見出し画像

ナマケる生き方、人生楽だらけ〜! 其の五「規格外」

うちの長男が仕事を辞めた。
彼が言うにはうつ病なのだとか。
彼を見ている限り、職場での人間関係に嫌気がさしたのではないかと考えている。

私自身が長年うつ病、正確には双極性障害だったため、「辞めたきゃ辞めればいいよ。好きなことがあれば、それで飯が食えればそれに越したことはないし、仮に仕事をしなくても今の日本では行き倒れにはならんから心配するな。」と言ってあった。
仕事をしなければ生活できない。
お金がなければ人として最低だ。
---などとは思っていないからだ。

私の見立てでは、彼はアスペルガー症候群の類だと思っている。
自閉症の一種だと理解しているが、他人との関わり方においてとても苦労する一方で、特異な才能があったりする。
彼は幼稚園の頃からものすごいスピードで本を読むことができた。
とにかく分厚い本でも、1日中飽きることなく読書に耽っていた。
それなのに学校の勉強はからっきしで、高校進学も決して(一般的には)優秀ではない工業系の私立高校に入学したが、やんちゃな同級生とはあまり反りが合わず、好きなパソコン系の勉強をはじめ、真面目な性格もあって、成績はいつもクラスでトップクラスだったので、学校推薦でロボット工学で有名な大学に入学でき、さらには大学院にまで進んだ。
甘いものが好きだった彼は、親が心配するほど少食で痩せっぽちだったので、周囲からは「もっとご飯を食べなさい」と言われ続けていた。彼にとっては相当の苦痛であっただろう。
ロボット工学の勉強にせよ、好きな甘いお菓子を作ることにせよ、少ない興味に対してとことん突き進んでいくようだった。
しかし、研究が思うように進まなくなって、うつ病と診断されて、長い間引きこもり生活が続いていた。
そんな彼を自宅に連れ戻し地元で就職するに至ったのだが、ある特定の能力は高いのに人並みのことが器用にできない彼は、結局仕事を辞めてしまう。
うつ病として病院に通っていたが、精神科医から「一度、親と一緒に来てほしい」と言われ続けて付き添ったときに、この手の病気が完治しにくい原因が分かったような気がした。

病院側は仕事への復帰を目指す療法プログラムがあるから、参加してはどうかと提案があった。そこで、一度そのプログラムを見学することにした。
そこで見た風景はなんとも居心地の悪いものだった。
参加メンバーが部屋の中で共同作業をしたり、円陣になって話し合いをしたりして、会社という組織の中で仕事ができるように訓練をするのだと言う。

しかし、私には「仮にこの訓練を受けて復職したとしても、病気が完治して仕事が続けられる人はどのくらいいるのだろう?」と言うことだった。
そのことを担当医に聞いてみると、悪びれるでもなく「かなりの確率で病院に戻ってくる」と言うことだった。

これを見て、世の中の仕組みのようなものが垣間見えた気がしないだろうか?
つまり、病院側の経営という点からすれば、患者は病気を克服してもらっては困るのだ。
毎週のように病院に通い、たった数分の問診を受け、ではまた来週とばかりに薬を処方する。
復職プログラムを実施した病院には、当然国から保険点数に見合ったお金が入ってくる。
しかし、復職しても完治してもらっては困るのだ。また、数ヶ月もすると具合が悪くなって藁にもすがる思いで病院にやってきては、薬を処方してもらうわけだ。
こういう地獄のスパイラルを描くように、厚労省の役人たちや日本医師会、製薬会社が結託しているかどうかはわからないが、システム化されているのだ。

なぜ完治しないのか?
その疑問の答えは、私自身の経験から簡単に引き出せる。
そもそもこういう病気にかかる人たちは、いわゆる社会になかなか馴染めない性質を持っているのだ。
他人と良好な関係を構築するのが苦手だったり、既定路線に乗っかることが好きではなかったり、団体行動ができなかったりする性質の持ち主なのだ。

元々丸いボールのような形状の、こう言った性質の持ち主が少し小さめの四角い箱に収まろうとするのにイメージが似ている。
なんとか無理やり形を変えて四角い箱に入ったとしても、所詮形は丸。
窮屈になってはみ出そうとする。
はみだしてしまった状態が本来の形であるのに、社会のルールからはみ出したということで「病気」の烙印を押され、病院で四角い箱に入る訓練をする。

だから、いつまで経っても病気という烙印=カテゴリーから逃れられないのだ。
そもそもこの病気の概念そのものが、社会の生産活動から外れたものを指すのではないだろうか?
もちろん身体的に苦しいとか、日常生活ができないと言った不都合もある。
しかし、生産活動に従事しようとするから無理もしなければならないのではないか?
他の大多数の社会の構成員と同じように、生産活動に勤しむことこそがアナタの幸せにつながるのです!と判で押したように、子供の頃から言われ続けてきた結果、はみだした人たちは何かしらの無理を生じさせながら暮らしているわけだ。

では、どうしたらいいのか?
まずは他の大多数の人たちと同じような仕事の仕方をしない!
丸い形の人は四角い箱ではなくて、自由に転がれる場所に身を置く方がいいのだ。
だから、私は息子に仕事を辞めてしまうことを止めなかったのだ。

彼には彼の自由に転がれる場所があるはずだからだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?