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ありがとう、靴ベラ

ワインオープナー、熱燗のちろり、
抱き枕、マウスウォッシュ液、
そして靴ベラ……等々。
主役を引き立てる、
あるいは補助してくれる存在の
有り難さを最近強く感じている。

拙宅で高齢の病人が出で
その介護もあり
家中がドタバタと散乱し、
所定の場所にあったものが
そこにはない、
という状況が続いている。

その散らかり自体は、
大した話ではない。
それより日頃からの有難み、
深謝を実感したのだ。

例えば、玄関にあった靴ベラ。

早朝出勤で、家を出る間際は
時間に追われドタバタするもの。
先週、紐の革靴を履くとき、
長年愛用の靴ベラが
玄関のいつもの場所になかった。
その極狭の空間で
散乱する物々たちの中に
紛れてしまったらしい。

紐靴なら紐を結きほぐせば
良いだろう。それだけのことだ。
しかし、革靴は硬いから、
そんなに簡単には
足の踵が入らないのだ。
仕方がないので靴ベラ代わりに
人差し指と中指を靴と踵の間に
差し込んで履こうと試した。
勿論、何とか履けたのだが、
両指に痛みが走った。

この痛みなのだ。
靴ベラが愛おしいと感じるのは。
靴ベラは、もはや脇役でなく、
快適さと時短化を実現し、
指の痛みを抑えてくれる、
かけがえのない主役。
大切な一日へと、
送り出してくれる存在。

職場で不必要な仕事など
あってはならないように
不必要な人はいない。
誰にも様々な役割と責任があり、
それを束ねて組織は動く。
不覚にも、いなくなって
初めてその価値に気付くことがある。

日常に紛れると、心に余裕なく、
人や物の有り難さを見失う。
結果として、むげに雑に扱い、
全体のなかの、
かけがえのない存在を
失うことになる。

さて、今日は、
散乱したものを整理し
大切なものを所定の場所に
戻す日にしよう。

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