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2017年にミャンマーで鉄道跡を見た話①

凄惨さを極めるミャンマーの状況を聞き、何もできない自分の無力さが不甲斐無いです。ミャンマーは祖父が第2次世界大戦で従軍した地であり、その縁で一度だけ訪ねたことがあり、勝手に親近感を覚えています。そのときのことすらまとめていなかったので、今のミャンマーには何の足しにもなりませんが、自分の満足のためにまとめます。

祖父の死去

2017年3月31日に父方の祖父が99歳で亡くなった。前の年の誕生日祝いでは、酸素を吸引しているものの頭はハッキリしていたので(毎日漢字ドリルをやっていたらしい)、100歳まではいけるかなと思っていたのだが、骨を折って入院したら、瞬く間に衰えて、亡くなってしまった。

※後日NHKスペシャル「人体」を見ていたら、骨への刺激によって老化を止める物質が出るというのを見て、入院中に祖父の骨を叩いてあげられなかったことを悔やんだ記憶がある

祖父の手記

葬式前に母から、祖父の書いた手記を見せてもらった。見開きで左のページに世界の出来事が書いてあり、その右のページに自身で記入ができるようなノートで、各年ごとに記載できるようになっていた。おそらく亡くなるまでの数年間に書いたもので、戦時中の所だけポツリポツリと書いてあった。

1943年(27歳) 5月自分にも召集令状来り千葉津田沼鉄道2連隊(?)に入隊する 1期の検閲終えると共にビルマ鉄9連隊に配属を命ぜられ9月北支よりビルマに向け乗船 貨物船にてシンガポールよりタイ国を通り11月本隊ビルマのキャンドー鉄9。3連隊に到着中隊指揮班に配属された 中隊長当番がほとんどの仕事だが戦争がはげしくなりタイメン線の往復多くなり駅勤務となり 暑さと雨の中毎日インパール作戦に向ふ補充兵士を送った(タイメン線ビルマ。マンダレー迄)~中略~去年4日1日付にて雇となり月給者なり月給55円となったばかり時の招集だった。
1945年(29歳) 8月終戦となりビルマ国モールメン~タイ国間の鉄道の保守に当らせられる(キャンドー駅勤務) 前線よりの帰還兵の輸送をさせられる。 前線の兵隊の負傷兵多く目を見るにしのびない人多数をモールメン駅で乗車させた やがて鉄9にも帰還の知せあり近く移動が
1946年(30歳) 6月ビルマの兵隊も鉄道隊も日本に帰れる事になり2ヶ月かけて8月14日ようやく自宅に帰れる 祖母妹も留守中死亡せし聞 又六男は海軍に志願して沖縄戦で死去と聞き3人も4年の間になくなりさみしい極みだ 丁度御盆だったが何とか帰れたので親類に無事返れた報告廻りをした

戦争の話をしなかった生前の祖父

祖父の子どもたち(つまり自分の父や叔父さん叔母さん)にも、戦争の話は全然していなかったとのこと。自分も、小学校のときの社会科の宿題で、昔の人の暮らしということで祖父にインタビューをした記憶があるが、戦争については触れていなかったなあと手記を見て思った。(戦後鉄道関連の捕虜をやっていて中々帰れなかったというのは聞いたかも。勝手にシベリアで鉄道を掘っている祖父を想像していた)

どこかで聞きたいと思っていたが、母が「(死亡フラグ的な意味で)聞いてしまうと亡くなってしまいそうでやだ」と言っており、自分も確かにそうだなと思って聞いていなかったことはとても後悔している。

そうだ ミャンマー、行こう

後悔先に立たずで、死んでしまった以上もう話は聞くことはできず。残された情報は3ページほどの手記の記載のみ。ここからわかる範囲で場所を調べて、せめて祖父が行き、生きたビルマの空気だけでも感じたいと思い、次月のGWにミャンマーに行くことにした。

今思うと軍歴証明書とかを取り寄せてもう少し調べることができたが、当時はとりあえず行きたいという感情でいっぱいだった。供養のような気持ちだったのだと思う。

タンビュザヤに行く

手記の記載によると、どうやら津田沼に置かれていた鉄道第2連隊の補充隊から鉄道第9連隊に移り、その隊がミャンマーに行ったとのこと。歴史の学習は16歳で終わる高専卒業生、無知なりに調べると確かにそのような記載が出てくる。

鉄道第2連隊は昭和15年(1940年)に動員されて主力が中国東北部に移転し、津田沼には同連隊の補充隊が留守隊として置かれました。(引用:習志野市 鉄道連隊の歴史

その隊が管理していたのが泰緬鉄道である。泰緬鉄道は現在使われていないとのこと。線路跡をたどるような旅を想像したが、そもそも戦後破壊されてジャングルに埋もれているし、タイとの国境付近では民族間の闘争が今もあり、決して素人が近づいてはいけないような状況ということで断念。低リスクで行ける範囲はどこまでかと調べると、南部タンビュヤザという所に、鉄道遺構を展示した博物館があるとのこと。とりあえずそこまで行ってみることにした。つづく。


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