【他山の石:パーソナルジム編】#1立地選定〜どこにパーソナルジムを出すか?〜
こんにちは、祖父江誠です。
本日はパーソナルジムを出店する際に考える「立地選定」について説明いたします。
パーソナルジムの出店に限らず何事にも通ずることですが、「物事の成功は入口が8割」です。
今回パーソナルジムの出店において「入口」である、この「立地選定」がうまくいけばこの先がどんなに雑でもある程度成功できますし、逆にこの入り口が微妙だとこの後にどれだけの巻き上げがあっても微妙な結果になってしまいます。
本日は微妙な結果にならない様に、ぜひ本日の内容を参考程度にしていただければと思います。
実績になるかどうかはわかりませんが自分自身は2店舗パーソナルジムを出店し、1店舗を移転、その他で複数のパーソナルジム出店に携わってきました。
自身でも傷を負って出店、運営してきた中で得られたノウハウなのでこれが正解ではなくとも一見の価値はあるかと思います。
これからパーソナルジムを出店する人が失敗しないように、本日の内容が多少でも参考になれば幸いです。
「立地選定を構成する4要素」
一口に「立地選定」といっても、定義が様々ですので今回は下記の4つに分解して考えていきたいと思います。
・市場
・競合
・テナント
・自身の好み
上記4要素にになります。
下記で詳細に説明いたします。
市場
「市場」とは「この地域にどれだけの見込み顧客がいるか」を定義とします。
ここを判定できない場合、出店において「人口が多いから」「高級住宅街だから」「自分が好きな土地だから」等の少し抽象的な理由で出店することになります。
もちろんそれが悪いとは言わないです。特に最後の「自分の好きな土地だから」という理由は後半でも話しますが非常に大切な要素です。
時として理論より一時の感情を根拠にした方が迷いがなく結果うまくいく場合も多々あります。
理論だけが正しいわけでも感情に身を任せることだけが正しいわけでもなくそのグラデーションが非常に重要になってくるのです。
それを踏まえて、上記の定義に則った市場の判定方法ですが「競合他者の顧客状況」から判断するのが自身の経験上一番確実です。
ここで駅の乗降客数や人口密度、世帯年収やその他競合施設から判断する方法もない事はないのですが、人の流れというのは一環の数字で測れる程単純なものではありません。
基本的にはその地域にあらかじめ出店している他社からその地域の市場を判断する方がテストマーケティングが完了している分確実です。
ですが他社の売り上げ状況等はその会社の内部にいる人間にしかわからない情報です。
店舗経営者なら度々遭遇する場面かと思いますが、カウンセリングや営業に出店希望者が自ら申し込んで担当のトレーナーに店舗の収益状況等を根掘り葉掘りと聞き込む「探り行為」をされる事があります。
倫理的な観点は一度置いて、この方法は個人的には競合分析の方法としては不適切です。
その得られた情報に対して「正確性」があまりにも安定しないからです。
内部の人間がわざわざ外部の人間に対して正確な情報を流すかは不明ですし、その人がどこまで正確に把握しているかは全くわかりません。
その前提がある為、そこから得られた情報を信用して出店するのはあまりにも不確実要素が大きすぎます。
ではどうやってその競合店の内部情報を把握するのか
それは、
「その店舗の消費者向けに出稿されている情報発信媒体から、内部の顧客状況を予測する」
これになります。
一番顕著なのが「グーグルマイビジネスの口コミ数」と「LINE@の会員数」です。
この2つはダイレクトに顧客情報を表します。
また「ホットペッパービューティ」等の外部ポータルサイトの空席情報等も非常に参考になります。
もちろん実際に店舗を通りかかった際の人の入り方やSNS等で表示されている会員様の状況、トレーナーの雇用数(業務委託ではなく正社員のみ)
他にも様々な項目から、その店舗の顧客情報を読み解くことができます。
一概に「この項目を見ろ!」とはなりませんが
この「市場」の総括として「競合他者の顧客状況」を「その店舗の消費者向けに出稿されている情報発信媒体から、内部の顧客状況を予測する」事
これによって見込み顧客数の多い出店地域を予測していきます。
競合
「競合」も定義からお話しいたしますが、『出店希望地域内のパーソナルジムの「数」と「力」』を定義とします。
こちらも「数」と「力」について詳細に説明いたします。
「数」
