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【第18話】ニコンがレトロなAPS-C機の噂!1950年代の名機Nikon SPを上回れるか?

当「寫眞機余話」もスタートして2ヶ月余り。この間、300以上の「スキ」を頂いた。

拙い文章を読了していただくだけでも有り難いのに、高評価までいただき、感謝の念に堪えない。本当にありがとうございます。

さて、今回は、戦後日本のカメラ史を築いたニコンがテーマである。

大苦戦のニコンZシリーズにレトロ調の噂

そのニコンがZシリーズ、つまり、ミラーレスカメラ戦線で大苦戦を強いられている。

Zシリーズは、レンズの光学性能が超優秀だ。多くの写真家がZレンズの素晴らしさを盛んに語っているが、それでもカメラが売れない。風が吹かない。

カメラ量販店や専門店の販売ランキングでは、ソニー、キヤノンが上位を独占。トップ10にニコンが見当たらず、むしろ富士フイルムが上位2社を追いかける展開だ。

あれだけ優秀なレンズを発売しながら、カメラボディが売れない。

ということは、カメラが悪いか、値付けが悪いか、どちらかが原因である。もしかしたら、両方かもしれない。

「ニコンは宣伝の仕方が下手だから」という人もいるが、そんなレベルはすでに通り越していると思う。

ニコンは敗因を分析し、戦略を大修正できるのだろうか?

と思っていた矢先、「ニコンの新型APS-CカメラはFE10に似たレトロ調カメラになる?」という噂が流れていた。

その噂によると、新型APS-C機のモチーフはNikon FE10のような一眼レフだという。「Nikon FE10?」。そう思った人も少なくないはずだ。もっとも、これはガゼネタかもしれない。

ただ、ニコンの社員たちも、Z7 ⅡやZ6 Ⅱのようなデザインでは、今後、いくら頑張っても売れないと感じ始めているのではないかとも思った。

ニコンの輝かしい歴史に欠かせない名機たち

私は昨年5月、ちょうど1年ほど前、「ニコンを救いたい」と題してブログ記事を書いた。そして、賛同の声も頂いた。

「ニコンを救いたい」は、カメラは性能も重要だが、デザイン良しでなければ、販売量は望めないという内容である。

同時に、趣味的な商品には、ストーリーが重要だ。

ただ、ニコンには戦後日本のカメラ史を牽引した歴史的ストーリーがある。

敗戦後、日本製品の輸出復興を担ったのがS型ニコンである。ライカを打ち負かしたエンジン役は初期のF型ニコン(F、F2、F3)・・・その輝かしい歴史を商品開発に生かさない手はない。

ブログ記事は恵まれた立場にあるニコンの応援歌でもあった。

というわけで、今回は日本光学(現ニコン)が1950年代、世に送り出した国産レンジファインダーの最高峰・Nikon SPの魅力や使用感、なぜライカにこの機種が負けたのか、私の考察を記したい。

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(写真はニコン草創期の名機Nikon SP。α7Ⅲ+FE 90mm F2.8 Macro G OSSで撮影)

S型ニコンは1950年代、日本光学(現在のニコン)の技術者たちがライカに追いつけ、追い越せとばかりに製造した機種である。

1950年代の名機Nikon SPに感じた技術の結晶

Nikon SPはシャッターフィーリングが気持ち良い。私の所有するSPは初期型なので、横走り布幕フォーカルプレーンシャッターを採用している。そのためか、シャッター音は優しい。(後期型はチタン幕)

さらに、さまざまな焦点距離のレンズに対応できるように、28mm、35mm、50mm、85mm、105mm、135mmのファンダー枠を全て内蔵している。

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左肩のダイヤルを回すと、ファインダー枠が現れる。この機構は、当時のライカ機にはない。

28㎜から135㎜までファインダー枠があるため、別途、焦点距離に合わせた外付けファインダーを用意して取り付ける必要もない。

ニコンSマウントレンズの魅力

さらに、可愛いレンズ群も魅力的だ。

下の写真は、ニコンとライカが誇ったF1.4の明るい大口径の標準50㎜。いわば、かつてのエース級レンズたちだ。

左から、ニコンFマウントの「Ai NIKKOR 50㎜ F1.4」(1977年発売)。中央がニコンSマウントの「NIKKOR-S 5cm F1.4」(1956年)。右端がライカMマウントの貴婦人こと「Summilux-M 50mm F1.4 1st」(1959年)。

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(写真は、α7Ⅲ+FE 90mm F2.8 Macro G OSSで撮影)

このなかで、S型ニコンの「NIKKOR-S 5cm F1.4」は、最も古い1956年に発売されたものだが、サイズは最小である。

さらに、その4年前に発売された「W-NIKKOR•C 3.5cm F2.5」はさらに小さい。

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(写真は、「W-NIKKOR•C 3.5cm F2.5」。α7Ⅲ+FE 90mm F2.8 Macro G OSSで撮影)

Nikon SPの魅力は、この小さいレンズで軽量なシステムを組める点だ。軽量でも描写力は馬鹿にできない。

ニコンSマウントレンズの作例

まずは、NikonSPとNIKKOR-S 5cm F1.4(FUJIFILM業務用100)。懐かしい絵作りが印象的だ。

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次は、Nikon SPとW-NIKKOR•C 3.5cm F2.5(FUJI FILM SUPERIA PREMIUM400)。色乗りと解像感が凄い。

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ライカM3に劣る点と歴史的意義

Nikon SPは、ライカM3の登場、さらにニコンが一眼レフに舵を切ると共に歴史の表舞台から姿を消した。私はM3のユーザーでもあるが、Nikon SPは残念ながら、ファインダーの見やすさやフォーカシングの容易さという点で劣っている。

一方、歴代のF型ニコンは世界市場を圧巻。ライカを経営難に追い込むまで人気を博した。ただ、ニコンの初代一眼レフ・Nikon Fは、レンジファインダーのNikon SPを基本に設計された。写真下記の部分は瓜二つだ。

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(写真は、α7Ⅲ+FE 90mm F2.8 Macro G OSSで撮影)

その意味で、Nikon SPに込められた「打倒!Leica」の思いは、F型ニコンによって成就されたのである。

ニコンが、新型APS-C機でモチーフにすると噂されるNikon FE10。

1997年にコシナのOEM製品として誕生した普及機だった。デザインは富士フイルムのX-T100に似たカメラで、いまも中古市場で数千円で売られている。

ロマンとストーリーという点で、どう感じるだろうか?

ニコンは自分たちの先人が築いた歴史の重みとストーリーを大切にしてほしいと願うばかりである。


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