捨てたい、けど捨てられない―機能不全家族で育って

　

第11回

久しぶりに息子のことを書きます。昨年春に高校を卒業して就職し、あぁよかったと思う反面、本当にこの会社でよかったのかと私の心は落ち着きませんでした。
4、5月は順調に新人研修が進んでいるようでしたが、研修が終わる6月半ば頃に気になることがありました。社長が他の社員を怒鳴りつけて、帰宅するよう命令したというのです。短期間に2回もあったと聞いて、私は息子も同じ目に遭うかもしれないと心配でした。
7月に入って息子の配属が決まり、簡単な操作方法が記載されたマニュアルを渡され、3DのCAD研修が始まりました。そんなある日、息子が就業時間中に帰宅しました。社長に怒鳴りつけられて帰されたと言うのですが、話を聞く限り、怒鳴る必要があったとは思えませんでした。
私はすぐに、息子の帰された理由を会社に問い合わせました。パワハラではないかと感じたからです。すると翌日の朝礼で、社員全員の前で息子が社長に攻め寄られて、その後新入社員6人が集められたそうです。「お前たちを雇うのに一日これだけかかる」と社長から一人一人に一万円札を渡し、社長が息子にやったことがパワハラだと思うかどうか、一人ずつ答えさせようとしたというのです。4人は何も答えず…。でも1人の女の子は、「紙を投げつけるのは良くないと思います」と毅然とした態度で答えたそうです。
（緑：2022.3）