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マイナンバーカード問題に潜む恐ろしい「思考」(3)【「堅牢」な「システムを構築する」という根源的な難題】

マイナンバーカード問題について考えています。

この問題を考えると、現代社会に生きる私たちの思考に潜む問題を感じるようになりました。
前回はこちら。

今回は、「堅牢であること」と「システムを構築」するという点についてです。

現代人は、多かれ少なかれ、仕事を突き詰めるとシステム構築に携わっていることになると思っています。
そして、このシステム構築のクオリティが仕事の成否を分ける。

仕事と言っても、何もビジネスだけに限った話ではありません。主婦の方が家事作業をこなす上でも、システム構築のノウハウなくして家庭の切り盛りは不可能です。

広く定義すると、現代人の生活は何らかの形で個々の固有のシステム構築をしていると言えるのではと思います。

では、システムを如何に構築しているのか。それは、ほとんどの場合、「その都度対応で構築する」というのがシステム構築の大原則だと私は思っています。優先順位をつけて必要性の高い順から構築すると言い換えてもいいでしょう。

例えば、私の仕事で説明すると、数学の教材を作成する上で、教科書の最初のページから教材を作っていくのは、現実的ではありません。
塾に来ている生徒が躓きやすい単元から構築するのが自然な発想です。
数学ⅠAでは、2次関数、場合の数と確率・・・みたいな順番で教材を作るのが現時点でのベターな対応です。
内容も、定期テスト対策から始めて共通テスト対策、2次対策・・・となります。

恐らく、どんな分野であっても、決まった項目を一から作っていくのは、経済合理性の上でも現実的ではないはずです。
そんなことをしていれば、商機を逃すどころか、システム構築をしているうちに会社は潰れてしまいます。

一方で、「堅牢である」ことは全く違った概念になります。私の仕事では、塾に来る生徒のあらゆる要望に完璧に応えるというのが「堅牢である」ことになります。だからといって、あらかじめ、東大志望の受験生の入塾に備えて、東大の問題に対応した教材を作成するなどというのは、東大対策の需要がほとんどない九州の小規模塾では極めて非現実的なことです。私は、数学だけなく、物理も化学も対応しているので、さらに現実的ではありません。

つまり、「堅牢である」ことと「システムを構築する」ことは、全く違った世界の価値観といえます。

しかし、マイナンバーカードそのものであったり、健康保険証との統合は、この二つを融合させないといけない事業です。

私には、今の体制で、これができると思うことが全く理解できません。ましてや、来秋に実現できると思うことは、狂気すら感じます。

マイナンバーカード問題について、世論調査で7割を超える人たちが反対しているのは、何らかの形でシステム構築と関わる生活実感との乖離があり、「これはヤバい」と実感しているからでしょう。

皮肉にも与党の政治家だけがこの乖離を感じることができない。その点においても、現役の政治家、とりわけ世襲議員の質的問題は深刻ではと思っています。

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