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君たちは、「これを」どう見るか【対象が変わると「力」の意味が変わる:センター試験物理】

今回は、センター試験物理(2015年追試)の問題を解説します。

問題はこちら。

まず、密度は不均一であると言っていますので、質点を取る重心の位置は真ん中(ℓ/2)ではありません。だから(1)でその重心の場所を聞いているいます。そこは理解した上で解き進めます。

本問は(1)がポイントでしょう。

結論から言うと、(1)と(2)では、何を対象物とするかで、力の意味が変わるのです。

まず、(1)を考えるとき、棒には、左右の糸(糸ACと糸BC)からの張力があることが分かります。しかし、これを考慮して、xが出てくるとは思えません。糸の張力をTA、TBとしておくと、この変数が処理できないからです。

本問のポイントは、(1)の場合、対象物は、棒と糸を含めた△ABCとなるのです。
そうすると、力は、このようになります。

すると、糸の張力TAとTBは、内力になります。△ABCと見ると、外力は天井が引っ張るFCと重力のみ。

これが同一の作用線上にあるので、棒は、水平になっていると言えるのです。
なので、以下相似で解いていきます。

一方(2)は、今度は対象物は、棒になります。
今度は張力TAとTBは外力になります。
これは、モーメントの典型問題となります。張力を鉛直方向、水平方向に分け、
変数はTAとTBの2つなので、鉛直方向のつり合いと、モーメントの式で答えは出てきます(もちろん、TAとTBの水平方向のつり合いでも出てきます)。

となります。本問は(2)から着手して、TAとTBを出してから、モーメントの式から(1)から出すことも「可能」ではあります。

しかし、本問を通じて、対象物の違いにより、外力の意味が変わるということを体験することはとても意味があります。

物理は、概念の要素が強い教科です。
立場を変えると、意味や式が変わる。このことは、物理を学ぶ要諦でもあります。
「絶対」の呪縛から解き放たれることが、物理を学ぶ最大の意味かもしれません。思考の自由は、物理からとも言えるのではとも思っています。


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