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日本橋人形町 その壱(旧芳町)

スローリー余話
街の”なりたち”#2

明治のはじめに描かれた豊原国周による錦絵「開化三十六会席 芳町百尺」(写真提供:中央区立京橋図書館)

『人形町』という名称は江戸初期から人形浄瑠璃の小屋やその関係者が多くいたことからこの周辺の俗称であったと言われています。関東大震災後の区画整理による町名変更により『人形町』という名称が住居表示として昭和の初めに誕生します。現在の『日本橋人形町』一丁目・二丁目・三丁目になったのは1965(昭和40)年以降、何回かの住居表示変更があり現在に至っています。それ以前には「日本橋浪花町」や「日本橋芳町」という”街”があり「芳町芸者」の花街として賑わっていました。

大正15年頃、人形町通りから芳町方面をのぞむ(写真提供:中央区立京橋図書館)

今ではオフィスビルやマンションが立ち並ぶ『人形町』に当時の風情を残した横丁があります。人形町通り、江戸三十三番観音霊場の第三番札所である大観音寺から日本橋小学校の方へ続く横丁には昭和に建築された建物で今も営業する日本酒の品ぞろえでも有名な『きく家本店』があります。(以下、2024年3月発売号『東京Slowly² vol.3』より)

日々変わる日本酒と料理の邂逅

きく家本店

豊富な日本酒に合わせて考えられた季節のお料理

地下に日本酒貯蔵用の冷蔵室を構える『きく家本店』は1981(昭和56)年に開店。旬の食材を活かす日本料理と日本酒の伝道師とも呼ばれる女将さんがペアリングする極上のお酒を愉しみに訪れる顧客が絶えない人気店。戦禍を逃れた古民家の佇まいでいただくコース料理は手間暇を惜しまず何度通っても飽きない「なるほど」と納得させられる一皿が提供される。現在は初代・ご主人の指導を受けた料理長の上村さんと副料理長の佐藤さんが厨房を担う。日々食材と向き合いながらつくられるお料理はどれも工夫の凝らした美味しさ。女将さんが準備する日本酒との相性も良く来店ごとに新鮮な驚きを提供してくれる“料理とお酒の邂逅”が楽しみな一軒だ。夜風が心地良い季節、横丁の先には極上の料理とお酒が待っている。

冷蔵を完備した日本酒の貯蔵室

きく家本店
〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町1-5-10
03-3664-9032(要予約)
営業時間:17:30-22:30
定休日:土・日・祝