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軽労化ナビについて


腰痛による経済損失

腰痛とは病気の名前ではなく、症状の総称であり、腰部の痛みやハリ、不快感を示す症状のことです。日本人の生涯有訴率は8割を超え、休業4日以上の業務上疾病において腰痛が全体の6割を示します。腰痛による生産性の低下等による損失額は年間3兆円(ひとりあたり約45,000円/年)にものぼります。

プレゼンティーイズムとは

プレゼンティーイズムとは、出勤しているものの腰痛などの健康上の理由によって生産性が低下している状態のことを言います。プレゼンティーイズムによる経済損失は、欠勤状態(アブセンティーイズム)の18倍とも言われていて、早急に何らかの対応をしなければなりません。

最近では高齢化と定常的な人手不足を背景に、定年延長や再雇用などで体力の低下した高齢者を雇用する機会が増えていますが、腰痛や肩こりなどは高齢者ほど多発しています。

腰痛予防に関する法的規制

腰痛の発症は、中腰姿勢の維持や上半身のひねり、重量物の持ち上げなどによって腰部にかかる負荷が原因となっていますが、現在、仕事上で取り扱うことができる重量について、年少者や女性を除いて法的規制はありませんが、厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」では、男性の場合、体重の概ね40%以下、女性は体重の24%までとの定めがあります。

国際的には米国労働安全衛生研究所(NIOSH)が定める腰部圧縮力である3,400N(約340kgf)が 基準とされています。近々、日本でも国際基準に準拠した新たな基準が定られると予想されます。

腰部負荷と体幹力

作業姿勢や動作によって作業者の腰部にかかる負荷

腰部圧縮力は作業姿勢や取り扱い重量によって異なります。軽労化ナビでは、ウエアラブルデバイスを用いて姿勢をモニタリングし、作業者の体格や取り扱い重量から生体力学モデルを用いて腰部負荷を算出しています。

作業者の腰部負荷許容値の算出方法

腰部椎間板圧迫力(腰部負荷)は、骨や関節の構造や強度が加齢により低下しますので、性別や年齢によって異なります。特に高齢女性にとっては、3,400Nという腰部負荷は過大であると思われます。

一方で腰(腰部椎間板)にかかる負荷は、筋肉(後背部や腹筋)や腹圧によって補償され、軽減できます。つまり、体幹力を高めることで腰部負荷の許容限界値を高めることができるのです。

体幹力を鍛えることで腰部負荷を軽減できる

体幹力とは

体幹とは胴体のことで、内臓を収めている腹腔、背骨(脊椎)とそれらを支える筋肉によって構成されています。お腹や腰回りに力を入れて、お腹を引っ込ませる(お腹を固くする)ことで、腹腔内圧力が高まります。お腹を引っ込ませるように力が働いているので、腹腔は上下(垂直方向)へ圧力を逃がそうとします。
そうすることで椎間板にかかる圧力を低下させるのです。我々はこの体幹の安定性や剛性を体感力と呼んでいます。

現場作業での腰痛発症を予防するためには


腰痛は8割の日本人が一生に一度は経験する疾病です。しかし、そのほとんどは非特異性腰痛と言って病院での診断では原因を特定することができないと言われています。作業との因果関係も明確に説明することができないため、労災認定が困難な疾病と言われています。

日本人の働き方として、「ケガと弁当は自分持ち」と言われていた文化もあることもあって、腰痛は個人の管理の問題という認識もあるのではないでしょうか?ヘルメットや安全靴といった個人用保護具の装着義務もないので、事業者、作業者双方で腰痛にならないように注意を促すことが必要です。

人手不足が続く中で、作業者に安心して安全に働いてもらうために、そして プレゼンテーイズムを抑制して労働の生産性を高めるために、科学的な根拠に基づいた先進的な腰痛対策をしなければなりません。

「軽労化ナビ」のサービスでは、作業負担の軽減と作業者の体幹力向上によって、腰痛を予防することを提案しています。

現場作業での腰痛負荷(腰ストレス)の低減

軽労化ナビのサービスでは、ウエアラブル・デバイスを装着して作業を実施してもらうことで腰部負荷を推定することができます。ウエアラブルデバイスには、IMU(慣性計測ユニット)と手元を撮影するカメラが内蔵されていて、IMUでは作業姿勢をリアルタイムに計測します。前傾姿勢の角度や上半身の捻りなどをデータから推測することができます。また、手元カメラでは、どのぐらいの重量のものをどのような姿勢で扱っているのかを動画で撮影することができます。作業者の体格を考慮し、作業姿勢の分析と組み合わせ、生体力学的な手法で分析することで、腰椎にかかる負荷をN(ニュートン)で計算します。

ウエアラブルデバイスでどのような姿勢で働いているか評価できます。
前傾姿勢の発生頻度を見ることができます。

算出された作業負荷が国際基準である3,400N以下であることをチェックすることができます。また、作業の継続時間や重量物の取り扱い頻度、上半身の捻りなどによって3,400Nを下回っていたとしても腰痛発症の危険はあるので、作業姿勢の見直しや取り扱い重量の変更などを行わなければなりません。見直しを行なった結果、改めて作業による腰部負荷を計測して、見直し効果を評価することもできます。

作業者の腰部負荷許容値(体幹力)の向上

先に述べたように、作業者の腰部負荷許容値は性別や年齢、体力によって異なります。たとえ、国際的な基準値である3,400Nを下回っていたとしても、作業をするのが高齢女性であれば腰痛発症リスクは高くなります。
職場における腰痛発症を予防するためには、作業の腰部負荷を知った上で、その作業を安全に実施することができる体力がある作業者を配置しなければなりません。しかし、作業者が不足している場合には、多少無理をさせなければならないこともあるでしょう。そこで、作業者側に安全に作業することができる体力(体幹力)をつけてもらうことが、もうひとつの対策になります。