数とは単純なパーソナルジムの店舗数を表します、この個数が多ければ多い程その地域の競争が激化します。
この個数は意外と重要で、店舗数が多ければ多いほど市場(見込み顧客数)が分割されます、ただ店舗数が多ければ多いほど多くの市場が見込める可能性が高いのも事実です。
店舗商売はその地域の中で行われる「牌の奪い合いゲーム」ですので、「分配率は低いけど、牌が多い地域」か「分配率は高いけど、牌が少ない」地域のどちらかに焦点が当たることになります。
「分配率は低いけど、牌が多い地域」
こちらは「確固たるマーケティングスキーム」や「巨大な資本」、すでに「多くの見込み顧客を抱えている」等の条件に当てはまれば勝負してみても良いかと思います。
逆に初めての出店ではあまり向かない地域かと思います。
また厄介なのが、世帯年収が高く、地域に富裕層が多くみられて非常に店舗数が多く分配率が低いのに、人の流れがたまたま別の方向に行ってしまい、牌自体も非常に少ない地域もあるので要注意です。
この地域で売上を上げて成功するためには
・「牌の見極め」
・「戦略、資本、見込み顧客」
この2つの能力が必要になるかと思います。
簡単に言えば「上級者向き」の地域です。
「分配率は高いけど、牌が少ない」
初めての出店ならこのような地域で出店を行うのが失敗率は低いかと思います。
分配率が高いのでその地域に牌があり、基本的な出店戦略があればある程度は顧客の獲得が見込めるかと思います。
この地域での注意点は「分配率は高いけど牌自体がない場合」です。
この場合は「市場」の項目で先述した、その地域に出店されている数少ない店舗の外部状況を見て顧客状況からその地域の市場を判断します。
またそうして得た、数少ない店舗の顧客状況が非常に良い場合は「分配率も高く、牌も多い」いわゆる「穴場」の可能性が高いです。
ただ実際は「穴場」というものは見つけられるものではなく、出店してみたら意外と穴場だったということがほとんどですので過度な期待はせずに
上記の「分配率」と「牌」から地域の「市場」と照らし合わせて判断し、自身の状況から地域を選定すると失敗が少ないかと思います。
またこのように初期段階である程度アタリをつけて地域を選定してみると、2店舗目を出店する際にその1店舗目を出店した事で見える情報と照らし合わせてより精度を高く地域を選定することができます。
「力」
次に競合の「力」です。この「力」の定義とは一体何でしょうか?
それは「認知度」です。
先述したように店舗商売はその地域の牌の奪い合いなので、先に幅を利かせている店舗、牌を多く持たれている場合は、それを覆すのには苦労と時間がかかります。
例えば個人経営のジムで、会社規模としては大きくないようなところでもテレビ出演や書籍を出版しているようなトレーナーが在籍していたり、自身のYouTube等で登録者が多く(3000〜1万人以上)非常に強力なメディアを持っている、もしくは複数媒体をすごくこまめに継続してメディアによる認知度が高い店舗は「力」が強いと言えます。
また「RIZAP」や「24/7Workout」等の超大手ジムも一般的な認知が高いので「力」が強いに該当します。
自身の状況にもよりますが、上記の「力が強い」に該当する所が幅をきかせている店舗への出店は競合としてかなり崩しがたい為、初手から競争を避けた方が無難かと思います。
上記から店舗数が少ないがその店舗の顧客状況が良く、その店舗もメディアや一般的な認知を持っておらず「力」が無い店舗の場合は、かなり狙い目の地域といえるでしょう。
実際はすでにパーソナルジムは飽和状態ですので、そんな地域を探し出すには自身の生活範囲を飛びこえて地域を探索する必要があるでしょう。
ですがこの立地選定をしっかり行う事が、現状飽和しきった「パーソナルジム経営」では一番大切な部分と言えますのでじっくりと時間を掛けて行い、根拠を持って出店するのが大切です。
テナント
次に「テナント」です。
テナントは一度契約すると中々手放すことができません、移転等は不可能ではないですが、非常に労力とお金を必要とします。
その為、最初の選定でしっかりと見定めをした状態で契約する必要があります。
「そのテナントで5年以上事業を行う」位の気持ちで慎重に契約を行ってください。
僕がテナントを見るポイントは2つです。
・視認性
・坪単価
上記2つになります。
視認性
「視認性」とは「どれだけ人の目に触れられるか」です。
