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好きなんだけど

「好きだって誰かに話してしまうと
想いが薄くなってしまう。だから…。」

もう30年前くらい前だろうか。
高倉健さんが出演した、JRAのCMで
名言が刻まれている。

真冬の厩舎の片隅。
大きめのトレンチコートを着た健さんが
娘役の裕木奈江さんにポツリと言う

「父さんはその馬のこと、
とっても好きだった。
でも、好きだって誰かに話してしまうと、
なんて言うんだ…
想いが薄くなってしまう気がした。
だから…。」

言葉にしなければ想いは伝わらない。
でも言葉にしてしまうと
大切なことが消えてしまう、
価値の減ってしまうこともある。

自慢話、一方的な押し付け話、
自分のことばかりの連打、
そして、何より、
儚くも切なく尊い、秘めた思慕。

この地球上の誰も知らない、
自分だけのなかに実在する想い。

言葉は大事。でもときに、難しい。
役の上では言葉以上に表情で、
その佇まいだけで、圧倒的な存在感、
孤高の美しさを示し続け、
何より想いを慈しんだ名優、健さん。

ああいう人はもう出てこないのでは。
もうこれ以上の言葉を出しては
価値が薄れてしまいそうな。

本当に勉強になるのです。

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