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[物語のある英語]~第1回~酸っぱい葡萄は心に貼るバンソウコウ?

-こんにちは!スロバールです。

言葉は人によって作られた。だからその過程には物語があって味がある。
単語帳では語られない物語を味わって味わい尽くそうというのが本シリーズの目当てです。

第1回目は「sour grapes」についてです。Sourはお馴染みのサワークリームのサワーなので酸っぱいという意味ですね。そこでこの表現を直訳すれば酸っぱいブドウになるのですが、さてどういう意味でしょうか?

◆目次◆

・物語
・Sour grapesの意味
・物語のメッセージ
・スロバール流解釈
・この表現の使い方
・関連表現
・日本のことわざ

これは単語だけ眺めていても、元となったイソップ物語を知らないと意味は分からないんですよ。ということで早速話のあらすじを追っていきましょう。

◆物語◆

ある時、狐がおいしそうなブドウを見つけました。
しかしそれは木の高い所に実っていて、ジャンプしても届きません。

なんとか取ろうとして必死にジャンプしても届きません。

何度やっても届かないので諦めてこんな捨て台詞を吐くのです。

「ふん、どうせあのブドウは酸っぱくて美味しくないのさ。
取れなくたって平気さ!」

そうして狐は立ち去ったのです。

◆Sour grapesの意味◆

という話を踏まえて、改めてsour grapesの意味を考えてみると「負け惜しみ」「負け犬の遠吠え」の意味であると言えますね。イソップ物語というのは、子供に物の善し悪しを教えるために動物を例えにした物語です。せっかくなのでここに込められた教訓も見ていきましょう。

◆物語のメッセージ◆

人・物・地位・階級など手に入れたくてたまらないけど努力しても手が届かない時、
「それは手に入れる価値がない」
「自分はそれにふさわしくない」
という物の見方をして、心の痛みを和らげることがあるというものです。
こういう自己防衛的な、自分に対する負け惜しみのことを、
心理学的には「防衛機制 (defence mechanism)」と呼びます。

◆スロバール流解釈◆

sour grapesの日本語訳と sour grapesの間には若干の違いがあるような気もします。負け惜しみも負け犬の遠吠えもは「欲しいものを惜しみながら負けていく様子」で物悲しさがあるのに対して、sour grapesにはそのような物悲しさがあるようには私には見えないんです。sour grapesに、「自分には無理だというネガティブな踏ん切りをつける」という断固とした守りの姿勢が感じられるのは私だけでしょうか?

書きながら自分は常日頃から自己防衛マシーンになっているなと痛感させられますが、少なからず誰しもが感じたことがあるであろうSour grapesな気持ちを、狐に乗せているのがこの物語の味だと私は思うんです。昔から、狐というのは「賢いイメージ」がある生き物ですよね。その狐が、無残にも自分自身を納得させて諦めていく...きっとキツネや人のような、頭がいい動物だからこそ、論理的に自分を縛って諦める事ができるんですよね。考えてみれば、鈍感で突進一筋の猪が諦めている姿は想像しにくいですよね。人間に与えられた「賢さ」を自己防衛に使っちゃダメだよ、という声がこのSour grapesという表現から聞こえてくるような気もします。

◆この表現の使い方◆

….の前に一言。このシリーズの目的はあくまでも「味わう」ことにあるのでこのセクションは控え目にして、表現の周辺知識・雑学の方に焦点を当てていきます。

1. It sounds like sour grapes to me.
    (負け惜しみみたいに聞こえるよ)
*[sound like]で、~のようだ/~のように聞こえる/~のように見えるですね。

2. [モノ・コト] is just sour grapes.
3. [モノ・コト] is only sour grapes.
4. [モノ・コト] is clearly sour grapes.
(~~は負け惜しみだ、)

5. I think it's just sour grapes on her part.
   (彼女はただ負け惜しみを言っているだけだと思うよ)
*on + 人+ partをつけるのがミソです。

◆関連表現◆

今回の関連表現は「clench my teeth」です。歯(teeth)をclenchする、なのですがこれは「歯を食いしばる」という意味です。悔しい時、怒りとともに歯をギシギシ食いしばりますよね。身近な単語の「Hold」は握りしめるという意味ですが、clenchはその上を行き更にぎゅっと力が加わります。もちろんclenchは拳にも使え、clench my fistsと言えば拳を固めるという意味になります。

悔しいと言って真っ先に思い浮かぶのは「regret」でしょうか。しかしteethやfistsという体の一部が入ることで単なる「regret」よりも、一層感情が伝わる表現なのではないでしょうか。

・Clench my teeth in frustration.
   (フラストレーションで歯を食いしばる→イライラ)
・Clench my teeth in pain.
   (痛さで歯を食いしばる→痛いのを我慢している)
・Clench my fist in anger.
   (怒りで拳を握る→もう爆発寸前)

◆日本のことわざ◆

良い英語力は豊かな母国語力の上に実ると信じていますので、母国語もついでにレベルアップしておきましょう。

さて、日本語の諺版は「武士は食わねど高楊枝」と言います。

馴染みが薄い表現だと思いますが、これは武士は誇りが高いがゆえに見栄を張ってでも誇りを保とうとすることを表したものです。諦めるという点ではなく、自己防衛という点においてsour grapesに似ていますね。そうした意味では、「やせ我慢」に近いのかもしれません。もしかしたらあの狐だって、自分のプライドが傷つくのを恐れてブドウは酸っぱいんだと言のかもしれません。

いつも記事を読んでいただきありがとうございます。英語学習に苦しんでいる方、つまらなそうに嫌々語学を学んでいる方が周りに居ましたら、シェアしていただければと思います。楽しく、深く、語学に取り組める人が1人でも増えたら幸いです。