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利島・御蔵島における海底ケーブルの強靭化対策を進めます

皆さん、こんにちは!島しょ通信担当です。私たちは、令和3年3月より、伊豆諸島5村6島の海底ケーブル陸揚部※の強靭化に向けた対策工法について検討してきました。今回はその取組について報告します。是非、最後までご覧いただけますと幸いです。
※陸揚部:海底ケーブルが海中から陸上に上がる水深が浅い部分から陸上までの区間

さて、本題に入る前にクイズです!
1 この記事のトップ写真に写る島はどこでしょうか。
a 御蔵島   b 利島   c 神津島

2 海底ケーブルには世界の国際間のデータ通信の何%が通っているでしょうか。
a 88%    b 95%    c 99%
(解答は記事の最後をご覧ください。)

⛵都の海底ケーブル整備について

 都は、小笠原諸島の父島・母島及び伊豆諸島の5村6島(利島、新島、式根島、神津島、御蔵島及び青ヶ島)への海底ケーブルの整備を行ってきました。海底ケーブルの整備により超高速ブロードバンドサービスの提供が実現し、本サービスは地理的に制約が多い離島の生活にとって必要不可欠なものになっています。安定したサービス提供を行うために、都は民間通信事業者と連携し、海底ケーブルの維持管理を行っています。

海底ケーブル敷設概要図

海底ケーブルの維持管理については、過去のnoteでも紹介していますので、是非ご覧ください!

⛵インターネット環境改善事業検証委員会

 伊豆諸島の5村6島は外洋に直接面しており、波浪による影響を受けやすいためこれまでに海底ケーブルの損傷が複数回発生していました。
 この状況を踏まえ、伊豆諸島5村6島への海底ケーブル整備事業全体を検証することを目的として、都は令和3年3月、有識者を交えた「インターネット環境改善事業検証委員会」を設置しました。6回にわたり検証委員会を開催し、整備事業全体の検証、課題の把握、対策必要箇所の特定、対策の検討を行いました。

 検証委員会からは、「通信環境の安定性向上に向けた対策は優先順位を定めて実施していくことが肝要であり、過去の通信障害事例を踏まえると利島及び御蔵島における海底ケーブル陸揚部の対策を優先的に進めるべきである」「対策工法の確定には更なる調査検討が必要であり、対策工法に特化した専門家を交えた新たな検討の場を設けるべき」との提言を受けました。

⛵島しょ5村6島情報通信基盤強靭化検討委員会

 この提言を受け、利島及び御蔵島における海底ケーブル陸揚部の強靭化対策の検討を行うため、工法に特化した専門家を交え「島しょ5村6島情報通信基盤強靭化検討委員会」を令和4年4月に設置しました。検討委員会では、先の検証委員会で検討された以下の対策工法4案について、詳細な現地調査を実施したうえで、様々な角度から深く検討することで、島ごとの陸揚対策案を選定しました。

 現地では、地下の地盤の状況を調べる陸上部の調査と、海底にどれくらいの大きさの石がどんな具合に分布しているのかを調べる海洋部の調査を実施しました。調査については、過去のnoteでもご紹介しています。

 利島では、調査・検討の結果、案4の安定エリアへの設置案を採用することとしました。波の影響を比較的受けづらい安定したエリアである利島港東側の岸壁と防波堤で囲まれた部分に海底ケーブルを通すとともに、船がイカリを降ろす泊地を避けて陸揚げすることで、これまでよりも、海底ケーブルの損傷リスクを減らすことができると考えています。また、ダイバーによる作業が可能な水深30mまでの区間では、海底ケーブルを防護するための管を取り付けていきます。施工は、船舶への影響や他の港湾工事との調整などを行った上で進めていきます。

利島港内の安定したエリアにケーブル敷設の概要図

 御蔵島では、陸上部の調査の結果、案1のHDD弧状推進工法を採用することとしました。HDDとは、Horizontal Directional Drillingの略語で、誘導式水平ドリル工法とも呼ばれます。簡単に言うと、地上にドリルの機器を設置し、弧状にトンネルを掘削していく工法で、掘削したトンネルの中に海底ケーブルを通していきます。御蔵島は、地下の地盤がトンネル掘削に適しており、弧状推進工法のルート設定及び作業に必要な用地を確保することが可能であることから、この工法が適していると判断しました。地上から掘ったトンネルは、水深約20mの地点で海に出ていきます。このため、水深の浅い位置に点在する転石を避けて、海底ケーブルを海に出すことが可能になり、これまでよりも、海底ケーブルの損傷リスクを減らすことができると考えています。また、利島と同様に、ダイバーによる作業が可能な水深30mまでの区間では、海底ケーブルを防護するための管を取り付けていきます。施工は、ドリルの機器の設置場所の調整などを行った上で進めていきます。
 以下に、HDD弧状推進工法の概要図を示します。緑色の線が掘削するトンネルになります。

HDD弧状推進工法のイメージ

この検討委員会の報告書をデジタルサービス局ホームページで公開しています。

 現在、各島の村役場をはじめ、関係機関との調整を図り、対策工事の詳細設計を進めています。引き続き、強靭化対策の実施に向けた準備を着実に進めていきます!

 クイズの答え 
1 a御蔵島(御蔵島港東側の海岸)
  (御蔵島の周辺には、野生のイルカが生息しており、ウォッチングツアーが人気だそうです。是非足を運んでみてください!)
2 c99%
  (海底ケーブルは、世界中の通信の要になっています。安定したブロードバンドサービスの提供のためにも、適切な維持管理や強靭化に向けた取組を進めていきます。)