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利島海底光ファイバーケーブルの港内陸揚げをご紹介します!

 こんにちは皆さん!島しょ通信担当です。
 令和5年9月20日のnoteでは、利島村の海底光ファイバーケーブル(以下「海底光ケーブル」という。)について、更なる安定化・強靭化を目指して強靭化対策工事に着手していることをお伝えしました。
 この強靭化対策工事は、皆様のご理解ご協力を頂き、おかげさまで順調に進んでいます。そしてついに、今年6月、この工事のメイン工種とも言える、ケーブルの陸揚げ作業を行いました。今回のnoteでは、その概要をお伝えいたします。

 令和5年9月20日のnoteは以下URLで!

 事業概要は以下URLで!




⛵ 陸揚げとは

 利島に敷設されている海底光ケーブルは、陸揚げ場所(海底光ケーブルが海底から陸上にあがる場所)が、外洋に直面しているため波浪の影響を直接受けやすい状況にあり、ケーブルを守る防護管の損傷がたびたび発生していました。そこで、強靭化対策の取組として、海底光ケーブルの陸揚げ場所を見直し、比較的静穏な港内に移設することにしました。
 この海底光ケーブルの移設作業における『陸揚げ』とは、新ルート用のケーブルを積んだ大型敷設船が、港の沖に停泊し、海中にある既設海底光ケーブルを海底から水面に引き揚げ、船上で新しいケーブルとつないだ後、新しいケーブルを陸地まで敷設し、陸上の既設光ケーブルと再接続するという一連の作業を指しています。
 図1に示すように陸揚げ作業は、大型敷設船以外にもさまざまな船舶の支援のもと行われます。それでは、この陸揚げ作業について詳しくご説明いたします。


図1 陸揚げ作業を支援する船舶

⛵ 陸揚げ作業方法

 陸揚げ作業方法を5つのステップに分けて説明いたします。

<ステップ1>
 大型敷設船による既設海底光ケーブルの切断及び大型敷設船の船固め作業
<ステップ2>
 新しい海底光ケーブルを大型敷設船から港内へ引き込む作業
<ステップ3>
 仮陸揚げ地点に海底光ケーブルを陸揚げする作業
<ステップ4>
 仮陸揚げ地点に陸揚げされた海底光ケーブルを本設の陸揚げ地点に移動する作業
<ステップ5>
 新設の海底光ケーブルと既設の陸上光ケーブルを接続する作業


ステップ1

 新しい敷設ルート用の海底光ケーブルを積み込んでいる大型敷設船は、予め計画した既設海底光ケーブルの切断地点である港の沖に停泊します。そこで、海底から水面に海底光ケーブルを引き揚げ、切断すると共に、新しい海底光ケーブルと接続します。そして、港湾の出入口付近の大型敷設船がギリギリ航行可能な地点まで海底光ケーブルを敷設した後、船固めを行います。船固めとは、陸揚げ作業に適した位置に敷設船を定点保持することを言います。船舶の海上における停泊は、一般的にはアンカーが用いられますが、本工事では敷設する海底光ケーブルを損傷させる可能性があることから、アンカーを使用せずに、センサーやプロペラを使用して定点保持を行いました。

写真1 船固めを行った大型敷設船


ステップ2

 次に、港湾出口部に船固めした大型敷設船から港内に海底光ケーブルを敷設します。海底光ケーブルは、大型敷設船の船尾から順次繰り出していき、支援船にて仮陸揚げ地点まで牽引します。なお、海底光ケーブルの牽引は、ケーブルを損傷させないため、ケーブルに添わせたロープを用いて行います。
 また、海底光ケーブルの敷設時は、ケーブルにタイヤチューブを取り付け、水面に浮かせた状態で行い、水面上で最終的な敷設ルートに配置できた段階で、チューブを外していくこととなります。

写真2 繰り出された海底光ケーブルを支援船で牽引する様子


ステップ3

 いよいよ海底光ケーブルを陸揚げします。支援船で牽引されてきた海底光ケーブルに添わせたロープを、仮陸揚げ地点で陸上の牽引用ロープと接続します。そして、写真4に示すように陸上に配置した重機の力で陸上に引き揚げを行い、大型敷設船内の海底光ケーブルを全て引き出します。
 陸への牽引作業は、牽引時にケーブルに大きな張力がかかることから、直線的に行う必要があります。今回計画した港内の敷設ルートは、港内で大きく曲げる配置となっていたため、本設の陸揚げ地点ではなく、港の入口から直線上にある場所を仮陸揚げ地点としています。

写真3 海底光ケーブルを仮陸揚げ地点へ牽引
写真4 仮陸揚げ地点での海底光ケーブルの重機による陸揚げ作業


ステップ4

 仮陸揚げ地点に陸揚げした海底光ケーブルは、重機と人力を使って、本設の陸揚げ地点に移動させていきます。本設の陸揚げ地点には、光ケーブルのためのマンホールを設置してあり、このマンホールの中で「既設の陸上光ケーブル」と「今回敷設する海底光ケーブル」を接続することとなります。
 海底光ケーブルをこのマンホール付近まで移動させ、マンホール内から港内の護岸を掘削して構築したケーブル管路にあらかじめ通してあった引込みロープと接続します。

写真5、6 仮陸揚げ地点からマンホール付近への海底光ケーブルの移動


ステップ5

 マンホール内への海底光ケーブルの引込みは、海底光ケーブルと接続した引込ロープを手繰り寄せることで行います。マンホール内に引き込まれた海底光ケーブルは、その後、マンホール内で陸上光ケーブルと接続され、これにより、丸一日を要した陸揚げ作業が完了となります。

写真7 マンホール内で海底と陸上ケーブルが接続された様子

 その後、海底光ケーブルは、予定の位置に設置する必要があるため、支援船とダイバー作業員で、ひとつひとつ位置を確認しながらタイヤチューブを外して、ケーブルを沈下させていくことなります。


⛵ おわりに

 今回の陸揚げ作業の実施にあたっては、関係者の皆様の多大な御協力をいただき、無事に終えることができました。この陸揚げ作業のあとは、敷設したケーブルへの防護管設置や古いケーブルの撤去、陸上部の管路整備等の作業を進めて参ります。引き続き、安全第一に工事を進めて参りますので、皆様のご理解ご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
 今回は、海底光ケーブル強靭化工事のなかでもメイン工種である海底光ファイバーケーブルの陸揚げ作業を紹介させていただきました。引き続き、島しょの高速ブロードバンドサービスを支える海底光ケーブルの更なる安定化に向けて取り組んで参ります。
 
 ここで紹介した島しょ地域の情報通信基盤整備及び保守、運用管理に関する情報は、デジタルサービス局ホームページでも公開をしていますので、ぜひご覧ください。