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絵のリクエスト受けたら溢れんばかりの情熱も貰ったハナシ


【創作よりも“破壊”を】

元々、創作活動が好きだった。

この世界に存在しない生物……わかりやすく言えば、特撮番組の怪人や怪物を、自分で考えてひたすら描いていた。
それはもう、時間を忘れて夜通し何枚も絵を描くほど。

創作が好きだった。
好きなハズだった。

大学に進学した辺りでうつ病を発症。気付かぬうちに大きく育った。
絵が描けないわけではない。アイデアも一応浮かぶ。

でも、夢中になれない。
気力が湧かず、中途半端なところで投げ出す。

気づけばかなりの時間が経っていて、いつしか創作とは真逆の、命を断つことに夢中になっていた。

ストレス発散に自傷行為を続け、瞳の残像が見えるほど自分に鞭打った。

ただ、一応創作への意欲は残っているのか、
体につけたアザを「アート」とか言って誤魔化していた。

満足なんかしちゃいない。

「アレを描きたい」
「こんなストーリーを紡ぎたい」

本当に向き合いたいものに向き合えない。
これほど悔しいことはない。

その悔しさをわかっていながら、自傷行為にばかり力を入れ、自分を消すことに重きを置いていた。

【友人からの知らせ】

そんなある日、タイ人の友達から1件の知らせが届く。

絵のリクエストが来てるんだが、描いてみないか?

以前友人に、「創作活動を仕事にしたい」と伝えたことがあった。うつ病真っ盛りの時期なので、心からの言葉ではなかった。
「さっさと逝かせてくれ」の方が強かった。

その時の“上っ面の言葉”を友人は覚えていてくれて、自分が以前描いた絵を、周りの知人に紹介してくれたそうだ。
すると、キャラクターを描いてほしいという声が上がった。

自分のために、こんなに動いてくれたのに、まだまだ「逝かせてくれ」が強くて、最初は断る理由を探していた。
「自分の作品に集中したいんだ」みたいな。

でも、心のどこかに、「創作活動に力を入れたい!」という気持ちがまだ残っていた。

「断れ、逝かせろ」という声が頭の中で響く中、友達に返信した。

「連絡ありがとう! 是非描かせてほしい」

この選択が、冷え切った自分の創作意欲に熱を注ぐことになる。

【ぶつけられた思い】

2、3日して動きがあった。

友人からメッセージが届いた。
リクエストをくれた方のメールを転送してくれたのだ。

続いて自分のSNS宛に依頼。

ここに来て、ちょっと弱気になる。

なんで素人の自分なんかに。
自分はもう逝きたいんだ。早く逝かせてくれ。

色んな弱音が出てくるが、無理矢理耳を塞いで依頼に目を通した。

【設定から伝わるキャラクターへの「愛」】

まずは友人が転送してくれたメールから。

内容は……全部タイ語。
Google翻訳にかけて目を通す。

ストーリーの説明と、描いてほしいキャラクター5体の設定だ。
結構な文章。うつが酷いときは文章を読むのに時間がかかる。

だが、いざストーリーを記したメモを読むと……

「お、面白い!」

まるで新番組のあらすじを読んでいるかのような興奮。
勝手にPVが脳内で作られて再生される。
右下とかに放送開始日と時間が書いてあるやつ。

目新しさがあるわけではない。
だが、何だかワクワクするのだ。

続いて、5体の怪物それぞれの設定を読み通す。

——美しい

ちょっとやそっとの、簡単な設定じゃない。
見た目については細部に至るまで詳細に書かれている。そして、

「この怪人は◯◯が好物で」
「コイツはこんな風に戦って……」

各怪人の、めっちゃ深いバックグラウンドがそこに記されていた。

リクエストとなると、単に見た目やモチーフだけ伝えてくる人もいる。
ただこの作者は、自分のキャラクターの魅力を存分に、一度も顔を合わせたことのないこの私に伝えてくれたのだ。

これは紛れもなく愛。
自分のキャラクターに対する、親のような愛情だ。

嘗ての自分も、「自分の生み出したキャラクターは、子供と同じ」と言っていた。不意にそんなことを思い出した。

最初にメールを読み通したとき、私は外にいたのだが、設定を何度も何度も読み返したのを覚えている。まだコロナ禍でマスクを着けていた頃。マスクの下でにっこり笑っていた。

家に戻ると、早速紙と筆記用具を取り出す。
さぁ、始めよう。
共にこの世界に恐怖を!
(ここでは5枚のうち3枚を掲載)

3枚目のイラストは特にハマった1枚。グロいの苦手なくせに、こういうの描く時はめっちゃワクワクする。

友人を介して画像を送る。
1時間ほどして返信あり。
やはりタイ語のメール。
翻訳にかけると、

Amazing!”

