【イベント】スマートアイランド推進プラットフォーム設立記念シンポジウムの開催レポート(4/7)
スマートアイランド推進事務局です。
去る、8月8日(木)に、「スマートアイランド推進プラットフォーム設立記念シンポジウム」が開催されました。
シンポジウムでは、離島地域からの事例紹介として、三重県鳥羽市(答志島、神島など)、広島県大崎上島町(大崎上島)、佐賀県唐津市(神集島など)、長崎県五島市(福江島など)の4地域から実践者にご出席いただき、具体的なお話を伺いました。
第1回のレポートでは三重県鳥羽市(答志島、神島など)、第2回のレポートでは広島県大崎上島町(大崎上島)の事例をご紹介しました。
ここでは、佐賀県唐津市(神集島など)の取組をご紹介します。
「住民主体の地域自治としてドローンの社会実装を実現した「ドローン隊」の取組」 佐賀県唐津市(神集島など)
唐津市は7つの有人離島を有しており、そのうちの神集島(人口約260人)で、九電ドローンサービス株式会社、佐賀県と連携して、令和5年度のスマートアイランド推進実証調査に採択され、ドローンを活用した島民主体による生活環境モデルの構築の実証実験を行ってきました。
もともと佐賀県が、「自発の地域づくり」を掲げて、全県あげて取り組んできたという背景があり、それを受けて唐津市では「ICTの力で活力ある島民デザインの未来の島づくり」をビジョンとして掲げています。
ドローン実装後の未来を、島民の方が主体的に考える
実証実験の具体的な内容は、島民自らの手でドローンを飛ばして運用することで、島の抱えるさまざまな課題(例えば、土砂崩れの箇所を確認するとか、定置網の様子を確認するとか)に対して、島民自らが自分達の力で解決できるような体制を整えることを目的に実証調査を行なってきました。
また、島の中で自由にドローンが飛び交う環境を作ることで、ドローンを軸とした新たな産業を立ち上げ、交流人口や定住人口が増える、そんな未来を島民自らの手で描いてもらおうという意図も含んだものでした。
唐津市では、上記のビジョンを実現するために3つの取組を進めていきました。
1つ目が技術面での実証調査で、ドローンを使って島でどういうことができるのか、その実現可能性についての調査。
2つ目が実装に向けた体制構築の調査で、実際に島民がドローンを飛ばせるようにするために、どのようなことが必要かということを調査。
3つ目に水平展開を見据えた他の島での展開。神集島以外でのデモ会を開催し、ドローンを飛ばしてみて、どんな活用ニーズがあるのか確認。
ここでは、特に重要な2つ目「実装に向けた体制構築」について具体にお話しいただきました。
自治活動として、島にドローンを根付かせる
実装に向けた体制構築をどのように行なってきたのか、九電ドローンサービスさんからご説明いただきました。
最初に行ったのはドローンの体験会。ドローンを持って行って、「このドローンを島に実装していこうと思います」ということで、簡単なデモフライトを行ないました。
そして、公民館で、小さなトイドローンを使用して、島民の皆さんに実際に触ってもらい、その操縦性だったり、ドローン操縦の楽しさを体験していただきました。
その上で、ワークショップを行って、島にドローンが実装された時にどのようなことに使えるかというのを島民の皆さんと一緒に考え、その結果を島民の皆さんが発表するという、取組を行いました。「ドローン実装後の未来を、島民の方が主体的に考える」ことを実践してきました。
その後、実際にドローンを飛ばしてみたい方を募集して、ドローンを飛ばすために必要な知識を身につけてもらったり、実技講習会を行って必要な時間飛行練習を行っていただきました。この時は、13名の方に集まっていただきました。この講習会を無事に終え、人口約260人の神集島に13名のドローンパイロットが誕生しています。
ドローンの機体管理には法人が必要ということもあり、島内のかしわ産業株式会社がドローンの機体の管理をしています。
ドローン隊のメンバーは、地元の消防団にも所属をしているので、消防団とも連携しながら、例えば災害時の被災状況の把握をドローンで行い、その映像を唐津市と共有することで迅速な災害復旧の体制を構築しています。
現在は、実際にドローンを運用しており、様々なニーズに対してドローン隊の皆さんが対応することで操縦技術を磨いていくとともに、最初のうちは、補助金などを活用しながら機体の拡充などをしていきたいと思っています。
来年度以降は、ドローン隊が、そういった支援を受けずに自分達の力で、自立運用ができるように、ドローンを活用した事業の検討や事業化を本格的に行っていきたいと思っています。そして、他の6島にも展開していけたらと考えているそうです。
ドローンの実証実験は、過去のスマートアイランド推進実証調査でも複数実験が行われていますが、事業性の壁にぶつかり、ドローン自体は有効であっても採算が取れずに継続が困難という結果になることが多かった中で、この唐津市の取組は「地域自治」としてドローンの飛行技術を内製化し、事業性とは一線を引いた形で実装の形を見出した点で、非常に優れた取組であると感じました。
スマートアイランド推進事務局