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昇さんの朝比奈玉露

日本三大玉露生産地である静岡県朝比奈で「朝比奈玉露」を生産している方へのインタビューの第六弾。

読んでくださっている皆さんに朝比奈玉露のことを知ってもらい、どのような想いでお茶づくりをされているのかを多くの人に伝えられる手伝いができれば嬉しいです。ぜひ、最後までご覧ください!

なお、今回のインタビュー企画でご紹介する生産者の皆さんは全て手摘みで収穫した茶葉は自分の工場で揉まれた最高級の玉露です。


生産者紹介

お茶づくりは3代目であり、学校を出た時から玉露づくりにも関わっていた昇さん。朝比奈玉露の生産者の中では比較的お若い方ですが、お茶づくりに携わっている歴は40年以上。品評会にもお茶を出されており、幾つも上位の結果を残されています。また、地元に始まり都内で行われたつゆ茶体験イベントや朝比奈玉露承継塾など、朝比奈玉露の魅力を伝える取り組みに積極的に関わっていらっしゃいます。

昇さんの朝比奈玉露講座

ここでは、インタビューの中で教えてくださった朝比奈玉露の生産過程のお話をご紹介します。

<朝比奈で玉露が作られるようになった理由>
お茶(煎茶など)は収穫時期の早いものに値が高くつきやすい。ただ、朝比奈地区は気候的に5月中旬までと収穫時期は遅め。それでも玉露などの特殊なお茶はお金になった。霜の影響がある地でもあり、ハサミ刈りだと霜の被害を受けてしまうが手摘みだとその心配がない。その理由は、「自然仕立て」という製法にある。

*自然仕立てとは・・・茶樹の枝を剪定せず、自然に伸ばしておく。新芽が2枚〜3枚伸びた段階で覆いをかける作り方。

自然仕立てで作れば、長い枝もあれば短い枝もある。そのため、ハサミ刈りに比べると霜に当たりにくくなるところが特徴。

なお、手摘みをしているのは霜の影響だけが理由ではありません。
良い茶葉を見極めて、新芽の部分だけを摘むことができるのが手摘みの良さ。
美味しくて品質の高い玉露に仕上げる、重要な要素なのです。

<朝比奈玉露の特徴が生まれた理由>
現在、朝比奈玉露の生産者は共同工場がないため、個人で茶葉を揉んでいる。手摘みだと、一日摘んでも100kgほど。共同工場があった時でも量が多くならないため、他の方の茶葉と合わせることもない。そのため、自分の茶葉は自分で揉むというスタイル。

このような背景から、手摘みで自分の茶葉は生産者自ら揉むところまでやるという朝比奈玉露の特徴が生まれたようです。

昇さんといえば「おくみどり」

品評会用には、肥料を多くまいたり、菰や寒冷紗をかけるタイミングを早めたりなさっているそう。また、品種を増やして栽培しているとのことで詳しくきいてみました。

栽培しているお茶の品種(6種類)
さえみどり、きらり31、つゆひかり、ごこう、おくみどり、やぶきた

美味しいのは早稲系だけれど、朝比奈地域は比較的寒い。昇さんの茶畑は霜に当たりやすいことがあるけれど、おくみどりは比較的霜に強いため、おくみどりを7割ほど作っているとのこと。玉露の中でもおくみどりを好む理由としては、甘味があってやさしい味わいが感じられるためだとお話ししてくださいました。

やりがい/美味しいお茶

お茶は毎年同じ仕上がりにはなりません。同じ管理をして肥料をあげて揉んでも、毎年変わるもの。

「今年は良いお茶だと感じるときは、揉むのが楽。自然に揉める。みるい(柔らかい)お茶で、何もしなくても良い仕上がりになる。」
この瞬間はやっていて楽しい時だといいます。

また、お茶は夏場を超えて熟成させると美味しくなります。玉露は2・3年持ち、管理の仕方でその質は大きく変わるそう。お茶屋さんは年数ものを好むのだとか。新茶の時期に飲むお茶だけ美味しい時期ではないようです。

読んでくれた方へのメッセージ

少しでも多くの人に味を知ってほしい。日本に限らず、外国の方にも玉露を飲んでほしい。イベントなどで、偶然お出しするときくらいしか飲んでくれる人の感想を聞くことがないのが生産者の悩み。

インタビュー中に、箱根で日本茶のお店を営まれている方が昇さんの玉露を扱っているとのお話がありました。もし機会があれば、皆さんぜひ飲みに行ってみてはいかがでしょうか。

「茶石」 箱根の日本茶専門店_紹介記事

最後に

今も朝比奈玉露を作り、品評会に出したり訪れた海外の人に紹介したりとご活躍されている昇さん。インタビューでお話ししていただいた内容は茶農家さんならではの視点が多く、興味深かったです。まずは皆さんに玉露を飲んでほしい、という想いで活動されているので、朝比奈玉露に関するイベントで皆さんも昇さんにお会いできるかもしれません。その時はぜひ、お茶を蒸らしている時間にでもお話ししてみてください。