DV男から逃れた女の歌…だけじゃない「Começar de Novo」(歌詞の表と裏)
イヴァン・リンス(Ivan Lins)と
ヴィートル・マルチンス(Vítor Martins)の共作で、
シモーネ(Simone【スィモーニ】)の代表曲でもある
「Começar de Novo」
【コメサール・ジ・ノーヴ】
(直訳:再び始める)
は、
1979年にリリースされ、
直ちに大ヒットとなった
MPB(Música Popular Brasileira = ブラジリアンポップ)の
名作の一つです。
その歌詞はこのようなもので、
⇓
シモーネの低音の色気と表現力が相まって
胸が締め付けられるような作品です。
勝手なルールが敷かれ、暴力がふるわれ、
自由を奪われ、恐怖と向き合いながら生き抜いてきた女性が
束縛を解かれ
一人で生きて行く決心をする
という内容ですが、
これはあくまでも表の意味です。
この曲がリリースされた1979年と言えば、
ブラジルの軍事政権の終盤で、
1978年辺りから
それまで検閲に引っかかり未発表になっていた
ブラジル人ミュージシャンや作家の作品が
徐々にリリースされるようになった時期ですが、
まだまだ
おおっぴらな政治批判が出来るわけでもなく、
このような裏と表の意味が同時に込められたものや、
ミルトン・ナシメントの
「Cálice【カーリスィ】」(=「盃」、「聖杯」)が
「Cale-se 【カーリスィ】」(=「黙れ!」)に
掛かっているなど、
工夫に工夫を重ねて発言を試みる作品が
少なくなかったのです。
つまり、
表向きは
DV夫から逃れる女性の歌、
裏の意味は
軍事政権により抑圧され、
ときには国外追放にすら処されてきたアーティスト達が
「表現の自由」を叫ぶ歌になっているのです。
後に作者のイヴァン・リンスは
この作品について、
次のように述べています。
若かりし私は、
この曲を初めて聞いたときから
ゾワゾワとする感動を覚えました。
曲をしっている方もそうでない方も
聞いて頂けると嬉しいです。
お読み頂き、お聴き頂き、ありがとうございました!
※ 「再出発」、否、「夜空のお散歩 超スピード」は
こたつぶとんさんの作品です。
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