運命を変える出会い #10
彼のくちびるから手を離し
少しうつむく私を
ただ黙って戸惑うように見つめる彼
「ごめん…こういうの終わりにしよう」
やっとの思いで声をしぼりだした
決意したはずなのに
どうしてこんなに苦しいのだろう
声と一緒に流れ出そうになる涙を
グッとこらえる
「いや、待って待って…なんで…」
と言いつつも、彼の顔を見ればわかる。
なんとなく予感はしていたのだろう。
それでも引き止めようとする彼に
「彼女の存在が私には苦しい」
そうはっきり伝えた。
今まで全く話題にも触れなかった『彼女』
そこに触れた事で
彼は覚悟を決めたらしい
「俺たち終わりにしよう」
私が彼をフったはずなのに
なぜかフラれたみたいな気持ちになる私
けどそんなことはもうどうでも良かった
彼のあたたかいはずのその目は
とても冷たいものに感じられ
私の目の前にいたはずのその人は
そこにはもういなかったからだ
気づいたら自宅に帰ってきていた
送ってもらった後に
「さよなら」を言うまで
2人の間にもう会話はなかった
別れる瞬間
精一杯の微笑みを返す
だけどもう彼の目は見れなかった
私はちゃんと笑えてたかな
そもそも
何も始まってもいなかった2人だ
ただ数回体を重ね合っただけ
気まぐれに遊んでただけの2人が
もう会わなくなるだけの話
なんでこんなに苦しいのか
なんでこんなに悔しいのか
別れる勇気をくれた友達に報告だけして
ベッドに潜り込む
涙は出なかった
辛い以上に
この状況から抜け出せたことに
安堵していたのかもしれない
1人の友人を除いては誰にも知られていないし
きっとこのまま
いつも通りの毎日になるだけ…
もっとステキな人との出会いを待とう
そう前向きに考えようとしながら
自分の心とは裏腹に
変に興奮した頭で
長い夜が通り過ぎて行くのを待った
これで終わる…
このまま時間が流れて行けば…
まだ深くもない傷はすぐに癒えると思ってた
そう…
あの話を聞くまでは
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