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#幻想文学
ル・プティ・シュヴァリエ Le Petit Chevalier 10 ルクス Lux
俺と真砂さんは榊の邸宅の中庭に倒れ込んでいた。
気を失っていたわけではないが、二人とも急激な疲労に襲われ、身体に力が入らなかった。
見上げるとアリがこちらを見つめていて、お疲れ様です、と気遣った。
「榊の結界は解けました」
そう言って、アリは希うように両手を掲げ瞼を閉じた。
そのまま一つの音程、少女の声とは思えないほど低い音程を、延々と持続させながら歌い始めた。かすかな狂いさえ
ル・プティ・シュヴァリエ Le Petit Chevalier 2 フィギュール Figures
八時ちょうどに目覚めた。
窓から覗くのは旅立ちにふさわしい晴れ渡る空だ。
世界が終わるというのに、長らく味わえなかった安眠を享受できた。
確固たる使命を与えられないことが、いかに人を慢性的な不安に陥らせるのか、生まれて初めて理解できた気がした。
アンリ、起きて。教えてほしいんだ、どこへ向かえばいいのか。
「あなたが起きているとき、私も起きています」
濡れたような結晶をゆらめかせて
ル・プティ・シュヴァリエ Le Petit Chevalier 1 前頭前夜
あらすじ上位世界から、この世界を救う使命を託された真砂リサは、任務遂行のパートナーに後輩の来栖ミトを誘う。授けられた特殊能力、「フィギュール」を駆使し、任務は順調に進むかに見えたが、二人の内に秘めた目的のズレが次第に影を落とし始める。
1 前頭前夜 月夜。白い花、これはユリだそうです、そう電話口から真砂さんに教えた。
よかったねと返ってきたけれど、いやあ、猫がいるんでユリは身近に置けない