ベリアルとルシフェル

 アレだけ突き放されて冷たくされて罵られてねぎらわれずそれでもルシファーを愛することも尽くすこともやめられなかったベリアルと、アレだけ寵愛されて褒めちぎられて大事にされても結局ルシファーを殺せたルシフェルとの違いは何か?っていうと、たぶん育てられ方の違いというよりベリアルとルシフェルに施された「デザイン(=設計思想=生まれ)」の違いじゃないだろうか。
 ルシフェルは「『進化』の観察・管理者」として、ベリアルは「ルシファーの助手・秘書」としてそれぞれデザインされていて、だからこそルシフェルは「空の世界の『進化』の脅威」となったルシファーを「処刑」できたし、べリアルはあれだけ痛めつけられてもルシファーを求め続けたんじゃないだろうか。
 ベリアルには一応「空の世界の『知性』を促す『狡知』の天司」という役割があるけれど、まーちゃんいわく「役割なんてほとんど無視するクセに」(「失楽園」4話1節)ということなんで、たぶん「一応『天司』だから空の世界の『進化』に関わる役職を肩書だけでも持っておけ」みたいな感じであって、主な仕事はそれこそ「副天司長」「所長補佐官」として「天司にルシファーの影響を及ぼす役どころ」だったんじゃなかろうか。妄想だけど。
 で、仮にそうだとすると、フェル様が「造物主」であるファーさんを「処刑」したのも、ベリアルがファーさんのために割と命かけちゃうのも、恐らくそれぞれ己の「使命」に忠実だっただけのことで、それぞれの「使命」が違ったからではないか、と思って。

「助手・秘書」としてデザインされたベリアル

 ルシファーがベリアルを「助手・秘書」としてデザインしたとしたら、そこには「理想の助手」としてのテーマが含まれていたんじゃないかと思う。ファーさんスペック厨だからたぶんそこは手を抜いてない。細かいことによく気が付いて、マネジメントが上手くて、自分を絶対裏切らない、そういうものとしてベリアルをデザインしたんじゃないだろうか。
 例えばサリエルに言った「ファーさんが適当だから個体によって(天司の知性制限の)程度の差が出ちゃったんだ」(「000」4話3節)という言葉も「だからもっと丁寧にちゃんと詰めるべきだったでしょそこは」という感覚がなければ出てこない。「仕事ができる程度のセーフセキュリティになってればそれでいい」くらいの感覚でサリエルをデザインしただろうファーさんと同じかそれ以上に適当で雑な性格に設定されていれば「まあ必要ないし面倒くさいよね」というファーさんへの共感が前面に来るだろうし、サリエルの「僕は蟻になりたい」という言葉に対しても何の感慨もなかっただろう。いやおまえ最初から兵隊蟻だけど?で終わってたと思う。
 そして「理想の助手」たるべくデザインしたベリアルが「自分の期待通りの仕事」をしてなければファーさんは「使えん」って言ってしまう。私たちがモノを切りたくて鋏を持ってきて切れなかったら思わず「なんっだよ使えねーなー」って言っちゃうのと同じ感覚で言っちゃう。自分に近い人型をして、言葉でやり取りできる者に「使えん」って面と向かって言っちゃうあたりファーさんホントもうファーさん過ぎてどうしよう。「使える助手」になるために作られたのにほとんど毎日「使えん」って言われるのダブルバインドだよしんどい。
 その一方で毎日「最高傑作」「お前さえいれば全部大丈夫」「お前は俺の誇り」って言われてる同僚がいるんだからこれは死にたくなる。世界ごと自殺したくなる。

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