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鎌倉で呑むならば

雑誌『湘南スタイル』やフリーペーパー『湘南ビーチFMマガジン』など湘南・三浦地域の紙媒体制作に編集者、ライター、カメラマンとして携わっていたのは15年以上前のこと。当時はこのエリア最人気の鎌倉の記事が強く望まれていたから地元民が贔屓にする店や良さげな新規オープン店がないか定期パトロールし、自腹で飲食や買い物してはリサーチ&吟味していた。賑わいが苦手な自分だが、仕事モードで観光客でごった返す小町通り界隈も積極的にセレクトするようにしていたが、プライベートでは鎌倉駅裏駅こと西口から続く御成通りや、その先にある由比が浜通りの商店街を目指しては心休まる時間を楽しんでいた。本づくりの現場から離れた現在は新顔の店はほとんど知らないが、嗜好は不変で、休日に歩くのはなるべく観光客の少ないルートである。

葉桜が瑞々しい先日の土曜日。春の陽気に誘われて鵠沼海岸の友人、岡本さんと鎌倉で昼呑みすることになった。ぼくが選び、指定したのは由比が浜通りの「ヨロッコビールパブ笹目座」だった。数週間前も材木座に暮らす建築家の友人と訪ね、杯を交わしたばかりだが、静穏なストリートに溶けこむクールで居心地の良さが肌によく合い、またここで再飲したかったのだ。

岡本さんは秦野の造園学校時代の同期で、趣味が互いにマッチし、それぞれ別の造園業に就いた今も気軽な呑み友達としてときどき会っている。興味あることだけを一方的に喋る身勝手な自分に協調できる人はごく稀だが、彼はその数少ない友人のひとりである。

クライミングの写真が飾られる店内は洗練され、落ち着いたムードがあり、とびきり美味しい料理を肴に、楽しい会話とともにさまざまなクラフトビールがぐいぐい進み、フルーティなものからダークな味わいなどついついおかわりしてしまう。安酒場とは異質の一軒だが、たまの贅沢を満喫した。正午の開店と同時に席に着いたが、2時間ほど経ったら、ひとりでぶらっと寄っては一杯だけでサッと帰る客も増えてきた。その鮮やかな呑みっぷりの景色と、空気が澱まない風通しの良さもこのビアパブの魅力だと思う。

結局4時間半ほど長居してまだ明るい通りをゆったりと歩いて若宮大路に移動した。「二軒目いきますか?」と呑兵衛の岡本さん。この時間帯にはしご酒といったら決まっている。小町の鎌倉中央食品市場内の気さくな焼き鳥屋「秀吉」である。カジュアルな乾物がお値打ち価格で並ぶ「三橋商店(食料品店)」向かいのベストポジション席が空いていてラッキー✌️。焼き鳥と日本酒、酎ハイで快楽的酔いが増し増し。

軽妙なトークを客と交わす三橋商店ご主人とちょくちょく眼が合ったから仕事着としていつも纏っているパタゴニアのウェアについて尋ねた。「歳取ったらさ、いい服着ないと駄目だね。店ではパタゴニア、東京へかみさんとオペラを観に行くときはブルックスブラザーズって決めているんだ」とじつに洒脱。鎌倉ローカルを象徴する人と成りに魅了された。

そしていつの間にやら夕暮れ時に。蒼い光が忍び混じり、あたりはしっとりした空気が漂い徐々に地元の買い物客が闊歩し始める。ぼくの大好きなタイミング、鎌倉の美しい時間帯だ。そろそろお開きにしますかね。次なる昼呑みプランを思案して店を出た。

日没近い若宮大路。市場、パタゴニア鎌倉、そして「beach dogs cafe」。このあたりは鎌倉で最も和める場所。なんて気持ちいいんだろうとほろ酔いで歩いていたらウオズミさんの姿が眼に入る。

となったら、またおしゃべりしたくなる。

ワークマンの激安スニーカーを見せ会って、またまた近況話を咲かせた。鎌倉でのいい時間、こんどはいつ愛でられるかな。良い酒と人、場に心酔してご機嫌で葉山の家に帰る。

#鎌倉
#ヨロッコビール
#鎌倉秀吉

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