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quiqui「もう少しの暦」を紐解く 後編

最後の後編です。今回もほぼ感想文となっております。

紐解き3 のつづき

8. Dummy

宮川氏のドラムの音が異次元クラスの響きをみせるこの独特な一曲。ドラムスティックでスネアの縁を叩くカッカカッという音の大きさに違和感しか感じません。当然意図してそういうミックスにされてるのだと思います。

前の「D」がおどろおどろしく畳み掛けてくる曲だったのに対し、一転して穏やかな日常すら感じますが、スポークン・スタイルのヴォーカリングはまるで悪夢から目覚めて機嫌の悪い男性然としています。

もう全てどうでもいいと苛立ちながら、お互いに準備は出来てるからと覚悟を呟く男性。

この「お互いに」は自分とDummyとという意味なのか、前曲「D」のDにかかっているともとれるし、この曲も前の曲と繋がりがあるなら、ひょっとするとこのアルバムは一連のストーリーになってる可能性もあるなと、さまざまな考えが頭に浮かんできて収集がつかなくなりました。

考えれば考える程異質ですね、この曲。

この曲が単純に単体の曲であるなら、人生の転機に当たって覚悟を決める男性の曲と解釈出来ます。曲の中盤からはほんのり明るい調子になるのですが、憂いを帯びているベースラインが筆舌し難い余韻を残します。

9. ssss

ここでほぼ打ち込み(?)のインタールード的な曲が挟まれています。日常を5000倍速で過ごしたら、きっと頭にこういう音楽が流れるんじゃないかなと思いました。

この曲のタイトルの意味は全く検討もつきません。

10. progressive

男性のスクリームと不穏な音色のサックスの交錯から始まる非常にインパクトのある曲です。このOhiana氏によるMVの世界観も非常に強烈です。

この曲もとても顕著ですが、quiquiの曲は展開と構成が単純ではなく凄く練られているので、何万回聴いても全く飽きが来ません。100回聴くたびに新しい発見を見出せるような仕掛けと工夫がなされています。

メンバーはそれだけ膨大な量の音楽を聴いて知識を蓄え、それをまた自分達の音としてアウトプットするため、並々ならぬ努力と試行錯誤をしているのだろうなと想像します。一本道を極めるのも凄いことだと思いますが、メンバーも好きだと公言しているRadioheadのようにさまざまなジャンルを吸収しつつ、かつ、付け焼き刃ではない、ちゃんと説得力のある新しいものを作り上げるのはなかなか出来ることではないと思います。まさしくprogressive、革新的です。

リアルタイムでquiquiの音楽に触れ、運良くライブも観られるのは本当に幸せだと感じます。

そして、これだけはどうしても言いたいのですが、曲の途中のギターが単音で、ンテッテー、テ、ンテッテー、テ、テッテーテって奏でる所、最高です。

11. Reflection

凄く複雑な構成の曲です。拍子も複雑ですが、ヴォーカリングもスポークン気味からメロディアスなサビもあり、最後はスクリームになるというドラマティックな一曲。

歌詞も難解で、この曲を繰り返し聴いているうちに「D」、「Dummy」とも繋がってるのか?とふと思いました。やはりこのアルバムはあるテーマをもとに各曲が制作されてるコンセプトアルバムの様相も含んでいるのかも知れません。し、そういうことではないのかも知れません。

この曲、是非ライブで聴きたいと思っているのですが、知る限りまだ演奏されていません。いつかライブで体感できることを願っています。

12. 時間

感情を爆発させた居原田氏の声と爆音が相まる一分に満たない曲。日本語詞なので、よく聴くと部分的にでも歌詞が聞き取れると思います。

この曲も短いのにしっかりと曲が展開されていて、名曲です。

13. もう少しの暦

アルバムに先駆けてMVとともに公開された曲で、アルバムタイトルにもなっている「もう少しの暦」。

quiquiの中では異質な歌ものですが、一番多くの人に魅力が伝わると思われる一曲です。

このMV、初めて観た時は仲睦まじいカップルのデート風景かと思いましたが、よく観たら男女3人の友人同士で遊びに行ってる映像ですね。

この曲の印象はこのMVに引っ張られてしまいがちですが、歌詞を読み込むと、言葉数は少ないけれど多感な青春期特有の繊細さ溢れる歌詞で、いろんな解釈が出来るものとなっています。

14. 部屋に戻る

この曲に関しても何かを語るのは野暮な気がします。ただ感じるがままが答えだ、という一言に尽きます。

アルバムを紐解くと言っておきながらこういう事言うのもおかしいのですが、解釈を書くことが凄く無粋な気がしてしまいました。

まとめ​

今回このアルバムを紐解くぞと意気込んでこのnoteを書き始めましたが、一つの作品を真剣に細部まで聴き込んで自分なりに解釈していく行為は本当に有意義でした。

大好きな作品でこれまでにも散々聴いてきたのですが、受ける感動を言葉に変換する作業はとても難しく時間がかかりました。それでも新たな発見もあるし理解はさらに深まった気がします。

この素晴らしいアルバムの良さを少しでも伝えることが出来たなら本望です。

最後にこちらの動画を。

録音スタジオnostos朝倉氏のインタビュー動画は、普通に聴いているだけは到底わからない制作秘話がかなり話されているので、より作品を楽しむことが出来ます。ある程度作品を聴いてからこの動画を観るとまた違って聴こえるので、2度楽しみたい方は後あとの視聴をおススメします。

最後までお付き合い頂きありがとうございました。

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