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御蔵島海底光ファイバーケーブルの陸揚用トンネル管路建設工事をご紹介します!

 こんにちは皆さん!島しょ通信担当です。
 令和5年12月1日のnoteでは、御蔵島村の海底光ファイバーケーブル(以下、「海底光ケーブル」という。)について、更なる安定化・強靭化を目指して強靭化対策工事に着手していることをお伝えしました。
 この強靭化対策工事は、皆様のご理解ご協力を頂き、おかげさまで順調に進んでいます。そして、今月からは、本工事のなかでもメインと言える、HDD工法によるトンネル工事を開始しました。今回のnoteでは、その概要をお伝えいたします。

 12月1日のnoteは以下 URLで!

 事業概要は以下URLで!




写真1 御蔵島の工事現場(トンネル発進基地)

⛵なぜトンネルによる強靭化を行うのか

 改めて、海底光ケーブルの強靭化のためのトンネルの必要性をご説明します。御蔵島の陸揚げ部(海底光ケーブルが海底から陸上にあがる部分)は、外洋に直面しており、波浪の影響を直接受けやすいとともに、水深が浅いところには無数の大きな石があります。このため、波浪の影響を受けた海底光ケーブルは、海底にたたきつけられたり、海底の石にはさまれたりすることとなり、海底光ケーブルが損傷する事故がこれまでに複数回発生しています。そこで、波浪により動かされた石によって海底光ケーブルが損傷することを防止するため、港から沖に向かって石が少なくなる所までトンネルを掘削し、その中に海底光ケーブルを敷設し直すことで強靭化を図ることとしました。

図1 トンネル整備のイメージ



⛵ HDD(Horizontal Directional Drilling) 工法とは

 トンネル掘削は、”HDD工法”という工法を採用しています。この工法は、小口径で長距離のトンネルを正確な方向に制御しながら、高速で掘進することを可能としている工法です。通信や電力の配管、水道管等の陸揚げ部で、波浪による損傷や漁場を避けるために用いられている工法です。
 掘削は、地面に対して斜め下向きにセットした掘削機(図2)でトンネルを掘っていきます。先端に取り付けられたドリルビット(土を掘り崩す突起の付いたもの)が回転し、地盤を切り崩して地中を掘り進んで行き、一定の距離を掘り進むごとに掘削機の後ろにドリルパイプを継ぎ足していくことで、延長を延ばしていきます。そして、海中の計画位置まで掘削機が達したところでトンネル掘削は完了します。掘削完了後は、掘削に用いたドリルパイプをそのまま地中に残すことで、このドリルパイプが海底光ケーブルの陸揚げ用の管路になります。ちなみにドリルパイプはイタリアの専門メーカーで製作され、海上を3か月かけて御蔵島に運び込まれました。

図2 掘削機



⛵掘削のしくみ

 HDD工法は、前述のとおり先端のドリルビットが回転してトンネルを掘る仕組みとなっています。そして、この掘削する仕組みにおいて重要な役割を担っているのが泥水(でいすい)です。泥水は水とベントナイト(微細な鉱物性粘土)を混ぜたものです。泥水は、ドリルパイプを通じて掘削機の先端に送られ、ドリルビットから噴出されることで掘削を行います。また、圧力をかけて送られる泥水は、ドリルパイプ内で掘削機の回転を生みだしています。さらに、泥水は、掘り終わったあとのトンネル内部の壁(孔壁)とドリルパイプの隙間に充満することで、トンネルが崩れることを防いでいます。掘削した土砂と混ざった泥水は、ドリルパイプを通って地上側に戻ったのち、土砂と泥水に分けられ、再度、ドリル先端に送り込まれます。
 
 この泥水が作られ循環する工程を現地写真で説明します。

 手順1・・・水槽、ベントナイト槽、作泥装置で泥水を作製。(写真2①②)

写真2


 手順2・・・泥水が配管を通じてマッドポンプに送られ、ポンプで泥水に圧力をかける。(写真3③)

写真3


 手順3・・・圧力をかけられた泥水が掘進機に送られる。(写真4④)
 手順4・・・泥水は、掘進機でドリルパイプ内(写真4⑤)に注入され、先端のドリルビットから噴出される。(動画1)

 動画1は掘削を始める前の試運転ですが、泥水がいきおいよく噴出されているのが分かると思います。

写真4

↑動画1(ドリルビットから泥水が高圧噴出されている)


 手順5・・・地上に戻された泥水はシェイカー(写真2⑥)に送られ、土砂と泥水に分離される。土砂は残土として処分される。
 手順6・・・泥水は再びマッドポンプ(写真3③)に送られ再利用される。
 
 以上の泥水サイクルを繰り返しながら、掘削機のドリルビットの掘進力と泥水の圧力により掘削は進んでいきます。

写真5 掘進機から地中に向かって推進するドリルパイプ


写真6 掘進機にセットされたドリルパイプ



⛵おわりに

 本工事は、けっして広いとは言えない御蔵島港の一画を占用して作業を行っています。この作業エリアを確保して頂くにあたり、地元関係者の方々には多大な御協力をいただきました。また、島で暮らす方々の関心が高く、作業状況の問いかけを受けることも度々あります。多くの方々の協力のもと、御蔵島村での海底光ケーブル強靭化工事は進められています。引き続き、安全第一に工事を進めて参りますので、皆様のご理解ご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
 今回、海底光ケーブル強靭化工事のなかでも技術的に高度なHDD工法によるトンネル工事を紹介させていただきました。引き続き、島しょの高速ブロードバンドサービスを支える海底光ケーブルの更なる安定化に向けて取り組んでまいります。

 ここで紹介した島しょ地域の情報通信基盤整備及び保守、運用管理に関する情報は、デジタルサービス局ホームページでも公開をしていますので、ぜひご覧ください。