[続.洋服物語] 15cmの奇跡が紡いだ物語。マイナーレーベールだからこそできること （続編）
中学3年生の頃に同級生の影響で洋服の魅力に取り憑かれ、今に至る（41歳）までに体験した『洋服』をはじめとした『モノ』にまつわるアレコレ。
自分の価値観を形成するうえでターニングポイントとなった『私と"モノ" との記憶』いわばモノにまつわる物語を書き綴る日記。
これは、
『おすすめアイテムの紹介』ではない。
『私物紹介』でもない。
読んだあなたが、少しでも洋服を好きになるきっかけ、自分の使う道具を愛らしく感じてもらえるようになれば嬉しい。
：Episode.24
「Painted Blank "Patrick"」
このマガジンで複数回に渡りご紹介しているオリジナルブランドの新作パンツ "Patrick（パトリック）" がようやく最終段階まで進んでいるということは以前お話ししたと思う。
元々は1940年代に作られたビンテージのハンティングパンツがデザインソースとなっており、奇跡的に私の好みの丈に裾上げをされた状態で偶然手に入れたことから構想が始まったのだが…
先日、関連工場の相次ぐ閉鎖などで生産が大幅に遅れてしまうことが判明したが続いて、ありえないトラブルが起こった。
生地の確保は終わっていたし、すでに縫製工場に各サイズのオーダーはかけていた。2ロール分（約110m) 制作していた生地が、いざ縫製工場に届いた段階で最終のチェックしたところ、生地中央にうっすらとほつれのような線が伸びているとのこと。
どうやら機織の段階で発生しているようだ。
さらにそのほつれ線が中央にあり、パンツを生産するにはどうしてもそのほつれ部分に被ってしまう。
「決して安価な生地でもないし求める製品のクオリティーを考えるとこの生地はNGです。」
縫製工場からの連絡だった。機屋（はたや）さんに原因を調べてもらうのは後回しにして、生地を新たに作ってもらうように言ったが、この生地を作るための糸が手元にないらしく、新たに糸から作ると生地の完成がいつになるかわからないとのこと。
機屋さんもなぜこうなったのか分からない様子。
今までたくさんのトラブルはあったが、最終段階で振り出しに戻ったのはこれが初めてだった。熟練の職人が揃っている工場でなぜこのようなことが起こったのか…
日本のモノづくりが危機だということを少し前に記事にしたが、こういうことなのかもしれない。本来なら仕上がりを細かくチェックしているはずの人手も不足しているのだろう。
機屋さんも必死に代替え案を考えてくれた結果、予定していた生地と全く同じ原綿を使った、やや薄手の生地であれば、急ぎで用意できるとのこと。早速サンプルの生地を数メートルだけ送ってもらった。
薄手とはいえ、通年の着用も問題なく履けるぐらいの肉感だった。むしろこのやや薄手の生地だと、よりスラックスライクなパンツに仕上がるのではないだろうか？さらにいえば、悩んだ末に諦めたセンタープレスもこの生地なら問題なく入れられる。
9月〜10月に予定している同型で生地違いのパンツはウールを使った肉厚な仕上がりになる予定なので、ちょうどいいバランスかもしれないと、この生地で制作することになった。
機屋さんも今回は絶対に大丈夫だと約束していただいた。最終の製品サンプルは来週以降に届く予定になっている。
ギリギリ、サンプルは月末から高知で開催する店のポップアップイベントには間に合いそうだ。当初このイベントに際して徳島、高知、ウェブストアで同時リリースというイメージで動いていたのだがそれは叶わなかった。
【イベント告知】
コロナで数年間ストップしていましたが、きたる5月24日より “SLOW&STEADY KOCHI” が復活します。独自の空気感と空間の中で厳選した洋服を思う存分楽しんで下さい。お誘い合わせの上、皆さまのご来場を心からお待ちしております。
場所は戦後まもなく建てられた藁倉庫をリノベーションした土佐漆喰と土間の香りが沸き立つ「蛸蔵」にて開催いたします。24日、25日の２日間は高知でアンティークショップを経営しながら店舗内装などでも大活躍されているアンティークドアーさんのアンティーク什器や小物を販売します！
数年ぶりの高知イベントに際して、徳島の実店舗に先駆けオリジナルブランド「Painted Blank」の新作パンツ “Patrick“の受注会も行います！（納品は7月中頃です）各サイズのサンプルをご用意しておりますので合わせてご来場ください！
会場の演出は前回同様に高知のdoorとSoto。高知の顔役とも言えるタッグによる温かみと力強さを感じる非現実的空間をご体験ください。会期中、空間演出に使われるアンティーク什器や雑貨、フラワーアレンジメント作品もすべて販売しております。会場の世界観や洋服と共にお楽しみ下さい。
日程：5月24日~30日 (当店の商品は26日より並びます）
場所：蛸蔵
時間：12時〜20時（最終日は18時までとなります）
アクセス：
【車】JR高知駅より約5分、高知ICより約5分、高知龍馬空港より車で約30分。駐車スペースは蛸蔵より北側に約20台ございます。
【路面電車】はりまや橋から土佐電鉄ごめん方面行きで約5分、「宝永町」電停下車徒歩約8分。22時過ぎまで便があります。
【航空便】高知龍馬空港から土佐電鉄バス又は高知駅前観光「空港連絡バス」で約30分、「宝永町」停留所下車徒歩約10分。
蛸蔵：高知県高知市南金田28
県外でのポップアップを行うということは、実店舗に私は居られない。
自分が複数人いたらなんて思うのはナンセンス。そんなことよりスタッフや仲間を信じて進めていくほかないのはわかっている。そもそも組織として機能させるためにはもっと人に任せるべきなのに、それを任せられていない自分に全責任がある。
仕入れにしろ、オリジナル商材の制作にしろ、接客やイベント企画、イベントでの販売など、私の店のような店主独自の感覚でやってきた個人店というのは、簡単に人に任せられないという大きなデメリットをどう解消していくか？それが店の成長にとって最大のボトルネックとなる。
今まで10年はうまくできなかった。
働いてくれたスタッフたちも優秀だったし任せられるタイミングは多々あったのにも関わらず…。じゃあ、自分が今までできなかったことをこれからできるのか？
そんなことを改めて考えさせられるが結局、自分の体は一つしかない。
スタッフを信じて任せてみよう。なるようになる。
きっと歴代スタッフも今のスタッフをそっと助けてくれるだろう笑。
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