APの仕事

ドラマのAP(プロデューサー補)の仕事。台本が上がって来たら、撮影現場のキャスト・スタッフに配布。残りのキャストには東京の事務所に宅急便で送る。撮影前日の夜、俳優さんの控え室の部屋割りをし、ドアに名前を貼る。

撮影当日朝、俳優さんが次々とスタジオ入り。彼らがいる間に、次回分の新幹線チケットを手渡し、タクシー代の精算。俳優さんの撮影が終わったら、その度にタクシーを呼び、タクシーチケットを渡して送り出す。チーフ助監督が書いたスケジュールを見て、番組宣伝の時間がどこで取れるか、相談。宣伝部に連絡する。

昼食。撮影のスケジュールが巻いて(予定より早くなって)来た場合は、俳優さんの事務所に連絡して、入り時間を早めてもらう。その為に、スタッフルームにはスタジオモニターがあり、収録の様子が分かる様になっていて、APはスケジュールを把握しておくのも大切な仕事。また、東京から来る俳優さんの宿泊表をホテルにFAXし、確認。

夕食。次々と俳優さんを送り出し、夜が更けて来ると宅送(終電後の自宅へのタクシー送り)の準備を始める。方面毎のタクシーチケットを書き、配っていく。タクシー会社にもおおよその宅送時間を伝え、必要な台数を確保する事も忘れない。そして、夜食の買い出し。ハンバーガーかコンビニのおにぎり50人分を用意する。日付が変わる頃、撮影は終わり、タクシーを呼び、キャスト・スタッフにお疲れ様を言う。しばらくスタッフルームにいて、何事も無かったら、朝8時前からの1日が終わり、帰宅。

土砂降りの朝、ロケに行くか行かないかの判断は、プロデューサーがいない場合、APがしなければならない。放送に間に合うか、中止した場合に無駄になる費用、いろんな要素を考えて決める。胃がギューと縮まる思いをする瞬間だ。

土日、ドラマの編集・MA(ドラマに音楽や効果音を入れる作業)、が毎週行われていた。編集が深夜に終わり、タイトルバックにキャスト・スタッフの名前を入れていくのが、僕の仕事だった。台本を見て、その回に出ている俳優さんをチェック、テロップを何秒ずつ入れるか、案をプロデューサーに見てもらい、それに従って、テロップを入れる。大御所俳優さんが多数出演していたので、この作業には大変気を遣った。明け方のタクシーで帰宅する時、程よい倦怠感と高揚感を感じ、家でのビールが美味しかったのを覚えている。

プロデューサーに同伴して、脚本家とドラマの後半部分の打ち合わせをした事もある。伊豆の温泉旅館に二泊三日で泊まった。プロデューサーがいろいろアイデアを出し、脚本家がそれに意見を言う。この作業の横にいて、ノートを取ったり、お茶を出したり、こまごまとした用事をする。時々は意見を聞いてもらえる事もあり、採用された時は嬉しかった。

ドラマがクランクアップに近づくと、俳優さん用の花束の準備。サプライズで渡したいので、スタジオやロケで俳優さんに見えない様に撮影現場に持って行くのもAPの役目。撮影現場の片隅で花束を後ろ手で持ちながら待っているのも、結構緊張した。

打ち上げの会場押さえから、会場のレイアウト、料理や飲み物の打ち合わせも。脚本家や各事務所、関係会社への連絡、賞品集め、当日の受付、御祝いのお金の管理まで、「制作部」に助けられながら進めていく。

打ち上げですべてが終わったかと言うとそうではない。最終回の編集・MAが残っているからだ。8ヶ月に及ぶAP生活。逃げ出したくなる瞬間は何度もあったが、しばらくすると、またやりたくなった。やはり、ドラマの現場が好きなんだと思う。

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