無題

この世は生きるに値するんだろうか。何者にもなれぬ焦りすら果ててしまい、歳月とともに諦観ばかりがいや増す。胸中にはうっすらとした渇きがわだかまっているが、どうすることもできない。

金はない。余裕もない。金と余裕があったとて今更特段やることもないのだが、そういうことを考えると、気が滅入る。だからあくせく働いて、できるだけ物事を考えないようにする。
別に頑張って働いたところで持ち金が増えるわけではない。月固定18万だ。そこから健康保険や年金や税金が引かれて、残るのはこれっぽちだ。生きるに困らないだけの金はあるが、それはただ生きるのに困らないだけである。

最初から誰も俺のやりたい仕事には期待していなかった。仕事のために奮起して勉強したこと、考えたこと、書いたこと、俺にとってそれらは当初確かに熱を帯びていたのだが、やっとひねり出した成果を他人の間でたらい回しにされてるうちに、それが誰の関心も買わないらしいことを悟って、すっかり冷え切ってしまった。誰からも思うような反応が返ってこないことに、はっきり言えば疲れた。
仕事をしていて良かったことはなかった。覚えているのは自分が熱に浮かされていたことと、あとは苦悩と苦痛だけである。

金がなくては生きていけない。だから今後も仕事をやめることはできない。だけども、何か俺にやりたい仕事があるはずだ、などとは間違っても今後考えないようにしようではないか。そんな勇み足でいたところで、誰からも相手にすらされない醜態と孤独に、最後は惨めになって耐えられなくなるのを、また繰り返すに違いない。そんなことをする値打ちはない。
これからはあくまで淡々と、自分の仕事が尤もらしいかのように振舞うことに終始しようではないか。そうして時が来たら、さっさと消えていなくなろう。その態度は褒められたものではないかもしれないが、構わない。いずれ時効が来て忘れられる。

いくら心が渇いてきても、自分のやりたい仕事、などという馬鹿げた思想を、二度と掲げてはいけない。そんなことをする価値はこの世にはない。



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