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運命を変える出会い #9

不意に抱きしめられて
近づいてきた彼のくちびるを
そっと指で止めて
私は体を後ろにそらした
何かを感じたのか
彼は悲しそうな目をしていた

そっと彼の胸元に手を当てて
抱きしめられた体を優しく離す

どうしてこうなってしまったのだろう
どこで道を間違えてしまったのだろう


1時間ほど前
気合いを入れて家を出た私

マンションの下に停めていた
彼の車の助手席に乗り込む

なんだか心配そうな彼の顔
その優しい目を見ると
決意が壊れてしまう気がして
彼の目を見ることができなかった

「もう終わりにしたい」
その一言がなかなか出てこない

まだ未練があるのだろうか
臆病で弱い私

どこかで嫌われたくないって思っている

不意に車が走り出す
沈黙に耐えられなかったのか
話しやすい空気を出そうとしてくれたのか

しばらく走っていると
「ゆっくり話したいから俺の家においで」

彼の家は実家で両親がいる

複雑な気持ちになった
彼と、彼のご両親と、本当の彼女と…

頭の中でパニックを起こしていた
なのに冷静で動じない私を演じていた

「親には挨拶しなくていいよ」
と言われ、そっと彼の部屋に入る


(ちゃんとお付き合いしてれば
 無理言ってでも挨拶しただろうに…)

その時点で私の覚悟は決まった

どう切り出そうかと
彼の部屋の本棚を眺めながら
他愛もない会話をする

ふと会話が途切れて
彼の方を振り返った


私の気持ちを感じ取ったのか
なかなか本題に行きつかないもどかしさなのか

彼は私を抱き寄せた


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