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【道】 第10回 連絡船が就航する「海上国道」 (国道30号/岡山県・香川県)

「海上国道」と呼ばれる国道がある。国道は起点と終点が陸路だけで結ばれるのが普通だが、どうしても海上区間を経なければつながることができない路線もある。岡山と高松を結ぶ国道30号は、途中で瀬戸内海を通る代表的な海上国道だ。

宇野(岡山県玉野市)と高松との間には宇高連絡船が往来する。現在、その航路は2社の民間会社で運航されており、その一つは「国道フェリー」の看板を掲げる。高松港の夜の帳(とばり)に大きく浮かび上がるネオンサインは、ちょっとした名物になっている。

国道30号 高松港


船旅は1時間ほどのクルーズだ。毎時間最低1便、それも24時間運航しているので利便性は高い。海は穏やかで船の揺れも小さい。それでも、繁忙期でない限り、あえてフェリーを使う人は限られている。航路の西側には瀬戸大橋が架かり、船の甲板から豆粒のような車が通るのを見ることができる。

船と橋の両立は可能なのだろうか。それが宇高連絡船のテーマだ。その原点となるのは、国鉄戦後五大事故の一つに数えられる1955(昭和30)年の紫雲丸沈没事故で、修学旅行中の多くの小学生を含む168人が犠牲となった。この事故をきっかけに本州四国連絡橋の構想が実現に向け動きだした。

88(昭和63)年、瀬戸大橋の開通によって、旧国鉄時代から運航されてきたJRの宇高連絡船は廃止され、以降、民間の宇高航路で公共ネットワークが保ち続けられている。しかし、2009年3月から始まった土日祝日の高速道路料金を上限1000円とする政策は、鉄道をはじめとする日本各地の公共交通網に影響を及ぼした。宇高航路も減益のため、フェリー会社はいったんは航路廃止を発表したが、存続を求める地元の強い要望を受け、経営を続けることを再発表した。

海上国道の数は国道総数459路線のうち24路線。最長は鹿児島から沖縄につながる国道58号で、総距離の3分の2が海上区間だ。それでも、宇高航路のように国道の端点を直接つなぐフェリーは就航していない。国道30号は渡船可能な数少ない海上国道となっている。

2010・12・26 記
時事通信社出稿

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