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【2つのポルトガル語】: 伯葡語では 「nascer」(生まれる) を【ナッセール】と、欧州葡語では【ナシェール】と読む

なんてことはない…、先日アップした
「ブラジルのいじわるばあさん」の記事を改めて見ていたら、

「あ、そうだ、そうだ!」

と思い出してしまったので…!w

❇❇❇

そうなんです…、
ブラジルのポルトガル語、
つまり伯葡語では
「生まれる」と言う意味の動詞である
「nascer」【ナッセール】と、
あたかも「sc」「ss」であるかのように
発音します。

一方、ブラジル以外のポルトガル語、
つまり欧州葡語では
同じ「nascer」動詞を
【ナシェール】と発音するのです!

これはこの動詞が
「nas」「cer」という二つの音節から成る
ということに着目すると、
どうしてそうなるのかがよく分かります。

というのも、
古くから私の記事を読んで下さっている方々は
ご存じのとおり、
母音を伴わない「s」は、
伯葡語では「ス」と発音するのに対して、
欧州葡語では「シ」と発音するので、

「nas」であれば、
伯葡語では【ス】と、
欧州葡語では【シ】と発音するのです。

👆
んっ?茄子と梨?!どっちも好きなんだけどなぁ…。
(๑º﹃º​๑) ジュルリ
www

これに「cer」という音節を足して
一気に読むと、

伯葡語の場合は、
「ナス+セール」⇒「ナスセール」⇒「ナッセール」、

欧州葡語の場合は、
「ナシ+セール」⇒「ナシセール」⇒「ナシェール」

ということになるわけでして...。

👆
んっ?しかもどっちも「セール」になってるし…!
୧ウレシ(˃◡˂)୨୧ウレシ(˃◡˂)୨
www

結果、
この「nascer」動詞を
「生まれた」と言う形、
つまり過去形に変化させると、
このようになります。

「Nascer」動詞の変化以上に3人称らしき段に「あなた」や「あなた方」が交じっていたり、2人称複数らしき個所に単数っぽい「あなた」が出て来たりという点に目を白黒させてしまった方々がいらっしゃるのではないでしょうか。これは...、

「葡語の正式な2人称の代名詞は "tu"(単数)と "vós(複数)で、それ以外に対しては、動詞は3人称の変化を用いる」というルールがあるため、ブラジルで「あなた(方)」「君(ら)」という意味で使われる「você」「vocês」は2人称ですらない…ということになります。(「você」「vocês」は欧州葡語でも使われてはいるのですが、「você」「tu」よりフォーマルな「敬称」といった扱いになります。)

・一方、「正式な2人称複数の代名詞とされる「vós」」については、格式ばった公文書などにしか使われなくなってしまったことと、神に対して敬意を表して「あなた」という場合に使われることなどから、現在は欧州葡語でも文語にしか用いられなくなっています。

・そんなこんなで、伯葡語の教材では、「どうせ使わないのだから」という理由で初めから「tu」「vós」も教えないというのが主流になっていますが、難しいビジネス文書も書けるレベルまで極めたいとか大航海時代の文書を原文で読みたい等々思われる方の場合は、「tu」はもとより「vós」も含めたコンプリートな動詞の変化を学ぶことが望ましいかと思われます。

※ 「動詞の変化」のことを「動詞の活用」と呼ばれる先生方も多くいらっしゃり、最近ではそれが正しいとすら思っているのですが、「ポルトガル語などの『動詞の変化』と日本語などの『動詞の活用』とはイコールではな~い!」と言って譲らなかった先生の影響(トラウマ?w)で、私は個人的に未だにそうは呼べないでおります...。苦笑

❇❇❇

ちなみに「育つ」という意味の
「crescer」動詞でも同様の違いが見受けられます。

これは
伯葡語では「クレッセール」と、
欧州葡語では「クレシェール」
発音します。

結果、
「私はナザレで生まれ育ちました」
(=「私は生まれも育ちもナザレです」)

という文であれば、

「Nasci e cresci em Nazaré.」

というのですが、

これを
ブラジル人が読むと、

ナッスィークレッスィーンナザ

といった感じになり、

ブラジル人以外の欧州葡語圏人が読むと、

ークレーンナザ

といった感じになります。

(ま、これは、どっちみち「スィ―」などとは発音できない
昭和一桁の人とかであれば、どちらも同じになってしまいますが…、w)
そうでない場合は
欧州葡語は「シ」日本語の「シ」と概ね同様なので
圧倒的に楽に発音できます!👀✌

※  ちなみに発音の良し悪しを気にするのであれば、明らかに欧州葡語の
      方が日本人には向いています!

