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灯台のぼる記 #7 野間埼灯台(愛知県美浜町)

愛知県で一番古い灯台、野間埼のまさき灯台の一般公開に行ってきました。

※「野間灯台」の愛称で親しまれている灯台ですが、本記事では海保設置の看板表記にならい「野間埼灯台」で紹介します。

常時参観可能な灯台ではないため、橙光会の「のぼれる灯台リスト」には入っていません。
公開イベントを始めたのも今年(2022年)の春からだということで、のぼれる灯台としての歴史はそこまで長くはないと思われます。

一般公開を主催しているのは、地元のまちおこし団体のようです。

このページの中で書かれている「灯台は大きな空き家」という表現、えらく気に入りました。確かに、無人化されてから長いものね…。(野間埼灯台の無人化は1989年)


当日朝に公開を知る

野間埼灯台の一般公開の日程ですが、現地でボランティアのスタッフさんにうかがった話によると不定期なのだそうです。
スタッフさんの人手が確保できる時に開けているそうで、その頻度は月に2回ほど。
当然土日の公開だろうとは思いますが、日時を固定しないそのゆるさ、好きです。

今回の公開はネットでたまたま知りました。
ちょうど当日の朝に抱えていた仕事がなくなり暇を持て余していたところ、ネットで一般公開のことを知り、勢いで訪問。
大阪からは高速道路を使って3時間ほどでした。

ヤシの木がお出迎え

知多半島は初めて足を踏み入れました。
灯台が建つ美浜町は、その名の通り海に面したリゾート感ただよう町でした。


外観:小顔美人さん

恋人の聖地だなんだ喧伝されていますが、そこは興味ないので完全スルー

この地に灯台が建てられたのは今から101年前、1921年(大正10年)のことです。
100年を越える大御所灯台ですが、建て直しは経験しておらず、当時の姿でここに残っています。
造りは無筋コンクリートで、のちの時代に炭素繊維を巻き付けて補強してあるそうです。

初点プレート。「大正十年」の文字が見て取れる

高さは18mということで、他の大きな灯台を見慣れているとかなりこじんまりとした印象を受けます。
ただ、写真を見て分かる通り、灯ろう部分(レンズを覆うてっぺんの部分)や踊り場が随分と小さく作られています。
そのため、全体のバランスとしては頭でっかちにならず、小顔のべっぴんさんだなぁという感じ。


団体ツアーなので写真は控えめ

協力金の300円を支払い、いよいよ中へ。
中の階段が狭くすれ違いが難しいため、ある程度の人数でまとまってのぼり、そして降りてきます。
参観灯台のように1時間でも2時間でも踊り場で…というわけにはいかないので、写真が少ないのはご容赦を。

みんなでぞろぞろのぼる。

階段は狭く、なかなか急です。
手すりが真鍮製でおしゃれ。


眺望:三方良し(海的な意味で)

狭い階段はそこそこのぼりにくいとはいえ、そこまで高い灯台ではないので難なく頂上へ。
眺めはこんな感じ:

西

見事に海ばかり。
灯台が臨む海は伊勢湾で、南には鳥羽市、西には津市や松阪市と、三重県の対岸がうっすらと見えています。

そしてこの場所、セントレア(中部国際空港)へ着陸する飛行機の進入路にほど近く、かなりの低空を航空機が通過していきます。
次々とやってくる飛行機を見ているのも楽しかったです。


レンズ:解説つきで味わうLED灯器

レンズは2008年にLED灯器に換装されています。
灯器のメーカーHPによると、消費電力は20W以下。
灯台の足元に置かれたソーラーパネルの発電量でまかなえるほどの電力だそうです。すげぇ。

ボランティアスタッフの方が灯質(灯台が発する灯光の色と光り方のリズム)について解説中

スタッフの方が照度センサーを手で覆うと、灯器が点灯します。
光の色は白で、3秒ごとに点灯→消灯を繰り返す等明暗発光という光り方をしています。
スタッフさんの話術も巧みで、参加者はみんなへぇへほぅほぅ言いながら解説に聞き入っていました。

なお、LED化される2008年以前は第5等フレネルレンズが使われていました。
そのレンズは三重県にある大王埼灯台の併設資料館に置かれているらしい。

これがオリジナルのレンズ?(大王埼灯台資料展示室にて)

というわけで、大王埼灯台を訪ねた時の素材を見返してみたら、それと思しきレンズが展示室の隅に置かれていました。
確証はありませんが、おそらくこのレンズが、長きにわたり野間埼灯台で使われていたものなのでしょう。
うーむ、感慨深い。

フレネルレンズ、もう新たに生産されることはないとどこかで聞いたことがあります。
いま現役で活躍しているレンズたちも、やがて役目を終える時が来るかもしれません。
それでも、打ち棄てられるのではなく、この野間埼灯台のレンズのようにしかるべき場所で末永く保存されることを望むばかりです。


他にも、塔の先端に設けられた避雷針についての説明もありました。

てっぺんで受けた電気のエネルギーは、側面に垂らされたワイヤーを通り…

下へ下へと流れ、地面に逃げる仕組みになっているそうです。

おそらくどの灯台も同じような機構を持っているのでしょうが、言われるまで知りませんでした。
今度別の灯台でもじっくり観察してみなきゃ。

他にも、ガスで灯火をつけていた時代の名残である吸気口など、解説がなければ着目しないようなポイントまでじっくり観察できて大満足でした。


のぼれる灯台はのぼれる時にのぼっておけ

思い付き、ノリと勢いで行ってきた野間埼灯台の一般公開ですが、結果から言うと大満足でした。
特に、解説を聞きながら現物を間近で観察できるのは、こういう機会ならではだなと思いました。
参観灯台ではありえない階段の狭さも、アトラクション感があってわくわくします。

休みが不定期な自分にとって、土日祝日に集中しがちなこうした一般公開はなかなかタイミングがあうものではありません。
でも、時間をひねり出してでもこうしたチャンスには灯台へ行かなきゃな、と気持ちを新たにしたのでした。

皆さんも、灯台へ、行きましょう!

おわり。



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