先ほど店舗の「力」は「認知度」だと言いました。
その「認知度」の貢献に店舗の「視認性」は非常に寄与します。「RIZAP」や「24/7Workout」大手が店舗を出店する際、そのネームバリューを利用するために必ず「視認性」の高いテナントに出店します。
「視認性」の良さは、店舗の「認知度」に直接関わります。そのためテナントはこの「視認性」を第一に考えて出店を行うべきです。
「視認性」が全くない店舗でも優れたマーケティングスキームによって繁盛させる店舗はあるにはありますが、真似するにはかなり上級者向きです。
基本的には初めての店舗出店では必ずこの「視認性」を重視してテナントを選定する方が失敗確率は低いと言えるでしょう。
具体的には乗降客数の多い駅に近く、路面でガラス張りにカッティングシートか看板が設置できるテナントが理想です。
空中階でも看板で多くの視線が集められる場合はかなり吉です。
坪単価
次に「坪単価」です。
若干雑に話すと
この「坪単価」が高ければ、高いほど内装が綺麗です。
パーソナルジムはパーソナル、1対1のサービス故いちばんに見られるのは「トレーナー自身」ですが、それ次ぐ形で内装・外装も重視されます。
ですが唯一譲歩できるのは「広さ」です。
パーソナルジムは基本的には小規模のため、この広さを抑えて、「坪単価」と「視認性」に限界まで拘る事がパーソナルジムのテナント選びで失敗しないコツかと思います。
自身の好み
最後は「自身の好み」です。
この「自身の好み」とは何処に対しての好き嫌いでしょうか?
それは「地域」自体です。
基本的に出店する場合はその地域近辺に長い時間関わることになります。そのため自分と合わない地域に出店すると、長期的にみると自身の運営に対するモチベーションを損ないかねません。
モチベーションは非常に大切です。
ですがモチベーションは「上げる」という方向よりも、「下げない」という観点で店舗運営の場合は見ます。
店舗運営や経営は長期戦のマラソンです。初期に爆走してもいつかそのペースは潰えて走れなくなってしまいます。
必ず長期戦でも戦える「環境づくり」は必須と言えます。
今回は「地域」のみですが、ここに「人」も絡んできます。
ありきたりな言葉ですが
「自分の好きな地域で、自分の好きな人達といれる環境」
が自身のモチベーションを落とすことなく長く安定的に経営を続けられる環境になります。
最後に
本日の項目については以上です。
これだけノウハウを偉そうに語っておいて、最後に話す言葉ではないですが、
上記の情報を自分自身に腹落ちさせて、その内容を参考に立地を分析・選定して見事に開業、そこから収益の獲得まで行き着ける人間は稀です。
そんな優秀な人間はこれを読まなくても普通にうまくいくと思います。
ですので、僕も含め特別な能力の持たない一般の方は
何はともあれ「まずはやってみる」これが一番重要かと思います。
店舗出店なんてリスクの高い事を簡単に勧めるなよとも思いますが、
結局「やる人はやるし、やらない人はやらない」のがこの世の常です。
それが正解とも間違えかも自分自身しかわかりません。
店舗を出店しても思った収益が見込めず借金だらけでアルバイトを重ねながら、不眠不休のギリギリで運営している人間も業界には沢山います。
普通に安定的に働いている方でも能力が高く、その上で幸せそうに暮らしている人も沢山知っています。
不安定で働いている方でも自身の軸で幸せそうに日々を過ごされている方も沢山います。
店舗を運営しているからといって、能力が高いわけでもないです。
どんな身分・肩書だろうが本当に自身に実力があれば、自然と周囲から評価される人間になります。
評価された結果が独立かもしれないですし、会社でいう昇進かもしれません。
もしくはその会社の判断軸では評価されず、変わらぬ身分のままかもしれません。
ですが、実力が本当にあるならば少なくとも、小さくとも
周囲の誰かには評価されているはずです。
もし独立の出発点が「誰かの評価」であるならば、一度今いる環境から自身がされている評価を見つめ直す、もしくは変化させることから挑戦してみてもいいかと思います。
環境に甘えた僕が言えた義理ではありませんが・・・
何はともあれ、少しでも参考や暇つぶしにでもなっていただければ幸いです。
ご拝読ありがとうございました。
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