【坂道SCP】第1話-はじまり-

みなさんこんにちわ。井上和です。
春からSCP財団という組織で研究者として働いている社会人1年目です。

え?SCP財団って何かって?
確かに殆どの方は聞きなじみがないと思うので簡単に説明をしたいと思います。

SCP財団は、Secure(確保)、Contain(収容)、Protect(保護)を理念とする組織です。「オブジェクト」、簡単に言うとこの世の理から外れた様々なものやイキモノが、明るみに出てしまったり、被害を出してしまうことがないように管理している組織です。

ふふ、なにやら秘密の組織みたいでかっこいいですか?
私はこうしたオブジェクトの収容が正しく確立できるように、日夜研究に励んでいます。とはいってもまだ働き始めたばかりなんですけどね。

さて、今日はそんなオブジェクトと格闘する私と同僚たちの日常をお見せしたいと思います。よろしくおねがいします。


ピピピ・・・

月曜日の朝。目覚ましの音で目を覚ます。
窓から差し込む朝日の眩しさを感じながら眠たい目をこすり、布団から出る。憂鬱な気持ちと戦いながら朝ご飯を流し込み、着替えて家を出る。

まるでSFのような日々を過ごす財団職員だけれど、やっぱり会社にいくというのはなかなかにつらいものだ。
きっとアニメに出てくる正義の味方も悪の組織も月曜日の朝はそんな感じだろう。

電車を乗り継ぐこと2時間、都心部から少し離れた駅で降りると、そこからさらにバスに乗り継いで研究所があるサイト-8046という施設まで向かう。

ここに研究施設だけではなく、実際に一部のオブジェクトの収容施設も兼ねており、広大な敷地に様々な施設が密集している。外部には警備員が巡回しているし、高い塀に囲まれているからまるで刑務所のよう。

安全性や秘匿性のために人里離れている関係で、基本的に平日はここに泊まり込んで過ごすことになる。職員専用のバスがサイトの門をくぐると、(ああ、また1週間は帰れないんだな)と少し憂鬱になる。

「おはようございます」

研究室に入り、同僚たちとあいさつを交わす。

「おはよ~和。ギリギリだね。」

そういって声をかけてきたのは同僚の研究員である一ノ瀬美空。
大学では心理学を専攻しており、その知識を活かしてオブジェクトの収容に取り組んでいる。

「ちょっと~しっかりしてよ?今日は調査チームが報告のあったオブジェクトの収容に向かうって言ってたでしょ?」

ーそういえば先週のミーティングでそんなことを聞いた記憶がある。

財団は大きく分けると、私たちが取り組んでいる研究職、主にオブジェクトの調査や収容手順の確率を図るチームと、調査を担当するフィールドエージェント、そして問題が起きた場合に対処する機動部隊の3つに大別される。

今日は先週民間人から報告のあったオブジェクトの調査にフィールドエージェントが向かうことになっているのだ。

「もう、和ったら。絶対忘れてたでしょ?」

私の反応をみた美空が呆れたような顔を向けてくる。

「・・・覚えてたよ?」

「ぜったいうそ。じゃあどんなオブジェクトだったか言ってみて」

「ほら、あれでしょ?頭が8つある30メートルの大蛇」

「・・・そんなモンスターがいたらフィールドエージェント全員食べられちゃうでしょ。私のあーやが丸のみになっちゃう。」

そんなことしたら██を切り裂いてすぐに救い出すけど、というサイコパス的な発言を背に、パソコンを起動する。

さすがに休日ボケしたままでは仕事にならないので、先週のミーティングで配布された資料を見返すことにする。

どうやら今回通報のあったのは、██県の旧██村に放置されていたとある小屋のようだ。
かなり古い年代に作られたもののようだけど、たまたまここに迷い込んだ遭難者が生き物をみた、と動揺した様子で警察に通報があったらしい。

現段階では特段被害などは出ていないようなので、本来ならば調査する事案でもない。
でも、あまりにも通報者の動揺が激しかったらしく、不審に思った警察内部の協力者から報告があり調査が決まったらしい。
まぁそれほど危険なものでもないだろう、ということで担当は新米エージェントである私の同期たちが中心に行うことになったようだ。

「まぁ簡単に言えば実地研修だよね」

後ろからパソコンの画面をのぞき込みながら美空が言う。

「とりあえず、調査報告を待つことにしよっか。」

じゃあそれまでは先週のミーティングの議事録でもまとめていようかな、と思いながらパソコンに向かうのだった。

続く


【クリエイティブライセンスに基づく表示】
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元ネタ:SCP-040-JP by Ikr_4185
ソース:http://ja.scp-wiki.net/scp-040-jp


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