まずは、作業者が自らの体力を知ることが重要であると考えます。体力を知るには体力測定をするわけですが、体力測定自体が大きな作業負荷になっている場合があり、体力測定でケガをする場合があります。

軽労化ナビでは、厚労省の「転倒等リスク評価チェック」を応用し、下記の7種目の体力測定項目を実施します。いずれも測定による身体への負荷は比較的小さく、すべて実施しても10分程度で終了します。

  • 2ステップテスト

  • 閉眼片足立ち

  • 握力(両手)

  • ファンクショナルリーチ

  • 座位ステッピング

  • タオルギャザー

  • プランク

体力測定の結果から、柔軟性や平衡感覚、筋力、体幹剛性、俊敏性、身体操作性の6つの体力要素で評価しレーダーチャートで表示します。それぞれの体力測定の結果に合わせて、ストレッチや体操、筋トレなどのトレーニングメニューを提示します。トレーニングはいずれも自宅で簡単にできるものをオリジナル動画で用意しています。

体力測定結果報告書

体力測定結果は上記のような紙で配布しています。また、スマホやPCから閲覧できるアプリも提供しています。体力測定は継続的に実施することが望ましく、前回の体力測定の結果を見直すことにより、作業者が自らの体力を知り、体力づくりに関心を持っていただくことを目指しています。これに作業による腰部負荷の周知を組み合わせることによって職場の労働安全衛生に対する意識も高まります。

体幹力の推定について

体力測定結果を用いて、軽労化ナビでは腰部負荷許容値を推定していますが、体力データだけでなく、作業者の性別、年齢、体格(身長、体重)を入力が必要です。計算にはこれまでに3,000人以上の作業者を計測し蓄積してきたデータをベースに独自の計算手法によって体幹力指数を提示しています。

一般的に身体の大きな人は体幹力が高い傾向があります。体力測定の結果が同じであっても、体格、性別や年齢によって体幹力指数は異なります。標準的な体力からの偏差で体幹力年齢が算出され、合わせて腰部負荷許容値を示しています。

作業による作業負荷と作業者の腰部負荷許容値

作業による腰部負荷と作業者の体幹力がわかれば、その作業者の腰痛発症リスクを可視化することができます。

下の表は、ある物流業で行われていた作業についての実測データです。この作業所で比較的負荷の大きな作業の腰部負荷を計測したところ4,000Nでした。国際的な基準値である3,400Nを少しけオーバーしています。

作業者Aさんは33歳の男性ですが、日常から運動習慣があり、体幹力指数は82点でした。この点数はAさんの体格を考えれば23歳ぐらいの体幹力指数といえます。腰部負荷許容値は5,700Nであり、作業負荷を上回る許容量があるため、腰痛発症リスクはひきといえます。

作業者Bさんは、55歳の女性ですが、体力測定結果から計算された体幹力指数は61点と低く体幹力年齢は61歳と判定されました。腰部負荷許容値は1,375Nと、作業負荷よりもかなり低い値となっています。作業者Bさんに4,000Nの仕事をさせるのは腰痛発症リスクが非常に高いといえます。

実際の作業負荷は、動作の連続性や頻度、ひねり動作があるかどうかで、大きく変化しますが、作業をする際に、作業者ご自身がどの程度の腰痛発症のリスクがあるか判断する基準となるでしょう。また、労務管理者にとっても適切な作業者の配置の参考にすることができます。

社員のウエルビーイングとエンゲージメントを高めるために

健康診断は法律で年に1度実施することが定められていますが、体力測定は義務付けられていません。軽労化ナビの体力測定は、職場の会議室や休憩室などのちょっとしたスペースがあればできるので、定期的、できれば月に1度程度実施することをお勧めしています。

企業は社員の心身の健康状態を把握し、向上させるための取り組みを実施する義務があります。心身が良好な状態(ウエルビーイング)をキープするためには、意識づけや動機づけが有効です。定期的に実施することで、常に自分の健康状態を把握し、良好であろうと努力するようになります。

元気でコミュニケーション力の高い軽労化トレーナーが職場を訪問

体力測定を社内で実施しようとしても、時間やノウハウが足りず、継続的な実施が難しいと言われます。そこで、軽労化ナビでは、元気でコミュニケーション能力の高い軽労化トレーナーを職場に派遣して、体力測定を実施しています。

社員さんの中には、体力テストを受けることに消極的な人もいますが、楽しく、わいわいと実施している様子を見て、多くの方が体力測定に参加してくるようになりました。

軽労化トレーナーは体力測定結果から、体力に見合った運動メニューを提案して効果的な実施方法を指導することができます。また、日常的な運動についての相談も気軽にすることができます。

エンゲージメントの向上

コロナ禍以降、働き方が変化しています。また、ハラスメントへの関心が高くなり、職場内のスタッフどうしのコミュニケーションを高めることが難しくなっていると会社の経営者や幹部からよく聞くようになりました。

軽労化トレーナーは、社員を対象としたレクレーションの企画を提案することができます。このようなレクレーション・イベントを通じて、社員同士の結束を固めエンゲージメントを高めることができます。

エンゲージメントが高まると、離職率が低下したり、雇用環境が向上するなどの効果を得ることができます。

軽労化ナビは福利厚生費で利用することができます

軽労化ナビは、全社員を対象として実施できるため、福利厚生費として利用できます。詳細については、社内の担当者にご相談ください。