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築地川と采女橋

スローリー余話
川と橋と美味しいもの#27

1800年頃の江戸の絵図などには「矢のハシ」や「二之橋」などと表記され明治初年に『采女橋』と呼ばれるようになったようです。橋の名前は近くに采女ヶ原という盛り場があったことに由来するといいます。

築地川があった頃の采女橋(写真提供:中央区立京橋図書館)

築地鉄砲洲に外国人の居留地が出来たことに伴い、この『采女橋』のあった采女町(現在の銀座5丁目)に誕生したのが『上野精養軒』のルーツ『築地精養軒』です。1872(明治5)年に岩倉具視や三条実美などの援助により創業。関東大震災で焼失するまで『築地精養軒』として営業していました。また『上野精養軒』は上野公園が1876(明治9)年に開設した際に公園内のレストランとして開業しました。そして現在は銀座3丁目・松屋銀座にある『上野精養軒』の銀座店ではその150年変わらぬ美味しさを提供しています。(以下、2023年10月発売『東京Slowly² vol.2』より)

創業以来の美味しさドミグラスソースを使った「オムライスハヤシソースがけ」

築地から上野へ
150年紡がれた円熟の美味

銀座三丁目
上野精養軒 松屋銀座店

1872(明治5)年、西洋料理の草分けとして、元勲三条実美、岩倉具視卿の支援を受け、築地に創業された精養軒は100年前の関東大震災で焼失。1876(明治9)年の上野公園開設とともに開業した支店『上野精養軒』を震災後に本店としたという。かつて「築地精養軒」があった場所の住所は現在の銀座五丁目。そんな“銀座”とは由縁のある『上野精養軒』で150年超、紡がれたその美味しさの象徴は約1週間かけて丁寧につくられる『ドミグラスソース』。受け継がれたソースは様々なお料理に使われ、なかでも『ハヤシライス』は結婚式などの宴席のコースに入れて欲しいというお客さまが多いという看板メニュー。

こちらも人気の「ビーフシチュー」

さらに欲張りな美味しさ『オムライス ハヤシソースかけ』は松屋銀座店でも毎月千人近くのお客さまが注文するという人気メニュー。溶いた卵を裏ごしする日本的な手仕事で丁寧につくられた薄焼き卵を纏った『オムライス』と「ハヤシソース」の相性は長年連れ添ったカップルのような円熟された美味しさ。賑わいの戻った今、高齢のご夫婦や三世代の家族連れも多く、この円熟の美味しさを分け合う姿も増えたという。明治の貴族から愛された西洋料理を受け継ぎ150年の時を越えても多くの人々に愛される『上野精養軒』。これから最も華やかな季節を迎える銀座で“円熟の美味しさ”を愉しんではいかがでしょう。

店内には『築地精養軒』の写真が飾られています

上野精養軒 松屋銀座店
〒104-8130 東京都中央区銀座3-6-1 松屋銀座8階
03-3567-4908
営業時間:11:00-22:00(L.O.21:00)
定休日:デパートの休業日に準ずる