の文字が。
特に3枚目のイラストを気に入ってくれたらしい。

ここでひとつ、思い出したことがある。

自分は人を驚かすのが大好きだった。
嬉しいサプライズでも、とんでもない恐怖でも、とにかく驚かせるのが楽しい。

作者がメールに書いてくれた“Amazing”という気持ち。
作者の想像を超える驚きを与え、なおかつ喜んでくれたのだとしたら自分も嬉しい。

ただ、何よりキャラクターへの「愛」をしっかり形にできたのなら、これ以上の喜びは無い。


【勢いを増す熱量】

続いて個別にリクエストをくださった方と連絡。
英語を使い慣れた方だったので、SNSを通じて直接やり取りしていた。

怪人の見た目についての説明。
特定のゲームやイラストを添付してくださり、
「こんなイメージのキャラクターを描いてほしい」と依頼をくれた。

なるほど。最初の5体はファンタジー、こちらはSFだ。
「大体こんなモンスター」というのはわかる。
ただ、自分にはもうひとつ知りたいことがあった。

その作品の世界観だ。

物語の舞台で何が起きた?
何のために戦う?
世界観を知れば、キャラクターをより深く知ることができる。

その点についてのより詳しい内容を尋ねてみたところ……
キャラクターの出自から戦闘スタイルまで、事細かに伝えてくれた。

しかも、文章でのやり取りなのだが、
とにかく伝わってくる「熱」がハンパない

自分の目の前で、この作者が直接、ジェスチャーを交えて話しているかのような、そんな熱量。

なかなかの長文、それも英語だが、あっという間に読めてしまう。
英語力も読解力も関係ない。作者自身のワクワク感がこちらに伝わってくる

あぁ、きっと書いてるうちに、この人自身が楽しくなってきたんだ
返信を読んでいて自然とそう感じた。

怪人の紹介文から、どうやら「次々に姿を変えられる」性質があると判明。
どのように描くか考えた結果、その変異途中を切り取った絵はどうか、ということになった。

描いているうちに気分が乗って、戦闘シーンが降りてきた。
この怪人が次々に姿を変え、暴れ、雄叫びを上げる。

自分の作品を作る際、よくセリフやシーンが振ってくる感覚があるのだが、
他の方の作品でこの現象が起きるのはかなりレアだ。

キャラクターの性質や行動理由などを踏まえ、自分も少しアイデアを出してみたところ、快く採用してくださった。ありがとうございます。

自分の予想以上に喜んでくれた作者。
私も救われた。
あなたのキャラクターに対する熱量が、気持ちをワクワクさせてくれた。

この他にも絵を描かせていただいたのだが、めっちゃ喜んでくれるのでこちらも嬉しかった。
何より、創作活動に夢中になって、楽しく取り組めたことが幸せだった。


【思い出した。何故創作にのめり込んだのか】

印象的だった2人のリクエスト。

「新しいアイデア」というわけではない。
ファンタジー、SFではメジャーな、よく見るタイプの物語。

だとしても、設定を読んだ段階のあのワクワク感はとてつもないものだった。

そりゃあ面白いさ。
作者自身が楽しんでいるし、愛しているのだから

リクエストをいただいて、描いて、感想をもらって……
自分の創作意欲もほんのり暖まった。


それから、もうひとつ思い出したことが。

幼き日、初めて「人間が怪人に変身する瞬間」をテレビで観て感じた驚き。

「えぇっ、人間がこんな姿になるの!? 自分もあんな体がほしい!」
「ここで裏切りだと!? その発想は無かった!」

恐怖、そして歓喜!
この驚きこそが、我が創作活動の核!

この驚きを作品に乗せて人間に送りたい。

自分の創作の何たるかを思い出した後、絵だけでなく、ストーリーを作ることにも力を入れるようになった。
あの、エキサイトしている文面に刺激を受けた。

自分をワクワクさせてくれた作者たちに、そして自分の作品を紹介し、彼等と出会う機会をくれた友人に、心から感謝している。


【まだ「逝きたい」自分へ】

……とは言っても、正直なところ、今でも気持ちは不安定。
隙あらば「とっとと逝きたい自分」が顔を覗かせる。

それもそうか、“そっち”の期間の方が圧倒的に長いし。
一瞬で180度ピシッと回転できたらどんなに楽か。

まぁ、そんな自分も否定はしない。
死んでやるさ。
創作に熱中しまくって、どこかのタイミングでくたばってやるさ。


小説はまだ完結してないし、絵も描き足りない。

それについ先日、またリクエストをもらったんだ。
今回は自分を紹介してくれた、あの友達自身。
もちろん誘いを受けた。

その友達が物語を作っていると知ったのは最近のこと。
どんな物語なのかワクワクしている。


何となく、「そろそろだな」という感じはある。
血の気が引く感覚は続くし、フラフラだし、何か知らんが3キロ減ったし。

だが、私はまだ満足していない。
あのワクワク感を存分に味わいたい。

長生きしようなんて考えちゃいない。
でも、「そろそろ」と急かす自分に、もうちょっと付き合ってもらいたい。

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