【声劇台本】山ノ怪-ヤマノケ-【1:1】
劇所要時間:15分
人数:1:1
演じていただける際は一度プロフ参照おねがいします
・登場人物
・ギン--村の子供(低学年くらいのイメージですがある程度お任せ)
・ヨシ--村人を襲う山姥
・アキ--ヨシの子供(ギン役の兼ね役になりますが、同じくらいの歳の似た 子の設定なので特に意識して変えなくて大丈夫です)
・ナレーション部分も読んでほしい部分だったので役事にふってあります
「」付きのセリフと分けて読んでもらえたら幸いです
明治初期くらいの北国の山奥の寂れた村のお話
邂逅
ギン:夕陽が落ちてあたりは闇に包まれはじめたころ
ギン:山あいの木々のなか遠くにぽつぽつと松明の灯りがみえる
ギン:村の人間が総出で、この近辺に出没する山姥を狩るために、大規模な山狩をおこなっている
ギン:この村では山姥に狩猟中の猟師や、麓の町に買い付けにいく行商人がたびたび襲われていた。
ギン:ある日村の集会で山姥狩りが決まり、昼から動ける村人総出で山に入った。
ギン:日が大分西に傾きかけたころ、猟師の一人が山姥に怪我をおわせたが、惜しくも逃げられたとの報が集会所に届いた。
ギン:村長からの通達で、今日のうちに決着をつけるべしと、こうして日が落ちた今の刻限も村人達は松明を片手に山の中をさがしまわっている
ギン:大人たちが恐ろしい形相で、必死に手負いの山姥を追って山中を探し回っている中
ギン:ギンの目の前に、額から角のはえた大柄で異形の女が血みどろで木の縁によりかかっている。
ヨシ:「・・・ぜぇ・・・・・ぜぇ・・」
ギン:「み・・みつけた!!」
ヨシ:「・・あぁ・・あぁ・・お前が・・迎えにきてくれたんだねぇ」
ヨシ:「死ぬ前にお前の顔がみれるなんて・・」
ギン:「なにいってんだ!!お前なんかしらない!!」
ヨシ:「・・なんだい・・お迎えじゃないのかい」
ヨシ:「(呟くように)あの子に瓜ふたつだ・・最後に命をとりにくるのが、あの子そっくりの村の子供とは・・これも呪いかね」
ギン:「お・・お前は・・隣のゴロウおじさんの仇だ!!やっつけてやる!!」
ヨシ:「ゴロウ?・・・あぁあの男か・・」
ヨシ:「あいつは喉笛食いちぎってやったわ・・くく・・口をパクパクさせてみっともない死に様だった」
ヨシ:「他の村人がいなければもっといたぶって殺してやったものを・・一息で殺してやっただけありがたいと思え」
ギン:「・・この・・鬼めっ!!」
ヨシ:「・・・鬼?・・・鬼だと?」
ヨシ:「鬼はどっちだ・・貴様ら村の者のほうがよっぽど鬼であろうが!!」
ギン:「な・・なにを言っている」
ヨシ:「貴様ら村の人間があたしらをさげすみ!!あげくかわいいあの子をせせら笑いながら責め殺した!!」
ヨシ:「絶対に許さない!!殺してもまだたりない!!」
過去
ヨシ:あたしの家は父の代から村八分だった
ヨシ:食うのもままならない、それこそ木の根を噛って飢えをしのいだ
ギン:(アキ)「おっかぁ!!これ食べて!!」
ヨシ:「アキ?おかえり」
ヨシ:「食べてって・・・お前・・その干し肉・・そんな高価な物どうしたんだい!?」
ギン:(アキ)「いいから!!いい加減食わないとおっかぁ死んじまうよ!!」
ヨシ:「お前・・・まさか盗ってきたのかい!?」
ヨシ:「馬鹿な子だね!!早く返してくるんだよ!!」
ギン:(アキ)「誰にもみられてない!あんなやつらに気をつかって飢え死にしたら、それこそ馬鹿みたいじゃないか!!」
ヨシ:「大人しくしていればお前が大きくなる頃には、村八分もとけるかもしれないじゃないか」
ギン:(アキ)「あいつらにそんな気なんかないよ!!」
ギン:(アキ)「あいつらが俺とおっかぁの事馬鹿にしてるのを何度も何度もきいてる!」
ヨシ:「それでも!!・・それでもお天道様に顔向けできない事はしないでおくれ・・お願いだから」
ギン:(アキ)「・・おっかぁ・・」
ヨシ:「あたしならまだ大丈夫だから」
ヨシ:「ばれてないなら・・ばれてないうちに返してきておくれ」
ヨシ:「ね?そしたら二人で山菜採りにいこう?ほとんど枯れてしまっているかもだけど、まだ食べられそうなものもあるかもしれない」
ヨシ:「それに兎なんかもみつかるかも知れない。ね?」
ギン:(アキ)「・・・わかったよ・・ごめんよおっかぁ」
ヨシ:走っていくあの子の背中を見送った
ヨシ:なんであたしはあの時あの子と一緒にいかなかったのか
ヨシ:あたしは村の人間も許せないが・・あたし自身も許せなかった
連環
ギン:俺にむかって激高しながら過去の話をしていた山姥は、語るうちに落ち着きを取り戻していた。
ギン:俺に似ているといった子供の面影をみているのだろうか、寂しそうな目をして俺に呟いた。
ヨシ:「・・早く殺せ・・・殺してくれ、、ここで生き長らえたら・・あたしはまたおまえらを殺す」
ヨシ:「もう解放されたい・・生きている限りこの恨みは消えぬ・・」
ヨシ:「腕の中で笑うあの子の顔が、誇らしげな表情でとってきた果実をみせてくれたあの子の顔が」
ヨシ:「、、、目の前で絶望のまま命の灯が消えてゆくあの子の顔が」
ヨシ:「あたしに恨みを絶やす事を許さない・・こんな希望もなにもない人生の中で!あの子だけがあたしの光だった!!」
ヨシ:「あの子がこんな事を望まないと知っていても!!」
ヨシ:「もう・・死ぬまで恨み続ける事しかできない・・頭の中で響く声がずっと恨め、殺せと囁いてくる」
ヨシ:「後生だよ、、、頼むおわらせておくれ」
ヨシ:「こんなあたしなんかのために泣いてくれるお前になら、殺されてもいい」
ギン:ギンは涙を流していた。目の前の哀れな女も懇願しながら涙をこぼした。
ギン:「、、俺は、、俺は!!!」
ギン:ギンは震える手で山姥の喉元に小刀を突き立てている
ギン:手の震えを止めようと、溢れ出る涙をこらえようと、強く、強く歯をかみしめた。
ギン:ギンは深く同情していた。
ギン:些細な罪で暴力にさらされ命を奪われた少年に。理不尽に子の命を奪われこんな異形に形をかえた復讐者に。
ギン:そんな相手の命を奪う事でしか救えなかった自分に絶望していた。
ギン:自分からはみえなかった大人達の醜さに嫌悪感を覚えた。・・・そんな奴らは、死んでしまえばいい
ギン:ギンの耳元に声が響いた
ヨシ:数週間後、また村人に犠牲者がでた
ヨシ:目撃されたのは追い立てた異形の女ではなく、小柄な異形の男の化物だったという
山ノ怪 人を大柄な異形に変える山の怪異
人の殺意にひかれて憑依し異形の化け物に姿をかえる
元ネタはオカルト板のヤマノケ
書きたかった悲しい山姥の話と憑依型の怖い話をまぜてみました
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