青い太陽

 薬の届かないところに傷があるので、当然薬は宛にならず、ただ内臓のなかを転がるだけで。首をねじらないと見えない背中のように、私の心はできている。
呪いは、かけた本人にしか解くことができないとSFの物語のなかでよく聞く。
私はあの日レイプしてきた人を、私に産まなきゃ良かった、死ねばいいと言ってきた母を、私を押し入れに閉じ込めて、私を殴り母を怒鳴る父を、お前は生きている価値がない、逃げて甘えてるだけのゴミだと言ってきた担任教師を、忘れて、気にしない訳にはいかないのだ。
忘れることはできない と俗な言葉でここに書く。
後にレイプ犯は捕まって、母は子宮をなくして、担任教師は停職処分になった。父もきっとアルコールとパチンコと殴り怒鳴る暴力でしか息ができないまま。
これに祝福も恐怖もしない。ラッキーでもない。
皆あるべきそれぞれの終わりを迎えているけど、私にはそんな物はない。
死ぬまでずっと抱えて、この気持ちと付き合って忘れずに生きていく。
それしかない、そうする他ない
たとえば友達と遊んで、出かけて、好きな人ができて、仕事を頑張って、趣味を楽しんで、それなりの幸せで満足して。でもあの頃の私がつぶやく、
助けて欲しかったのに、助からなかったのにって。
乗り越えても、それを褒められても、頑張ってると言われても、どうしようもなく涙が顔中を濡らして、乾かない。あっという間に目だけがプールに沈むのだ
もしこれが呪いならば、人はカンタンに呪えてしまうし、呪われてしまう。10年前の8月の私が、今日も私を呪っている。
そんなトラウマが夢の中にまで追いかけてくる。
生きててごめんなさいって天井に向かって謝って、カーテンの隙間から小さな空を見て、静かなだけの朝に気が付く、毎日。

私には夏はカラフルすぎて、溶けきらないままのガムシロップみたい。
だからブルーライトの太陽の前で、お得意のイタいお気持ちで画面を黒くする、
夏の夜


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