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映画「アメリカン・ビューティー」第72回アカデミー賞5冠

もし今まで見た映画の中でどれがベスト1ですか、そういう質問をされた場合私は迷うことなく、ケヴィン・スペイシー主演の「アメリカン・ビューティー」と答えるでしょう。

アメリカン・ビューティーには様々な要素が入り組んでいます。基本的にはブラックコメディーだと思うんですけど、アメリカの中級家庭の家族崩壊、そしてある男の再生の物語ともいえます。

なぜ、私がアメリカン・ビューティーに共感したのかと言うと、まさに自分を見てるような気がしました。主人公は冒頭から自分が死ぬことをナレーションで語ります。

監督のサム・メンデスは、もともとはイギリスの舞台の演出家だったらしいです。この映画は彼のデビュー作となります。

いきなりこんな映画を作ってしまう監督、すごい人だなと思いました。その後いろいろ何本か作りましたけど、確か今は奥さんはケイト・ウィンスレットだったような気がします。(2003年-2010年まで) 

アメリカン・ビューティーは冒頭からラストシーンまで完璧に計算され、撮影監督のコンラッド・L・ホールの完璧なカメラワークで構成された素晴らしいアメリカ映画です。ですからアカデミー賞も受賞しました。(第72回アカデミー賞5冠 作品賞・監督賞・脚本賞・撮影賞・主演男優賞)

私がアメリカン・ビューティー見たのは劇場でした。観客は2人しかいませんでした。田舎の映画館だったのでしょう。ラストシーンで主人公は意外な形で死を迎えることになります。

この映画の中のキャラクターである若者は彼のその主人公の死んでいる姿を見て、美しい、といいます。

映画を最初から見ているとその意味もわかります。その若者は、風に舞うビニール袋のビデオこれを見て美しいと主人公の娘である彼女に伝えます。世の中で何を美しいと感じるか、何を醜いと感じるかこれは価値観の違いです。

アメリカン・ビューティーがどうしてビューティーという言葉を使ったのか、これは逆説的なタイトルでもあります。家庭は崩壊し、ドラッグが簡単に手に入るそんな社会、拳銃でさえ簡単に手に入るアメリカと言う社会、でもそこに生きる人間は皆美しいんです。

それは生きていても、たとえ死んだとしても、人間であったことそのこと自体美しいことなんです。

そんなことを伝えてくれる映画だと私は感じています。

技術的なことを言うと、エンディングの最後の最後のシーンで全てが終わった時に流れる音楽、ジョン・レノンのビコーズ、これを映画館で聞いたときには、まさに複雑な思いが交錯して涙が出てきました。

なぜ人間は生きているのだろう、なぜ死ぬんだろう、形はブラックコメディーをとってますが、非常にシリアスな人間ドラマであったことには間違いありません。

コンラッド・L・ホールの撮影技術は世界最高峰です。ケヴィン・スペイシーの演技も世界最高峰です。その他のキャラクター全員、完璧なまでもの演技をみせてくれています。

アネット・ベニング/ソーラ・バーチ/ウェス・ベントリー/ミーナ・スヴァーリ/クリス・クーパー/ピーター・ギャラガー

すべて、アカデミー級の最高の演技です。特に、元軍人から抜けきれないクリス・クーパーの静寂からのバイオレンスは、まさに怪演です。

つまり、アメリカン・ビューティーは、監督、脚本、撮影、役者、音楽、美術、ストーリー構成、すべての点において私は100点をつけてもいい映画だと思います。

シニカルな視点でアメリカを描いた最高の映画がアメリカン・ビューティー、そして主人公の再生の物語でもある、そして最後の最後ですべてがひっくりかえされます。まさに圧巻のストーリー展開でした。


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