「永遠の仔」の売り方

プロデューサー。ドラマを作る時に絶対考えなければならないのが、そのドラマをどう売るか?という事。
「宣伝」が重要な要素だと考えていなければならない。

連続ドラマ「永遠の仔」をやった時考えたのは次の二つのセールスポイント。

「天童荒太の大ベストセラーのドラマ化」
「中谷美紀、椎名桔平、石田ゆり子、渡部篤郎という4人のメジャーな俳優が出演」

このコンセプトを基に、まず「ポスタービジュアル」を考えた。

「DV(家庭内暴力)」「性的虐待」が大きなテーマになっている原作。

4人の俳優さんに「いちばん悲しい表情」をしてもらう事にした。顔のアップで。

写真撮影は、海外の要人など、雑誌「AERA」の表紙を撮り続けていたカメラマン坂田栄一郎さんに依頼。

出来上がった4人の写真。ポスターデザインを手掛けた美術の藤本美歩が中谷美紀さんの「目を瞑った写真」をどうしても使いたいと言った。

僕はかなり迷ったが、「幼い頃、父親から性的虐待を受け続けていた中谷美紀さん演じる主人公」の「深い悲しみ」を想像し、藤本の意見に賛同した。

テレビで流れる「PRの映像」も「大ベストセラーのドラマ化」「4人のメジャーな俳優さんが出演」の二点に絞った。

子役3人が石鎚山の頂上に登って行く本編映像」「原作本が本屋に山積みにされている映像」「大人になった主人公たちを演じた4人のモノクロの写真」で構成し、二つの要素が端的に分かるナレーションも入れた。

初回の視聴率は17%。有難い事にたくさんの方に観て頂けた。2000年4月の事である。

あれから23年。僕は「永遠の仔」のプロデューサーを務めた数年後、東京宣伝部に異動になった。

十数本の連続ドラマ・スペシャルドラマ、バラエティー、アニメの宣伝を担当して分かった事。

それは、番組を宣伝する時、その番組の「売り」を一言で言い表せなければいけないという事だった。

食べ物に関する番組。ケーキをどの切り口で見せるか、じゅうじゅう焼けているステーキの肉汁をどの角度で見せるか。その事がとてもとても大切になってくる。

その「切り口」や「肉汁」探しが「番組宣伝」の基本になっている様に思う。

「永遠の仔」の原作を出版した幻冬舎。新聞広告。おそらく、角川書店で辣腕を奮っていた社長の見城徹氏が全てに目を通していると思われるが、巧い。

幻冬舎は広告以前に、どんな本が今売れるかという「嗅覚」も鋭い。

そして、出来上がった本に有名人の感想を入れたり、見城徹社長自身のコメントを入れたり。「宣伝」という角度でも攻めていると思う。

テレビも出版も、この情報過多の時代を生き延びなければならない。よりシビアな世の中になったと思う。

サブカルチャー好きの僕にとっては、あまり他人が見ない番組、あまり売れていない本の中から、自分にとっての「宝石」を見つけるのが快感なのだが。

10本観て1本の映画や番組、10冊読んで1冊の本。

エンタテインメント界の宝探し、「ルパン三世」の様に生きていきたい、プライベートでは。

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