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お宿とコーヒーの話

人というのは大人になっていく過程でどこかで年齢に見合わない大人ぶりをしたくなった経験があると思います。それが中二病だったり、ドラマや映画の俳優のマネだったりは人それぞれですが、私の大人ぶりは「大人の飲み物を飲む」ことでした。ジュースばっかり飲んでた私ですが、カッコつけて緑茶とか紅茶とか飲んでみてたんですね。で、緑茶や紅茶とはあっさり仲良くなれたんですが、コーヒーだけはなかなか仲良くなれなくて、カッコつけても無糖のカフェラテとかそんなのが限界でした。しかし不思議なもので、私の今は各店のコーヒーをブラックで飲むことがマイブームになっています。不思議なものです。
ブラックコーヒーを飲んだときの私の感想は「苦い水」でしたが、その認識が改まったきっかけ……だったかもしれないお話をおひとつ。

8月末、就活だのなんだののストレスをフルに抱えた私は全力の現実逃避をすべくなけなしのお金を叩いて長野県の山奥の宿へと向かいました。

古民家を改良したというお宿には古民家らしく囲炉裏がありました。朝食は火の焚かれた囲炉裏の周りの部屋でしたから、囲炉裏で何かしら作業をしてる方の姿がよく見えました。食後、「少し見学していっていいですか?」と尋ねると、「どうぞ見ていってください」と。このお宿の名物が灰焼きおやき。囲炉裏の火の維持は大変ということで、朝だけ火を焚いてそのときにおやきを焼いてしまうんだそう。珍しい光景に他の宿泊者さん達も集まり、お宿の方が気を遣って座敷を持ってきてくださって気付けば囲炉裏の周りでは談笑ムード。

灰焼きおやきを焼く傍らではスキレットみたいな小さなフライパンでコーヒー豆を煎ってる様子が見られました。焚き火の香りに混ざってふわりと香るコーヒーの香り。コーヒーは苦手でも、香りだけは昔から好きでした。
このお宿ではコーヒーを苦くするのがこだわりポイントなんだそう。よかったら1粒食べてみますか?と煎りたての豆を1粒頂きました。案の定といいますか、舌いっぱいに苦味が広がりました。宿泊中に追加料金で頂けるドリンク類にコーヒーフロートがありましたから注文しました。バニラアイスは甘くて美味しかったものの、コーヒーはやはり苦い味でした。やっぱ苦いよなぁ、と内心苦笑しつつも、宿のこだわりを聞いてから飲んでそのこだわりを実感するのは新鮮な体験でした。


その後地元に帰った後のある日カフェラテを飲んだら「水と牛乳が混ざったような味」を感じてしまったので、その次ではブラックコーヒーを飲んでみました。マクドのコーヒーだったと思います。苦かった宿のコーヒーと異なり、酸味をよく効かせたコーヒーだと感じた記憶があります。何度か飲んでるうちに店によりコーヒーの味が異なることに気付き、気付けば味比べをするのが楽しみのひとつになっていました。

単に慣れたというのはあるかもしれません。しかし、コーヒーに対する認識が変わった「きっかけ」があるのだとしたら、間違いなくあのお宿でコーヒー豆を食べた体験だっただろうとは思うところです。


(全然更新できてなくてお宿の話の続きすらマモトに書けてない状況で恐縮です……)

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