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air (words)

11月に開催しました個展「air」振り返りシリーズ第4弾。今回は「文章」について。


タイトル「air」

前々回のnoteでは、「個展アイデアを考える際、空間から・・・」と書いておりましたが、その前にタイトルを決めるところからスタートしました。

まずはシンプルに「Sleepy Sheep作品の売りにしたい要素は何か」というところから考え始め、そのとき浮かんだのが「雰囲氣」という言葉でした。他のアイデアを出すまでもなく「これだ」と思ったので、次はそれを記号化すべく相当する英単語を検索。普通に考えたら「atmosphere」になるところですが、なぜか真っ先に目についたのが「air」。「エ」「ア」という母音並びの響きも良いなと思い決めました。


air × 透明な袋 × 透明な仕切り越しの世界

タイトルを考えた時は単に「雰囲氣」を英語変換しただけのつもりでしたが、「air」が本来意味するところの「空気」に立ち返りますと、「昨今、ややネガティブに意識せざるを得ないもの」でもあるので、透明袋と同様にタイトルもまた、無意識下で時世とつながっていたようです。


「今」的なものを表現に絡めつつも、透明袋に入ったフェルト作品を並べただけでは「単なる安全対策」にしか見えないので、あえて時世のメタファーを表していることを言葉で補うべく、壁面ゾーンの最初には「air」というタイトルの詩を持って来ることに。(「透明な仕切り越しの世界」というフレーズをどこかで使いたかった、というのもあります)

air

透明な仕切り越しに君を見た
本当の君が見えているのだろうか

透明な仕切り越しに私を見る君よ
本当の私が見えているのだろうか

透明な仕切り越しに眺める世界
ひとまず目を閉じ
内側へ

そして改めて目を見開く
今度は視点を高くして

見えるものも
見えないものも
全てに目を凝らす

見えていたのは君ではなくて
私であったことに
ようやく氣がつく



キャプション

「air」だけでなく、個々の作品それぞれにも詩を付けたらどうだろう・・・とも思いましたが、それについては全く浮かばなかったので、キャプションの方は詩ではなく「ちょっとした解説的なもの」になりました。



Sheep

壁面フェルト作品全11点の最後を飾ったのは羊でした。「Sleepy Sheep」で「羊毛フェルト作家」ということで「羊」は特別扱いなのと、「羊毛は繊維の中にたくさん空氣を含むから温かい」という特性が「air」につながって良いかも・・・と思い、11番目に持ってきました。

締めにふさわしい文章を書くべく、改めて羊毛について調べていくうちに出逢ったのが「呼吸する繊維」という言葉。その瞬間「これだ」と思い、するすると出てきたのがこちら↓


ウールのセーターが温かいのは
繊維の間にたっぷり空氣を含むから

いわば「呼吸する繊維」で
鱗上の表面が
温度や湿度に合わせて
開いたり閉じたりするのだとか

フェルトのどうぶつたちは
もちろん肺を持たないけれど
もしかしたらその体で
呼吸をしているのかもしれません

願わくば
その呼吸する体が
やわらかくやさしい氣体を
発することができますように

羊毛フェルトに出逢っていなかったら
たぶん作家にはなれなかったでしょう
今日も羊への感謝を込めて

最終的にこの文章が出てきたことは、私にとって意味深いことでした。まるでこれが「air」という展示の「答え」で、それを導き出すために会場を決め、タイトルを付け、透明袋を用意し、作品を制作する・・・というプロセスがあったかのような。

まず何らかの思いや作りたい衝動があって、それを作品というかたちにするのが「作家」なのだろうと思いますが、私の場合は、作家でありたいがために状況を作って、そこからかたちにすることでようやく思いに氣づく、という「逆ベクトル」のパターンなのかもしれません。


次週は個展振り返り最終回。
全出展作品をご紹介します。


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