、カットチェンジのような一瞬の場面転換となる。

ポイントは切れよく回り、必ず回転の終わりで微動だにしないくらいビタッと止まることだ。この完全停止の間があるからこそ場面の切れ目が作れるのだ。ぬるっと次の動作に移り変わってしまうと、見ている人は前の場面の人がその場で一回転しただけのように見えてしまう。それでは場面を転換したことが伝わらない。

そして、必ず何かの動作の途中に繋げること
立ち尽くしたままの姿に切り替えても場面転換が伝わらない。
動画の編集作業のように、場面と場面をつないでどこかのシーンから始まるように回転の終わりの姿勢を作ろう。くれぐれも間を作ることをお忘れなく

・ストップモーションから次の場面につなぐ

動きを一度完全に止めて微動だにしない状態にすれば、そこで時間を停止することが出来る。そのまま次の姿勢にゆるやかに移転することにより大胆に違う場面に飛ぶことが可能だ。

ドラマチックに場面を切り替える際に有効な方法であり、一回転するよりもリアリティを求めたりシリアスな演目に用いることが可能なアプローチである。

別の場面であると明確に伝えるためには、必ず一度完全にストップモーションにした方がよい。そこで時間軸を止めたと認識してもらうことが重要だ。

パントマイムならではの場面転換

以上が場面転換のバリエーションとなる。
後半の6つの方法は、全てパントマイムならではアプローチだろう。

舞台セットが必要なく、衣装でキャラクターを示さなくて良い。
想像力で補って頂く、パントマイムだからこそ可能な転換方法なのだ。

舞台セットや衣装が決まったものであれば、それはどれだけ演じ分けても固定された情報となる。見ている人の印象から消すことが出来ない。
しかし、真っ黒な舞台に真っ黒な衣装などであれば、どんなシーンやどんなキャラクターにだって変化することが可能だ。

何もないからこそ何でもある

場面転換のバリエーションの多さもパントマイムならではの面白さではないだろうか。

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