ドラマ「心療内科医涼子」の作り方

顔見知りのマネージャーが俳優さんの売り込みに来た。彼女と話している中で、彼女の事務所に所属する酒井美紀さんが出ている映画「誘拐」の脚本を、渡哲也さん始め、出演者の皆さんが褒めていると、僕に教えてくれた。

この映画の脚本を書いた森下直さんに連絡を入れて、大阪に会いに行く事にした。

森下直さんとは、梅田で待ち合わせ。この時、熱く語ったのが、アメリカの本格ミステリー作家・エラリー・クィーンに関して。こんなにクィーンの事を話せる人に会ったのは初めてだったので、本当に嬉しかったのを憶えている。そして、連続ドラマの脚本執筆お願いした。

「心の病を治す医者」が主人公の連続ドラマ「心療内科医涼子」。脚本を作るのに幾多の難関があった。外科医ならば、瀕死の重傷や重篤な病気を神の様に鮮やかなメスの力を使って、手術で治せる。しかし、心の病の治し方は・・・。

森下直さんは主演の室井滋さんのキャラクターを見事に作ってくれた。心療内科医である室井さん自身が「閉所恐怖症」「暗闇恐怖症」を持っているのも巧い設定だ。

そして、物語を「人の心の謎(ミステリー)を解く医者」にした事がドラマを面白くした。探偵エラリー・クィーンの要素がどこかに入っているのかも知れない。

森下直さんの書いた第1話によって、ドラマの方向性は固まった。人は「心に寄り添われる事」で少しずつだけれど、心は元気になっていく。
 
森下直さん・金谷祐子さん・横田理恵さん・真部千晶さん4人の脚本家、5人の監督。200本以上のプロット(簡単なストーリー)、ダブルヘッダー、トリプルヘッダーの脚本打ち合わせ。もがき苦しんだ5ヶ月。放送された10話は、まるで自分の子供の様に大切なものになった。

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