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『喫茶 花』で雨宿り

カランコロン♪

「今日はひどい雨だねぇ」
そんなことを言いながらも、いつもと変わらずきてくれる。
思わずずぶぬれだったその女性に乾いたタオルを渡しながらカウンターに案内する。
 上品な雰囲気でいつも素敵なバッグを下げて定期的にお店にきてくれるのは「おすぬさん」。彼女はいつもカウンターに座って、私と他愛もない世間話に花を咲かせる。
 「こんな日はお店の掃除も大変よね〜」と、雨で濡れたところをタオルで拭いた後にようやく椅子に腰掛ける。
 おすぬさんは、「ワールド・ブルー株式会社」の元清掃員。あれだけ大きい会社の掃除だ、雨の日は相当大変だったんだろうなと思わず苦笑いしてしまった。

 雨の日はいつもよりお客様も少ないのだが、なんだか今日は雨宿りがてら立ち寄ってくれるお客様が多い。

そんな中、一本の電話が鳴る。

電話はワールドブルー社の秘書さん。いつものコーヒー豆を取りに来れないから届けて欲しいと言う内容だったが、電話の向こうはなにやら騒がしく、慌ただしく電話はきれた。
忙しいならコーヒーなんて明日でもよさそうだけど…

「波さん、いつものコーヒー豆、ワールドブルー社に届けてきてくれる?」

 まだ、片付けで忙しそうな従業員の波さんに声をかける。雨の中だし、申し訳ないから用事が済んだらそのまま仕事をあがってもらおう。
毎度渋々ながらも引き受けてくれる波さんと一緒にテーブルを片付ける。
きっと、あれだけバタバタしているなら、蒼社長はきっとまた疲れた顔をしているんだろうな…波さんからまた「ヨレヨレ」って言われるのかしら。

 波さんを送り出すと、ちょうどみんなお客様が帰った後で店の中は静まりかえってしまった。今は16時、仕事帰りに立ち寄ってくれるお客様がくるとしてもあと1時間半くらいは静かな時間が流れる。


カランコロン♪
そろそろ来るかなと思っていた矢先に彼はやってきた。

パリッとスーツを着こなしているが、雨の中ずっと外回りをしていたのだろう、足元がすっかり濡れてしまっていた。
店に入ると、勝手知ったる我が家のようにいつものソファ席に腰を下ろす。
店内でも唯一のソファ席は、よく仕事の打ち合わせに使われている。少し奥まった場所にあるそのスペースは個室ではないのに、あまり周りに会話を聞かれる事がないのだ。

コーヒーを2人分淹れて、席に向かう。
お客様がきたらすぐ対応できるように、ソファに浅く腰をかけてコーヒーを差し出す。
「あー。やっと一息つけた」
と彼はソファに身を委ねてくつろぐ。
外回りを終えて、会社に戻るまえに立ち寄ったようだ。
年齢の割にしっかりしていて、頭の回転もはやく仕事ができるようで、彼は入社してから一気に「ワールド・ブルー株式会社」の部長になったらしい。
部下からの信頼も厚いので、社長の孫だからという理由だけではないだろう。
そんな社長の孫マイトンさんは、いつもならカウンターやテーブル席に座るのだが、たまに誰もいない店内の時なんかはソファ席に座る。
その時だけはなぜか私も一緒にそこに座ってコーヒーを飲む。約束をしたわけでもないのだが、身についた習慣のように自然とそうするのだ。

マイトンさんのスマホが鳴る。
めんどくさそうに画面をみるなり、表情が明るくなった。どうやら大好きなおじいちゃんからの電話だったらしい。
社長でもあるおじいちゃんと、ゆにさんの噂を聞いて慌てふためく様子を思い出した。
電話を終えると、マイトンさんの表情は一転して複雑な顔になっていた。
どうやらすぐに会社に帰ってきて欲しいと言われたようだ。マイトンさんは一気にコーヒーを飲み干すと、会社へと急いで行ってしまった。

ちょうど雨は上がったようだ。


#ワールドブルー物語
#みんなで楽しむ
#喫茶花

<あとがき>
今回も自己満で楽しく書き上げましたw
マイトンさんと絡もうと思ったら、不思議な関係になってしまいました。
みなさんの記事がすごい勢いであがってくるので、あれもこれも書いてみたい事がたくさん出てきますが、波さんも我慢してるので私も我慢が必要だなと思う次第ですw
 そういえば波さんが「#喫茶花」というタグを作っていただいたので真似してみました。ぜひ、ご来店いただいた際にはこのタグ使ってください♪


*この物語はフィクションです。
以下の企画に参加しております。詳しくは…

今回のお話は…
従業員「波」さん

からの〜種を回収してみましたが、回収できていない気もしないでもありませんw

ゲストとして登場してくれたのは、
ワールドブルー社、清掃員の「おすぬさん」

そして、ワールドブルー社の生みの親?
蒼社長の孫ことマイトンさん

ご来店ありがとうございました♪



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