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運命を変える出会い #7

「俺はお前が1番だよ」


あとから冷静になって考えてみれば、
彼にとっての唯一の存在だったなら
そんなセリフなんかでてこない

だけどそんなことよりも
目の前にある誘惑に引き込まれてしまう

視界が涙でにじむ…
そんな一言でさえ
私は幸せだと…嬉しいと感じていたのだ

さっきまで頭の片隅によぎっていたものさえ
今はもうどこかに飛んでいってしまった


そのまま私たちは
お互いを求めて強く抱き合った


…私は大きなあやまちをおかしてしまった
引き返せばよかったのに
思いとどまればよかったのに

でも抑えきれなかった

彼はそれからもよく会いに来てくれていて
本当に彼女がいるのかどうかすら
分からないくらいだった

それが余計に私を狂わせた

だけど数日後
私を我に返らせる瞬間が来る

その日彼は急に家にやってきた

彼は家に入るなり
私を求めた

ベッドに押し倒された私は
戸惑いながら彼を制する

「ごめんね、今日女の子の日なんだ」
「……あー…そっかぁ…」

その瞬間、なんとも言えない空気になる

「…帰るわ」

コーヒーを淹れようと、
マグカップを取る私の手が
その一言を聞いてかすかに震える

「え?なんで?一緒にいてよ」
って言いたい私の言葉は喉に引っかかって出てこない

この頃の私は
嫌われるのが怖くて
本音をぶつけることができなかった

ただ、彼の背中を見送ることしかできなかった



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