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忍川と上野三橋

スローリー余話
川と橋と美味しいもの#19

上野不忍池を水源とした「忍川」。昭和のはじめに埋立られましたが上野広小路を横切りJRガードをくぐり春日通り沿いに流れていたそうです。川も橋もその名残はほとんどありませんが2024年6月末で閉店する上野を代表するファッションビル「ABAB」の裏通りの商店街やJRの橋梁名に残された痕跡をみることができます。上野広小路には「上野三橋」という橋があり江戸時代の絵図や歌川広重の「名所江戸百景」にも描かれています。

上野三橋と混同されることが多いという忍川があった名残「三枚橋横丁」
アメ横。JRの橋梁に「忍川橋」の標記

まだ忍川が流れていた1905年から続く上野広小路の『ぽん多本家』。入店するのに躊躇してしまうほどの重厚な扉の向こうに至福の『カツレツ』があなたを待っています。
(以下、2023年7月発売『東京Slowly² vol.1』より)

これぞ「至福のカツレツ」

重厚な扉の向こうにある
「手間暇惜しまぬ」至福のカツレツ

上野広小路・ぽんた本家

1905年、宮内省(現・宮内庁)大膳寮に勤めていた初代・島田信二郎氏が、西洋料理を担当する中で、豚肉の美味しさに惹かれ、余分な部分を除いた芯の部分のみを使い、自家製ラードで揚げる技術を磨いた。このこだわりの技術を受け継ぎ、四代目のご主人は「まずは土台づくりが大切」と語り、余分なものを削ぎ落し、豚肉の美味しいところだけを贅沢に使用する名物料理『カツレツ』を提供している。

余計な脂を削いだ極上に豚肉

その『カツレツ』は、余計な脂身を惜しげもなく切り落とし、綺麗な豚肉を優しく包むように衣をまぶして自家製ラードで揚げられ、淡い黄金色に仕上がる。何もつけずにそのままいただくと、豚肉本来の旨みと丁寧な調理が実感できる。更に自家製ソースなどで自分好みのアレンジで白飯を食べ進めていくうちに、至福の瞬間が訪れる。

削いだ脂身でつくられた自家製のラードで丁寧に揚げられる

「肉の美味しい“ど真ん中”だけを食べてもらいたいから、手間暇惜しまぬ仕事をするのは当たり前です」と気さくに語るご主人。その仕事ぶりは、2020年にNHKの「プロフェッショナル~仕事の流儀~」でも紹介されるほどである。普段は調理に忙しくお客様と直接会話することは少ないが、そのリズム感溢れる仕事ぶりは、顧客と無言のコミュニケーションをとりながら美味しいものづくりをしているようにも感じられる。

「揚げている間は細工が出来ない。だから事前にしっかりと仕事をする」と語る四代目のご主人

ぽん多本家
〒110-0005 東京都台東区上野3-23-3
tel: 03-3831-2351
営業時間:火~土 祝前日11:00〜14:00(L.O13:45)、16:30~20:20(L.O.19:45)
日・祝11:00〜14:00(L.O13:45)、16:00~20:20(L.O.19:45)
定休日:月曜