      何せ欧州葡語であれば、結構上手だと感じる日本人にお目にかかった 
   ことがあるのですが、これが伯葡語となると、残念なことにほぼ皆無
   なのです。それは、たとえ「L」と「R」の区別ができる人であっても、
   伯葡語の大きな特徴でもある「de」や「di」を「ジ」と発音するとき、
 「チ」を基点とした「破裂感」が足りず、「ji」や「gi」を「ジ」と発音
  する際は、「ジュワッ」とした感じが足りないのが最大の問題だと感じ
  ております…。

なお、
伯葡語では「セ」なのに
欧州葡語では「シェ」になるもう一例はというと、

英語の「excellent」(エクセレント、素晴らしい)とほぼ同じ表記の
「excelente」を挙げることができます。

これも
伯葡語なら「エッセンチ」、
欧州葡語なら「エシェントゥ」になります。

ちなみに
これについては
先日ご紹介した動画の中で、

ブラジル人女性が「信じられない」といった顔をしているのが
印象的です。(2'37" 辺りです。)

❇❇❇

最後に
オマケ的な雑学です。

「生まれも育ちも...」という例文で挙げた
「ナザレ(Nazaré)」という地名は
ポルトガルにもブラジルにも存在するのですが、

実はポルトガルとブラジルには
同名の「市」が 77 市あるのだそうです。

その一覧がコチラです。


(※  (  ) 内は、その「市」があるブラジルの州名で、
2つ以上の州に同名の市が存在する場合もあります。
近年ポルトガルでは、一部スペルが変わっている場合もあります。)

  1. Alcobaça (Bahia)

  2. Alenquer (Pará)

  3. Alhandra (Paraíba)

  4. Almeida (Minas Gerais)

  5. Almeirim (Pará)

  6. Alvarenga (Minas Gerais)

  7. Amarante (Piauí)

  8. Anadia (Alagoas)

  9. Aveiro (Pará)

  10. Baião (Pará)

  11. Barcarena (Pará)

  12. Barcelos (Amazonas)

  13. Batalha (Alagoas) (Piauí)

  14. Belmonte (Bahia) (Santa Catarina)

  15. Borba (Amazonas)

  16. Braga (Rio Grande do Sul)

  17. Bragança (Pará)

  18. Bragança Paulista (São Paulo)

  19. Campo Maior (Piauí)

  20. Cantanhede (Maranhão)

  21. Carvalhos (Minas Gerais)

  22. Caxias (Maranhão)

  23. Chaves (Pará)

  24. Coimbra (Minas Gerais)

  25. Colares (Pará)

  26. Crato (Ceará)

  27. Espinho (Minas Gerais)

  28. Extremoz (Rio Grande do Norte)

  29. Faro (Pará)

  30. Fátima (Bahia) (Tocantins)

  31. Fundão (Espírito Santo)

  32. Gouveia (Minas Gerais)

  33. Granja (Ceará)

  34. Guimarães (Maranhão)

  35. Jerumenha (Piauí)

  36. Jurumenha (Ceará)

  37. Lages (Santa Catarina)

  38. Lajes (Rio Grande do Norte)

  39. Linhares (Espírito Santo)

  40. Mafra (Santa Catarina)

  41. Marialva (Paraná)

  42. Marvão (Piauí)

  43. Matozinhos (Minas Gerais)

  44. Melgaço (Pará)

  45. Miranda (Mato Grosso do Sul)

  46. Monção (Maranhão)

  47. Nazaré (Bahia) (Tocantins)

  48. Óbidos (Pará)

  49. Oeiras (Piauí)

  50. Oeiras do Pará (Pará)

  51. Olivença (Alagoas)

  52. Ourém (Pará)

  53. Paranhos (Mato Grosso do Sul)

  54. Penalva (Maranhão)

  55. Pinhão (Paraná) (Tocantins)

  56. Pombal (Paraíba)

  57. Portalegre (Rio Grande do Norte)

  58. Portel (Pará) (Paraná)

  59. Porto (Piauí)

  60. Porto de Moz (Pará)

  61. Queluz (São Paulo)

  62. Raposa (Maranhão)

  63. Resende (Rio de Janeiro)

  64. Rio Tinto (Paraíba)

  65. Sagres (São Paulo)

  66. Santarém (Pará) (Paraíba)

  67. Santo António de Lisboa (Piauí)

  68. São Gonçalo de Amarante (Ceará) (Rio Grande do Norte)

  69. São Paulo de Olivença (Amazonas)

  70. Sarzedo (Minas Gerais)

  71. Silves (Amazonas)

  72. Soure (Pará)

  73. Tomar do Geru (Sergipe)

  74. Valença (Bahia) (Piauí) (Rio de Janeiro)

  75. Viana (Espírito Santo) (Maranhão)

  76. Vila Flor (Rio Grande do Norte)

  77. Viseu (Pará)

出典:https://www.vortexmag.net/77-cidades-portuguesas-que-tambem-existem-no-brasil/


本日もお読み頂き、まことにありがとうございました!


「誕生」は「nascimento」。「Milton Nascimento」の「Nascimento」でもあるし、
王様ペレの本名「Edson Arantes do Nascimento」の「Nascimento」でもありますね。
読み方は、伯葡語が「ナッスィメントゥ」、欧州葡語が「ナシメントゥ」です。
明らかに欧州葡語の方が日本人向けですね!👀
https://gifsanimados.de/aves


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