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東洋大の「学力テストのみ推薦入試」導入が意味するもの【新しい展開に動き出した「少子化時代」の大学入試の今後】

大学入試の現場に立つと痛感することがあります。それは、入試の方法がコロコロ変わることです。

一般入試では、国公立大学の場合、共通テストの扱い、科目数、配点、括り募集の導入または廃止、後期入試の廃止・・・などなど。
生徒さんが志望校として考えている大学は、毎年必ず確認しておかないと、数年前の受験生はこうだったから・・・と考えていると大変な目にあうことが多いです。

また、私立大学では、新しい入試制度が導入されることも多く、そんな入試制度があるの?と驚かされることも多いです。

そんな中、東洋大が「学力テストのみ推薦入試」ともいうべき制度を導入するのだとか。

――基礎学力がない学生が増えているのは全国的に問題になっています。それでは大学に入ってからの学びがうまくいきませんよね。

「文科省は『高校時代に頑張ったことを多面的総合的に評価する入試を』という方針ですが、東洋大学としては『頑張った結果、身についている力』を評価する入試がしたいんです。そのためには、現状では、やはり学力重視型の入試が最適だと考えています」(東洋大学入試部長・加藤建二氏、以下同)

上記記事より

入学者の「学力」の問題は、大学教育の現場としては切実な問題となるのは当然でしょう。

個人的には、「学力」を「暗記教育」とか「偏差値教育」などの言葉を使って矮小化していると感じていますが、私は「学力」とは、「トータルの学ぶ力」だと理解しています。

根本をなすのは、「学ぶことには絶対的な意味がある」ということをベースにした「知的好奇心の醸成」と「それを自分のものにする学ぶ力」ということだと思います。これは、若いころであれば、強制性を伴ってもいいのではと思います。また、文系、とくに文学部軽視の背景にある昨今の実学重視の傾向は、必ずしもいいことばかりでもないと思っています。

学ぶ力というと、どうしても「能動性」が重視されがちですが、まだ視野の狭い若い時代には、強制性によって知らない世界をみせることも重要ではと思っています。

このように東洋大が「学力テストのみの推薦入試」を導入する背景には、やはり従来の学校型推薦入試や総合型選抜入試の問題が横たわっているのはまちがいのないところでしょう。

この新しい入試制度は、一般入試の亜種とも言えなくもありませんが、それでも、時流にのって「一般入試諸悪の根源論」を展開する方たちへのメッセージにはなっているのかなと思います。

小難しいことは、横においていいのではと思います。

大学に行きたいのあれば、一定の学力はいるよ。だったら、大学の勉強についていけるだけの勉強は必要だし、そのための学び方を高校時代までにつけておくべきだよね?

ということです。

これはどんな入試制度であっても、最低限担保されるべきことではと思います。

いわゆる年内入試は、岐路に立っていると思います。導入時の理想は、現実の対応によって、徐々にゆがみが大きくなっているのは、まちがいのないところでしょう。

特に近年は推薦入試対策が成熟してきています。事前に提出するプレゼン資料や課題、志望理由書に『大人の手が入っているな』と感じられるものが目立つようになってきているのです。まるでプロが作成したような完成度が高い書類が提出されるんですよ。面接もそうです。事前に面接の練習をしてくるから、その学生の『素』のキャラクターが見えにくくなってしまっている。受験生本人の能力や資質を測るのが非常にむずかしいというのが現状なのです」

上記記事より

一方で、一般入試も岐路に立っていることは、間違いないと思います。今後も、ポスト一般入試の議論はあってしかるべきでしょう。

今後も東洋大の動きがいろんな視点を生み出し、よりよい入試制度に動いていくのではと思っています。

答えは最初からあるわけではない。

これだけは、間違いないのではと思っています。であるならば、よりよい入試制度への模索は継続すべきであり、これこそ不断の努力が必要な世界であることは理解されるべきであると思っています。

その点において、「××入試制度で入学した学生は、GPAに問題がない」ことがそこまで大きな意味がないことは自明であると思います。大学関係者は、絶対に足が止まってはいけない。ましてや思考停止は論外です。




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