見出し画像

【イベント】スマートアイランド推進プラットフォーム設立記念シンポジウムの開催レポート(2/7)

スマートアイランド推進事務局です。
去る、8月8日(木)に、「スマートアイランド推進プラットフォーム設立記念シンポジウム」が開催されました。
会場参加、オンライン参加を合わせ250名以上の参加者があり、たいへん盛況に終えることができました。

シンポジウム開催にあたり、國場幸之助国土交通副大臣、谷川正芳全国離島振興協議会副会長よりスマートアイランド推進プラットフォームへ期待を込めた開催の挨拶があり、その後、国土交通省国土政策局離島振興課よりスマートアイランドの概要説明の後、内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局より、デジタル田園都市国家構想交付金についての支援制度の御紹介をいただきました。

離島地域からの事例紹介では、三重県鳥羽市(答志島、神島など)、広島県大崎上島町(大崎上島)、佐賀県唐津市(神集島など)、長崎県五島市(福江島など)の4地域から実践者にご出席いただき、具体的なお話を伺いました。
ここでは、各地域の事例紹介とその後のディスカッションについてレポートとしてご紹介します。
第1回は、三重県鳥羽市(答志島、神島など)の取組です。


「限られた医療リソースを連携して複数の離島診療所を繋ぐ「TRIMet」の取組」 三重県鳥羽市(答志島、神島など)

鳥羽市は4つの有人離島を有しており、各離島に市立診療所が設置されていますが、この20年間で40%以上人口減少が進んでおり、人口減に合わせて患者数も減少、診療所の経営を圧迫している状況にありました。また、今後、医療分野の人材不足も指摘されており、医療資源の効率的な体制構築が求められていました。

複数の離島診療所が連携し、面的に離島医療を支える「TRIMet」

そこで、医師と看護師が有機的に動きながら、診療所に医師不在のときには、看護師と連携をしてオンライン診療ができないかと考えたそうです。同じ病院であれば患者に関わる全ての職種の方がカルテを見ることができる。それなら、4つの島の診療所が、まるで1つの病院であるかのように想定し、多職種で構成される医療介護チーム「TRIMet」を構築し、患者情報の共有と、職種を超えた連携体制を構想しました。

鳥羽市役所健康福祉課 中村氏

そのためには、クラウド型電子カルテとオンライン診療の整備が必須。令和2年度のスマートアイランド推進実証調査に採択され、セコム医療システム株式会社との連携により実証調査を行いました。
クラウド型電子カルテによって、看護師はどこからでもカルテ情報にアクセスすることができるようになりました。また、医師が離島にいないとき、例えば、診療時間外である夜間や土日、船が欠航したとき、医師が感染症に感染するなどして出勤できなくなったときなどでも、オンラインによって患者を診察できるようになりました。外部高精細カメラを使用することで、咽頭、皮膚の所見なども診察できます。また、メディカルケアステーションというアプリを導入し、患者の情報を共有することで、限られた医師・看護師の人数で、島の医療全体を面で支える体制を構築できています。 

外部高精細カメラでの診察

遠隔診療から、ワンストップ診療へ

一方で、高齢化と若者の流出により、介護の担い手である壮年層が著しく減少し、高齢者を支えることが困難になっていました。診療所へは近所の人や親族に連れて来てもらうことが多くありましたが、壮年層が少なくなった地域ではそれが難しくなってきています。
住み慣れた場所で十分な診療機会を得られなくなりつつあることから、診療機会を失わせないためにオンライン診療を活用して移動の支援ができないかと考えました。
令和4年度のスマートアイランド推進実証調査では、診療所からのオンライン診療と、本土側薬局の協力によるオンライン服薬指導を提供し、ワンストップで診療を完結させることができるオンライン診療室の設置を試みました。
令和2年11月から令和6年3月までで、診療所においてオンライン診療の機器を使った診療件数は527件を数えます。
このスマートアイアンドの事業で培ったノウハウを、現在は鳥羽市の本土側において医療MaaS実証事業として実施しています。

オンライン服薬指導

安心して島で暮らせるための見守りサービス

さらには、一人暮らしの高齢者のお宅に見守りロボットを設置し、ロボットを通じてセコムのスタッフが声掛けをする取組も実施しています。
医師や集落支援員、セコムのスタッフ、家族などは、アプリを通じて対象の人がどんな会話をしたのか見ることができます。
見守られている安心感があるためか、不安を抱えて診療所を訪れる回数が顕著に減少した患者さんもいました。「こんなに見守られているなら、もう少し住み慣れた離島で生活をさせてあげたい」ということで同居高齢者の引っ越しを延期した家族もあります。

外部との連携によって、離島の地域社会を守る

人口減少、壮年人口の減少が進む離島では、必要な機能が徐々に消失し、その地域に残るリソースだけで地域社会を維持していくことは不可能になりつつあります。
今後は、地域にもともとあった機能を、無理なく外部に委託していくようなアイデアを考え続けないと、地域の維持は難しくなる、とお話しされていたのが印象的でした。
4つの離島地域の診療所を1つの病院と見立てて、医師、看護師、薬剤師などをオンライン診療と電子カルテで繋いで、連携を強化することで、限られた人的リソースの中で、効率的・効果的な医療体制を構築した鳥羽市。
他の離島にも展開できそうな効果的な事例だと感じました。

スマートアイランド推進事務局

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?